ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2013.4.25 がんと生きるために大事なこと

2013-04-25 21:22:28 | 日記
 昨年、読売新聞の医療サイトyomiDr.に連載された高野先生のコラム。この4月から再開され、楽しみに読んでいる。これまでの3回は(1)腫瘍内科とは、(2)腫瘍内科は機能しているか、(3)腫瘍内科医への道、というものだったが、そろそろ患者にとって一番知っておきたい内容に入ってきたので、長文ではあるが、以下に転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

【がんと向き合う~腫瘍内科医・高野利実の診察室~】がんとともに生きる方法とは(2013年4月24日)

 がんと診断されたとき、患者さんは、不安になり、戸惑います。「頭が真っ白」になってしまう人もいます。治療方針の説明を受けても、初めて聞く言葉ばかりで、混乱した頭にはなかなか入ってきません。病気と治療の恐ろしいイメージだけが増幅し、追い詰められた気持ちで治療に取り組みますが、先の見えない不安に副作用の苦痛も加わって、気持ちが落ち着くことはありません。
 すべての患者さんがそうだというわけではありませんが、がんと向き合うとき、多くの方が、このように、「不安」「絶望」「不幸」を感じているのだと思います。医療というのは、そんな気持ちを、少しでも、「安心」「希望」「幸福」に変えていくためにあると、私は思っています。

あふれかえる情報
 でも、現実の社会には、「安心」「希望」「幸福」へ向かうのを妨げる要因がたくさんあります。医療に関する情報はあふれかえっていますが、中には、患者さんの「不安」「絶望」「不幸」を煽ることで利益を得ようとする人たちからの情報もまぎれこんでいて、患者さんは、そんな情報に翻弄されてしまいます。代替療法や書籍の広告では、「医者に殺されない」とか「○○で進行がんから生還した」とか、刺激的な言葉が並び、患者さんの心は乱されるばかりです。
 このコラムでは、これから数回にわたり、「がんとともに生きるための方法」を考えていくことにします。
•がんとどのように向き合うのがよいのか?
•道に迷いそうになったときには、何を道しるべにすればよいのか?
•情報の波に飲まれそうになったときには、どのようにして情報を見極めるのがよいのか?
•重要な判断を迫られたときには、どのようにして意思決定するのがよいのか?

がんと向き合うキーワード
 予告をかねて、いくつかキーワードを挙げておきます。
 情報を見極めるために重要なキーワードは、「エビデンス(根拠)」と「エビデンスに基づく医療(EBM)」です。
 適切な「意思決定」をするために重要なキーワードは、「治療目標」と「リスク(不利益)とベネフィット(利益)のバランス」です。
 現代社会において、「安心してがんとともに生きる」ことを妨げる要因のキーワードは、「イメージ」と「センセーショナリズム」です。
 そして、すべての場面でいつも大事にしておきたいキーワードは、「価値観」と「語り合い」です。
 これだけだとなんのことやらわかりにくいと思いますが、これらのキーワードを中心に、できるだけわかりやすく考えていくつもりです。

 がんに直面し、医療や、情報や、がんをめぐるイメージに翻弄されがちな患者さんの道案内役になり、「安心」「希望」「幸福」を感じながら歩む手助けをできれば、と思っていますが、私は実は方向音痴ですので、皆さん以上に迷ってしまうことがあるかもしれません。そんなときは、読者の皆さんも一緒にこの問題に向き合っていただき、ご助言などいただければ幸いです。

(転載終了)※  ※  ※

 がん患者として9年目になり、主治医が腫瘍内科医だと(実際、接してみると、悪いものは切り取って治すという外科医とは考え方が全く違うと思う。)、高野先生が示される考え方はとても良く理解出来る。

 思えばまだひよっこ駆け出しの患者だった時、とにかく情報の海に溺れて、何が正しいのかも判らずに、あれこれいろいろな本やサイトを読みまくって一喜一憂したり、とすっかり翻弄されてしまった(今は必要以上にサイトにアクセスすることはない。これを“勉強不足”とも言うかもしれない。何ともずうずうしくなったものだ。)。

 けれど、先生のキーワードにあるように、治療をするならエビデンスのないものは信用してはいけない。ネットの情報はその観点からバッサリ落とされるべきものが沢山ある、と判る。そうなると、センセーショナルな見出しや広告文等にはいちいち動じなくなってスルーすることが出来る。だんだん肝が座ってくるわけだ。

 そして、エンドレスの再発治療の目標は残念ながら「完治」でなく、「少しでも長く今のQOLを落とさずに治療を続けて延命する(生きながらえる)こと」。それさえ押さえておけば、あまりに大きなリスクを冒してまで無理な治療はしなくなる。

 初発治療であれば、我慢してキツい治療を乗り切れば、がん細胞を完全に叩けて完治が見込めるかもしれない。が、再発治療となればそうはいかない。強い抗がん剤でたとえがん細胞が死んでくれても、本人がその副作用で廃人のごとくダウンしてしまっては何にもならない。そうはいってもバランスも大切で、ここは頑張りどころ、とかここはあまり無理しないでよい、そういう局面が必ず来る(実際私にはこの5年間ちょっとで何度もそういうことが訪れている。)。

 イメージとセンセーショナリズムについて先生がどんなお話をしてくださるのかは、実際に掲載されてからのお楽しみにしたい。

 何より、自分の「価値観」に基づいて生きること、これが何よりも大切だと思う。
 他でもない自分の人生だ。誰かの為だけに生きるのではない。まずは何より自分のために(もちろん、家族や大切な人のために、も自分のため、の一部である。)、残された自分の時間をどう過ごしていきたいのか、どうすれば長さでなく中味で満足出来る日々が送れるのかを考える。そのためにこそ主治医ときちんと「語り合って」、自分がどんな人生を送りたいのか、常に言葉にして確かめながら前に進んでいくこと(当然その場その場での微調整、進路変更はあり)が必要ではないだろうか。
コメント (4)
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