私たちがん患者にとって“痛み”は本当に悩ましい。どこかが痛ければ、すわ、また再々発か、転移か、と慌てる。だからといってすぐに痛み止めを飲むことについては、いろいろ躊躇いがあるのではないだろうか。
何度もご紹介している朝日新聞静岡版の渡邊先生の連載から、以下最新号を転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医の独り言(2013年4月12日)
麻薬系鎮痛剤
■副作用、必ずしも強くない
がん治療では、医療用麻薬を使う機会が多くありますが、その使用について誤解も多いようです。
「麻薬はなるべく使いたくない」という患者に理由を尋ねると、「副作用が強いから」「癖になる」「中毒になる」「体が弱る」「廃人になってしまう」といった答えが返ってきます。どれも間違いです。
また、麻薬を使うというと、「自分は末期なのだろうか」と考える患者も多いのですが、これも必ずしも正しい認識ではありません。
痛みは我慢した方ががんという病気に勝つことができると信じて、痛みのあることすら私たち医師や看護師に言ってくれない人がいます。麻薬なんて飲んだらダメだと家族からたしなめられた、という患者の話も聞きます。
痛みの程度、種類に合わせた鎮痛剤を使い、夜はぐっすり眠り、昼間も痛みのことを忘れ、普段通りの生活ができるようにすることが治療の目標です。
「痛ければ鎮痛剤を飲む」と簡単に考えてもいいと思います。歯痛、腰痛、頭痛などに使う消炎鎮痛剤に比べ、モルヒネなどの麻薬系鎮痛剤は、必ずしも副作用が強いということはありません。
消炎鎮痛剤で、胃が荒れる、つまり胃潰瘍(かいよう)や胃炎といった副作用に苦しむ人がいますが、麻薬系鎮痛剤には、それはほとんどありません。麻薬系鎮痛剤の一般的な副作用の吐き気、便秘などは薬で抑えることができます。
麻薬系鎮痛剤を使う時に「強い薬」という表現を使う医師がいます。そう言われると患者は「強い薬はやめてほしい」と言います。私は「強い、弱いではなく、働き方の違う鎮痛剤」と言います。また、麻薬と言わないで、「違う鎮痛剤」と言います。何か問題がありますか? (浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
先々週は、がん患者にとっては、何のことはない痛みも再発転移の不安・恐怖へと思考が繋がってしまう、というお話。先週は、単純に考えて、痛かったら我慢しないで痛み止めを飲もうというお話だった。 痛みはとても主観的なものだ。本人が痛いと感じる時は間違いなく痛いのだ。
今、私の痛みは鎮痛剤のロキソニンでなんとかなっている。けれど、これが効かなくなったら、次の段階は麻薬系の痛み止めになるのかなあ、という漠然とした不安がある。が、そんなレバタラを考えていても仕方がない。痛みは、前向きに治療していこうという気持ちを間違いなく奪うから、痛ければそれをコントロールするのが先決だ。
まあ、頭では分かっている。けれどいよいよ(とうとう)麻薬系痛み止めか・・・と身構えてしまうのは、患者として当然かな、と思う。
が、麻薬系といわず「作用機序の違う」鎮痛剤と言ってもらえれば、随分受け取り方は違うだろう。本当に言葉は使い方だ。医療関係者には本当に患者の気持ちを慮った高いコミュニケーション能力が求められるものだな、と思う。
そして、患者サイドは考えすぎずにちょっとアバウトに。心穏やかに長い治療を続けて行くには、その辺のいい加減さがきっと大切なことなのだろうな、と思う。
余計なことまで先回りして考えない。突き詰め過ぎない。ひいては自分自身を追い込まないこと、だ。
そもそもロキソニンなんぞは、今や薬剤師さんがいればドラックストアでも買い求めることが出来る一般的な薬だ。私が通っている薬局では、「ロキソニンは強いので胃が荒れるかもしれない。」と言われたけれど、今回風邪をひいた息子はかかり付けのクリニックで、しっかり同じ量のロキソニンが1日3回処方されていた。薬局でも特に、作用が強力ですよ、とか胃が荒れますよとかいう説明はなかったそうだ。普通の風邪でも4日間12錠。それを思えば、なんの何の、という感じだ。
痛いのは我慢しないで、ちゃんと薬の助けを借りよう。
薬が薬を呼び・・・という副作用を心配し過ぎて我慢した挙句、痛みを長引かせてしまうのはもったいないと思う。
さて、フェソロデックス5回目の翌日である今日は、なんと不思議なことに今までのように腰の痛み、だるさを殆ど感じない。こんなことは初めてだ。もちろん針を刺した辺りを押せばそれなりに痛いのだけれど、すいすい歩けてびっくりしている。やはり針刺し名人Oさんのなせる魔法だろうか。なんとも有難い週末である。
