50周年おめでとうございます。
以前にも書いたが、孤高(笑)のシンガー・ソングライター南佳孝が、今年デビュー50周年を迎えた。これは凄いことである。あの大御所ユーミンが昨年50周年を迎えた時にも感じたが、この浮き沈みの激しい世界で、ほぼずっと、途中で休業したりせずに活動を続けてきた、というのは、本当に賞賛に値すると思う。本人のメンタルや努力の賜物だろうけど、なんだんかだ言ってもやはり才能ではなかろうか。優れた作品を発表してヒットさせることで地位を築き、創作活動を継続することで安定した評価と人気を確立させ、年月が経っても過去の作品が相変わらず評価されることで、世間に忘れ去られることなく、また経済的な潤いも得ることが出来る、こういうのは音楽の才能が背景にあるからこそ可能なのだ。ユーミンだって桑田佳祐だってそう。イメージ戦略やメディア戦略だけでは、こうはいかないと思う。そんな音楽家の一人が南佳孝なのであり、ほぼ同時デビューのユーミンや、一時期同列で評価されていた山下達郎あたりと比べるとめちゃ地味だが、それでも続けてきたのは、実に素晴らしいことと思う。
50周年おめでとうございます。
という訳で、先日、南佳孝の50周年記念コンサート『50th Anniversary Live 2023 南佳孝フェス』に行ってきたのである。同じ50周年で、春から年末まで全国アリーナツアーを展開するユーミン、毎年のように全国ホールツアーを精力的に行っている山下達郎、45周年記念で茅ヶ崎野球場で4日間コンサートを開催するサザン、といった大御所たちと比べて、50周年記念だけど東京国際フォーラムで、それも一回だけのコンサートというのはいかにも地味な感じだけど(苦笑)、それも南佳孝らしくて良いではないか。そもそも50周年記念コンサートなんて、開催出来る人の方が少ないのである。
という訳で行ってきた。
場内に入ると、お祝いの花束が、奥ゆかしく並んでいた。
今回のコンサートは、50周年でもあり、南佳孝だけでなく、普段から彼が交流を持ったり共演したりしているミュージシャンたちがゲストで登場する、というのは事前にアナウンスされていた。その顔ぶれはというと、
太田裕美、尾崎亜美、杉山清貴、松本隆(トークゲスト)、鈴木茂、小原礼 他
なかなかに豪華である。チケットには”他”と書かれていたが、実際には”他”のゲストはなかった(笑)
さて、予定より10分ほど遅れて、南佳孝フェスは始まった。ステージの上のメンバーは、ビアノ、キーボード&サックス、ベース、ドラムの4人に、南佳孝のギターとボーカル、という編成。去年見に行った『南佳孝 の松本隆を歌う』の時の編成にベースとドラムが加わった感じ。
暖かい拍手と歓声に迎えられて登場した南佳孝、ギターを手に一曲目「憧れのラジオガール」を歌い始める。意外だが、近年この曲よく歌ってる気がする。実に声がよく出ているのに、いつもながら感心する。で、そのまま「日付変更線」「涙のステラ」と歌い続けてから最初のゲスト、杉山清貴が登場。
この2人、何年も前から一緒に活動してて、ライブだけでなくCDも出している。確か、どういうわけか2人揃って『徹子の部屋』にも出た事があったはず(笑) 正直言うと、南佳孝と杉山清貴のイメージが、僕の中ではどうも重ならないので(笑)、何故一緒にやってるのだろう、と不思議だったが、この時のMCでは、割に共通点があるらしい。一カ所に長くいられないとか海が好きとか(笑) ま、ここでこの2人の共演で2曲。杉山清貴と言えば、僕にとってはやはりオメガトライブなんだけど、その当時と全く変わらない声と声量は素晴らしい。あの頃より少し太ったような気はするけど^^;
杉山清貴とのセクションが終わってから「Scotch And Rain」「プールサイド」の2曲が演奏された。MCで南佳孝が、今回の50周年記念に、作詞家の来生えつこを呼びたかったのだが、体調不良で参加出来ないと返事があった、と言ってた。みんな年齢も年齢だし、色々あるんだね、なんて事も言ってたけど、来生えつこも何か病気を抱えているのなら、早く良くなって欲しいもの。「プールサイド」はそんな来生えつこに捧げたような感じかな。
南佳孝と言えば、松本隆の作詞による作品が一番多いと思うが、来生えつこと組んだ曲も意外と多いし、また名曲率も高い。有名な「モンロー・ウォーク」も作詞は来生えつこだ。確かに、この場にいても不思議な人ではない。個人的には、来生えつこって写真すらも見た事ないので、どんな人なのか見てみたい気持ちはあったけど(笑)
