魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

コクチバス

2020年05月14日 13時58分04秒 | 魚紹介

今回は久しぶりに淡水魚の話題でも、最近キバラヨシノボリの新しい論文が出た。ようは「キバラヨシノボリはクロヨシノボリからそれぞれの島で独自に種分化した」というものだ。であればそれぞれの島のキバラヨシノボリは別亜種ではなく、別種ということになる。そうなると別水系からの放流を行うと在来の個体群にダメージを与えてしまうことになる。

それとは全く関係ないが、Youtuber、もといYoutuberとして知られる「荒川水系の釣り人」さんから魚をいただいた。スズキ目・サンフィッシュ科・サンフィッシュ属のコクチバスである。コクチバスはアメリカ原産の淡水魚で、もちろん日本における分布は移入であり、あちこちの国に移植され世界中で問題となっている。

そもそも私はバス釣りをしないので「口のサイズ」がどうとかいうのがわからないが、やはり上顎長が長いのがコクチバスの特徴らしい。ただ模様からオオクチバスと明らかに違うのはよくわかる。なお名称はどちらも英語名からきているようだ。コクチバスはアメリカではSmallmouth bassというし、オオクチバスはLargemouth black bassという。日本では北海道~山梨県までの19都道県に移入されたというが、山梨県では根絶されたようだ。しかしせっかく根絶してもまた出てきてしまっているとも聞く。特定外来生物なので移植は禁止のはずなのだが。コクチバスは流れる河川を好むらしく、オオクチバスにより危機に瀕している魚とはまた別の魚が絶滅の危機に瀕することになるだろう。

今回の個体は腹がぱんぱんで多数の卵が入っていた。本種はどうかわからないが、オオクチバスやブルーギルは親魚が産み付けられた卵を保護する習性がある。そのため卵をうみっぱなしにする魚よりは生存率が高くなる。これが成長すると、と考えると恐ろしいものである。

キバラヨシノボリもそうなのであるが、放流というのは常にリスクがつきまとう。このコクチバスの件に関してはアングラーのせいなのだが、実際にアユやサケマスの移植事業でもほかの地域の淡水魚が混ざっていたということはよくあることなのだ。実際に関東で見られるコイ科の一部は湖産アユに混ざって放流されたものが定着した、なんて話はよく聞く。

日本人はもうちょっと放流についてデリケートになるべきだしトキやアユモドキなど、絶滅した地域への再導入についてもデリケートにならなければいけない。漁協もサケマスの放流、とくにアマゴの生息していない地域へのアマゴ放流などの話も聞くが、こういうことでも問題が起こっているはずだが、残念ながらだれも気が付いていない。

なお、サンフィッシュ科をFishbaseで検索するのを悩んだことがある方もいるのではないだろうか。サンフィッシュ科の学名は「Centrachidae」というのだが、この元になったと思われるCentrachus macropterusなんて正直ロクに知らないのだ。「サンフィッシュ科」ではなくケントラクス科とかそんな名前にしたほうが検索するときにわかりやすかったかもしれない。HN「荒川水系の釣り人」さん、ありがとうございました。

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