何度もご紹介している朝日新聞静岡版の渡邊先生の連載から、以下最新号を転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
がん内科医の独り言(2013年4月12日)
麻薬系鎮痛剤
■副作用、必ずしも強くない
がん治療では、医療用麻薬を使う機会が多くありますが、その使用について誤解も多いようです。
「麻薬はなるべく使いたくない」という患者に理由を尋ねると、「副作用が強いから」「癖になる」「中毒になる」「体が弱る」「廃人になってしまう」といった答えが返ってきます。どれも間違いです。
また、麻薬を使うというと、「自分は末期なのだろうか」と考える患者も多いのですが、これも必ずしも正しい認識ではありません。
痛みは我慢した方ががんという病気に勝つことができると信じて、痛みのあることすら私たち医師や看護師に言ってくれない人がいます。麻薬なんて飲んだらダメだと家族からたしなめられた、という患者の話も聞きます。
痛みの程度、種類に合わせた鎮痛剤を使い、夜はぐっすり眠り、昼間も痛みのことを忘れ、普段通りの生活ができるようにすることが治療の目標です。
「痛ければ鎮痛剤を飲む」と簡単に考えてもいいと思います。歯痛、腰痛、頭痛などに使う消炎鎮痛剤に比べ、モルヒネなどの麻薬系鎮痛剤は、必ずしも副作用が強いということはありません。
消炎鎮痛剤で、胃が荒れる、つまり胃潰瘍(かいよう)や胃炎といった副作用に苦しむ人がいますが、麻薬系鎮痛剤には、それはほとんどありません。麻薬系鎮痛剤の一般的な副作用の吐き気、便秘などは薬で抑えることができます。
麻薬系鎮痛剤を使う時に「強い薬」という表現を使う医師がいます。そう言われると患者は「強い薬はやめてほしい」と言います。私は「強い、弱いではなく、働き方の違う鎮痛剤」と言います。また、麻薬と言わないで、「違う鎮痛剤」と言います。何か問題がありますか? (浜松オンコロジーセンター・渡辺亨)
(転載終了)※ ※ ※
先々週は、がん患者にとっては、何のことはない痛みも再発転移の不安・恐怖へと思考が繋がってしまう、というお話。先週は、単純に考えて、痛かったら我慢しないで痛み止めを飲もうというお話だった。 痛みはとても主観的なものだ。本人が痛いと感じる時は間違いなく痛いのだ。
今、私の痛みは鎮痛剤のロキソニンでなんとかなっている。けれど、これが効かなくなったら、次の段階は麻薬系の痛み止めになるのかなあ、という漠然とした不安がある。が、そんなレバタラを考えていても仕方がない。痛みは、前向きに治療していこうという気持ちを間違いなく奪うから、痛ければそれをコントロールするのが先決だ。
まあ、頭では分かっている。けれどいよいよ(とうとう)麻薬系痛み止めか・・・と身構えてしまうのは、患者として当然かな、と思う。
が、麻薬系といわず「作用機序の違う」鎮痛剤と言ってもらえれば、随分受け取り方は違うだろう。本当に言葉は使い方だ。医療関係者には本当に患者の気持ちを慮った高いコミュニケーション能力が求められるものだな、と思う。
そして、患者サイドは考えすぎずにちょっとアバウトに。心穏やかに長い治療を続けて行くには、その辺のいい加減さがきっと大切なことなのだろうな、と思う。
余計なことまで先回りして考えない。突き詰め過ぎない。ひいては自分自身を追い込まないこと、だ。
そもそもロキソニンなんぞは、今や薬剤師さんがいればドラックストアでも買い求めることが出来る一般的な薬だ。私が通っている薬局では、「ロキソニンは強いので胃が荒れるかもしれない。」と言われたけれど、今回風邪をひいた息子はかかり付けのクリニックで、しっかり同じ量のロキソニンが1日3回処方されていた。薬局でも特に、作用が強力ですよ、とか胃が荒れますよとかいう説明はなかったそうだ。普通の風邪でも4日間12錠。それを思えば、なんの何の、という感じだ。
痛いのは我慢しないで、ちゃんと薬の助けを借りよう。
薬が薬を呼び・・・という副作用を心配し過ぎて我慢した挙句、痛みを長引かせてしまうのはもったいないと思う。
さて、フェソロデックス5回目の翌日である今日は、なんと不思議なことに今までのように腰の痛み、だるさを殆ど感じない。こんなことは初めてだ。もちろん針を刺した辺りを押せばそれなりに痛いのだけれど、すいすい歩けてびっくりしている。やはり針刺し名人Oさんのなせる魔法だろうか。なんとも有難い週末である。