草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

横光利一が愛した稲穂の波の風景は日本の歴史のうなりだ!

2013年09月21日 | 思想家

 日本は瑞穂の国だとつくづく思う。今日あたりの会津盆地は稲刈りが始まったばかり。横光利一が『夜の靴』で書いている庄内地方と変わらない。それが日本の原風景なのである。横光が感動したのは穂波をそろえた稲ばかりの風景であった。「外国から帰って来たとき、下関から上陸して、ずっと本州を汽車で縦断し、東京から上越線で新潟県を通過して、山形県の庄内平野へ這入ってきたが、初めて私は、ああここが一番日本らしい風景だと思ったことがある。見渡して一望、稲ばかり植ったところは、ここ以外にどこにもなかったからだった」。いくら田園地帯が続いていても、それ以外のところは、雑多なものが目に付いてならなかったからだろう。それと同時に新米にも魅せられた。「新米のみづみづしい重さ、しっとりと手に受けたときの湿り具合、蝋色のほの明るい光沢の底からぼっと曙がさして来る。たしかに新米のこの匂ひには抒情がある。無限の歴史のうなりが波の音のやうに掌に乗りうつって来て、私は感傷的になるのだが」との文章は、立ち返るべき日本は何なのかを、私たちに教えてくれる。会津若松市の東山温泉新瀧で生まれた横光は、東北をこよなく愛した。昭和20年代とは今はまったく違う。第一産業は就業人口の45%が農業に従事していた。現在ではそれが4・39%で、高齢化も進んでいる。それまでの日本人は農を生業(なりわい)にしてきたのであり、それを忘れては日本を取り戻すことはできないのである。

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