昭和35年の安保改定にあたっては、岸信介首相は孤立無援を強いられ、連日のように国会は「アンポハンタイ」のデモ隊に取り囲まれた。法律学者の大半は憲法の神学論争に終始して、違憲論が圧倒的であった。しかし、一人だけ合憲を主張し、岸首相を支持したのが会津っぽの国際法学者大平善悟一橋大教授であった。昭和26年3月の読売評論6月号に「日米共同防衛」を執筆し、自らの立場を明確にしていた。昭和34年に世に出した『日本の安全保障と国際法』において、大平は違憲論を「日本を無力化し、孤立化せしめようとするいかなる企図にも耳を貸すわけにはいかない」と批判するとともに、憲法が集団的自衛権の行使を容認していることを、論理的に説明している。「憲法9条は、自衛権を否定していないのであって、さらに自衛権が認められる以上、今日の国際法上の通念からいって、国連憲章第51条で規定する『個別的または集団的自衛の固有の権利』を有するものと見なければならない。私は、集団的自衛権は、個別的自衛権の同時行使だと考える見解をとり〈共通の危険にたいして単独に、または共同して行動することを意味するもの〉とするから、集団的自衛権は、そのままわが憲法の許容するところだと考える」。今になっても法学者の多くは、違憲論から脱却できず、日本を誤った方向に導こうとしている。大平は「冷静に国際環境を分析して、客観的な判断を下し、国家利益から現実的な見通しを立てる」ことの必要性も説いていた。もうそろそろ法律学者もお花畑から脱却すべきなのである。戦後70年も経つわけだから。
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