そして、ここで2番目のゲスト登場。尾崎亜美&小原礼である。南佳孝と尾崎亜美の組み合わせも意外だが、この2人も割と共演すること多い。この前日も、所沢で一緒だったらしい。と言っても、小原礼のバンドSKYEのイベントに南佳孝も尾崎亜美と共にゲスト出演した、という事のようで、言わば返礼みたいなものか(笑) ステージ下手から尾崎亜美・南佳孝・小原礼の順に並んで、3人とも大好きだというビートルズのナンバーなど3曲を披露。中でも、尾崎亜美の代表作と言っていい「オリビアを聴きながら」を南佳孝が歌う場面があり、これがまた良かった。”ただ歌うだけでなくドラマを感じさせるシンガー(松本隆・談)”である彼の正に面目躍如。耳慣れたはずの「オリビアを聴きながら」が違う曲に聞こえた。アコギだけのバックで歌ったこともあり、声も含めて南佳孝の個性が際立っていたように思う。やや意外ではあったが^^;
尾崎亜美は皆さんご承知の通り、非常に才能豊かな人であり、名曲も多く発表しているが、その存在は今イチ地味である。本来なら、ユーミンや中島みゆきとまではいかなくても、竹内まりやくらいのポジションにいてもおかしくない人なんだけど。不思議だ。その夫である小原礼は、ゲストなんだけど、意識しておとなしくしてた感がある。確かに、この人は本来ベーシストだしね。もっとベース弾いて欲しかったけど無理か(笑)
ここでまた南佳孝ひとりに戻って「コンポジションⅠ」「夜の翼」「ブルーズでも歌って」と隠れた名曲が続く。たまりません。なんか進行を間違えたらしいけど、ご愛嬌ってことで(笑)
ここで3番目のゲスト、太田裕美登場。こちらも意外な組み合わせだが、先ほどの尾崎亜美同様、結構付き合いは古いらしい。まずは太田裕美の大定番「木綿のハンカチーフ」を2人で歌ったところで、松本隆そして鈴木茂登場。ひとしきりトークに花を咲かせた後、この日の為の新曲を、鈴木茂を交えて演奏。太田裕美はここまでで、ちょっと残念。客席から見る限り、外見も声も全く昔と変わってないのが凄い。衣装も昔のまんま。恐れ入りました(笑)
鈴木茂はそのままステージに残って「そばかすのある少女」「スタンダード・ナンバー」、そして、客席とのコール&レスポンスを交えてランディ・ニューマンの「Sail Away」。この前にもう一曲演奏したように思うのだが、忘れてしまった^^;年は取りたくない(爆)「そばかすのある少女」には杉山清貴も参加。何でも、彼は昔から鈴木茂のファンだったそうな。
余談だが、今から40年近く前、当時通っていた大学の学園祭に南佳孝がやってきて、もちろん見に行った事がある。その時も、アンコール(だったと思う)で「Sail Away」を歌っていた。この日のMCから察せられたが、思い入れの深い曲のようだ。確かに名曲だし、歌ってて気持ち良さそう^^
ただ残念なことに、「Sail Away」でコンサートは終了。ちょっと少ないような気がしたが(笑)、ゲストとの共演もあったし、こんなものかな。
もちろんアンコールありで、ゲストもステージに勢揃いして「スローなブギにしてくれ」「モンロー・ウォーク」とお約束の定番曲。太田裕美と尾崎亜美も曲の一部で歌ったのだが、2人とも低い音域で歌ってもなかなかである。素晴らしい。さすがキャリア長いだけあって実力は十分なのだ。
50周年記念コンサートを締めくくったのは、これまた定番「冒険王」。松本隆もいたし、これしかないかな。いつ聴いても素晴らしい曲であり歌なのであった。
2時間ちょっとのコンサートで、もっとやって欲しかったけど仕方ないか^^; 年を取るにつれて、南佳孝の歌は円熟味を加え、以前にも増して素晴らしい。堅実なバックの演奏(特にピアノが素晴らしい)もあり、またゲストとの楽しいトーク等もあり、非常に素晴らしいコンサートだった。南佳孝は、普段はもっと小規模な会場でライブを割とまめに行っており、いつまでも歌い続けて欲しいと思う。また、この日松本隆とのトークの中で、新曲作ろうなんて話も出てて、これまた楽しみ。
という訳で、南佳孝フェスのライボレポでした。50周年おめでとうございます。またいずれ、ライブ行きますのでよろしくです(笑)
で、最後におまけ(笑)当日、会場で配っていたパンフレット。今回のゲストの皆さんのお祝いメッセージが掲載されてます。読めないと思うけど(笑)
50周年おめでとうございます。