安倍首相は新自由主義者の術中にはまってはならない。政府は秋の臨時国会に「解雇しやすい特区」をつくる法案を提出するのだという。これまでの雇用形態を突き崩す蟻の一穴になるだろう。政権に復帰した自民党が、グローバル化している財界に押し切られて、日本の国柄を変えようというのである。日本的な労使関係は人間関係を重視するのが特徴だ。それは下請け、流通段階での小売業、メインバンクの銀行との関係も一緒であった。「暗黙の契約」が働いているのである。それがまずベースにあるからこそ、すぐに首を切ることはせず、下請けに対しても無理な要求をしないで、長期的な観点から付き合うのである。より安い品物を購入しようとすることよりは、持続的な人間関係が重視される。丸尾直美は『総合政策論ー日本の経済・福祉・環境』において、そのメリットとして、長期的観点に立つということを挙げている。社員ばかりでなく、グループが一丸となり、それが技術開発をする上でもプラスに働くのだ。その一方でデメリットがないわけではない。好景気になっても、従業員に給料として配分されず、企業内に内部留保されてしまう問題点がある。しかし、それは政府や労働組合がしっかりすれば、ある程度は解決することだ。それもしないで「解雇しやすい特区」をつくるのは、かえって日本の競争力を弱めるだけであり、断じて認めるわけにはいかない。
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