450ページもあるのに、おもしろくて、ずんずん読めてしまった。
飛行機が墜落して、南太平洋の無人島に漂着した10人と犬1匹。
これがごく小さな正統派無人島なのだ。LOSTのように変な生物やら
なぞの人間やらもいないし、妙ないわくなどもない。
一度だけ嵐は来たが、危険な生物もいないし、楽園と言ってもいいくらいだ。
漂着したメンバーがおもしろい。
半分の5人が、南の島にゴルフリゾートを作る下見に来たビジネスマンたち。
うちひとりはスポンサーの馬鹿息子で、彼が持ち出す無理難題を
4人はなんとか叶えようと必死。そもそも、嵐のなか、無理やり飛行機を
飛ばさせたのも、彼がゴルフに行きたいと言ったからなのだ。
最初のうちは、会社の上下関係にのっとって行動しているものの、
孤島生活が長引くにつれ、それがだんだんと崩れていく。
そのあたり、会社組織を皮肉っているようでおかしい。
残りのメンバーは、太平洋戦争の慰霊の旅に来た老人と小学生の孫、
新婚旅行のカップル、そして唯一の外国人は過激派環境保護団体の幹部で
国際指名手配されているアメリカ人と来た。
寄せ集めの集団ながら、全体の雰囲気はフレンドリーで、老人や小学生も含め、
全員がなんらかの形で集団の役に立ち、協力して生き延びていく。
小さなもめごとは起きるが、深刻な事態には発展しない。
読むのがつらくなるような「蠅の王」とは大違いだ。
島から脱出する手だても、船を作るというような大掛かりなものではなくて
あくまでも等身大の方法だが、これは効果あるかも、とうなずける良策だった。