日々の覚書

MFCオーナーのブログ

アラン・ドロンを悼む

2024年08月19日 23時32分08秒 | 時事・社会ネタ
既に皆さんご存知の通り、フランス映画界を代表する俳優だったと言っても過言ではない、アラン・ドロンが亡くなった。享年88歳。記事によると、親族に囲まれ安らかに息を引き取ったらしい。

アラン・ドロンと言えば、フランスいや世界の映画界に於いて、最も美しい男優である。要はイケメンだった訳だが、そんな軽い言葉では表現できない、とにかく美しい男だった。ほんと、その美しさの前では、ハンサムとか二枚目とかいった言葉も霞んでしまうのではなかろうか。もちろん、他にも美男の俳優はたくさんいたのだが、僕にとっては美男=アラン・ドロンなのである。昔も今も。

僕がかつて映画少年だった1970年代中頃、アラン・ドロンは押しも押されもせぬ大スターだった。皆さんよくご存知の通り、アラン・ドロンは1935年生まれなので、1970年代中盤だと40歳前後だった訳で、美男俳優として活動するにはピークをやや過ぎていた頃かと思われるが、それでもあの頃アラン・ドロンは大人気で、毎年2~3作は主演映画が公開されてたし、CMにも出てた。もしかすると、日本だけだったのかもしれないが、アラン・ドロンは文字通りトップスターだったのだ。日本の歌謡曲にも、美男の代名詞としてアラン・ドロンが登場する事もあった。一番有名なのは榊原郁恵の「アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた」だろうね。

アラン・ドロンはとにかくトップスターだったし、主演映画もしょっちゅう公開されてて(今調べてみたら、1975年と1974年は3作、1973年と1972年は4作が公開されている)、さぞかし印象に残る作品も多かろう、と思うのだが、実は僕は意外とアラン・ドロンの映画を見ていない、もしくは見た記憶がない。なんとなくだけど、僕自身フランス映画が苦手(笑)なのと、それに関連するのかもしれないが、アラン・ドロンの映画って、どれも同じに思えた、というのが理由だったような。全てではないけど、アラン・ドロンの映画って、旬の美人女優と共演して濡れ場もしっかりとある、というのも多かったから、決して興味がなかった訳ではない、と思う(笑) 当時、間違いなく見たという記憶があるのは『太陽がいっぱい』『地下室のメロディ』『冒険者たち』『サムライ』『シシリアン』『ボルサリーノ』『燃えつきた納屋』『暗黒街のふたり』くらいかな。見たけど印象が薄いのが大半なんだけど、一番強烈な印象があるのはなんといっても『冒険者たち』である。

そう、この『冒険者たち』は、僕にとって忘れられない映画である。1967年公開、ロベール・アンリコ監督、アラン・ドロンの他リノ・バンチェラ、ジョアンナ・シムカスが出ていた。夢を追いかける3人の若者が、財宝を探しに行き、そこで起きる悲劇を描いている。詳細は別の機会に譲るが(笑)、とにかく全編センチメンタルな雰囲気に貫かれていて、何度見てもつい泣けてしまう映画なんである。特にラスト、銃撃戦の末、撃たれて死んでいくアラン・ドロンとリノ・バンチェラの会話なんて、涙なくしては見れない。フランス映画とは相性の悪い僕ではあるが(笑)、この『冒険者たち』は名作と思う。サブスク等にあると思うので、是非検索してご覧下さい^^;

あ、それと、この『冒険者たち』の音楽も素晴らしい。音楽担当は早逝の天才、フランソワ・ド・ルーベで、哀愁のメイン・テーマも海で財宝を探すときに流れるメロディも実に素晴らしい。主題歌をアラン・ドロン自らが歌ったりもしてる。こちらも、万が一BOOK OFFとかで見つけたら是非GETする事をお薦めします(笑)

この『冒険者たち』もそうだったんだけど、アラン・ドロンって、美男の割にはモテる役って少なくて、思いを寄せる美女を他の男に取られたり、抗争のあげく最後には死んでしまったりする役が多かったような気がする。私生活は知らんけどね。あまりにも美男なので、映画では不幸な設定にして、帳尻を合わせようとしてたのか?(違)

昔からハリウッドあたりでも、美男(美女)=名優ではない、みたいなのがあって、アラン・ドロンもその例に漏れず、役者としての評価はそれほどでもなかったような気もする。あまり表情を変える事のないクールな男、みたいな役柄も多かったような...前述の『冒険者たち』はそうでもなかったと思うけど。ただ、そこいらは本人も分かってたのか、後年『カサノヴァ最後の恋』という映画で、老境に差し掛かかり若い娘には見向きもされなくなったジゴロをアラン・ドロンが演じていて、自虐的というかなんというか、なんかいい味出してた気がする。若いのはダメだけど、年増相手ならまだまだ神通力は衰えてない、という設定もなんか面白かったな。で、さすがはベテラン・ジゴロ、手練手管というか、ほとんどだまし討ちみたいな手は使ったけど、結局は意中の若い娘を手中にしてしまう、というとこにも美学を感じたりなんかして(爆) 単に自虐的なだけではない初老のアラン・ドロンが頼もしい(笑) サブスクで見かけたら、ヒマなら見てみる価値はありますよ^^

ここ20年くらいのアラン・ドロンは何をしてたのか、実は全く知らない。ただ、これもブログネタにしたが、フジのスマスマのビストロのコーナーに、アラン・ドロンが出演したのを見た事がある。なんでも、この収録の為だけにフランスからやって来て、終わったら速攻で帰国する、というスケジュールだったらしい。この時のアラン・ドロンはたぶん70歳過ぎだったのかな、正にカッコいいおじさんだった。本当の美男は年を取っても美男なんだな、とミョーに感心した記憶がある。

という訳で、自分の青春時代の銀幕スターが、また一人いなくなってしまった。いつも言ってるけど、悲しいけれど現実なのだ。アラン・ドロンのような、映画スターになるべくして生まれてきたような人を、ブラウン管で見れた自分はある意味幸運だったと思う。

安らかにお眠り下さい。

久々に『冒険者たち』見たくなった。アマゾン・プライムにあるかな。


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身も心も

2024年08月18日 20時23分32秒 | 時事・社会ネタ
ひと昔前だと、8月も盆を過ぎれば少しづつ涼しくなって、そろそろ秋の気配なんて感じだったけど、近頃はそうでもないようだ(苦笑) この暑さ、あと一月は続きそうな雰囲気だし、皆さん、どうかご自愛下さい。

しばらく話題にしていなかった中日ドラゴンズだが、盆を過ぎても浮上する気配は全くなく、8月17日現在で110試合消化して45勝57敗8引き分け、首位のカープとは12ゲーム離されてのセ・リーグ最下位である。一昨日だったかな、久々にテレビ中継があったので、ドラゴンズvsタイガースの試合を見たが、ずうっっっっっと同じ戦い方だ。僕が見た試合は、ドラゴンズが2-1でタイガースに勝ったのだが、貧打は変わらず、最少得点を投手リレーで守り抜く、という相変わらずのパターンで、夏場に投手陣の疲労蓄積がピークとなって投手陣崩壊、という事態にはならずに済んでいるようなのが救いでしかない状態。ほんと、投手陣は頑張ってて、ご承知の通り、高橋宏斗が4勝0敗防御率0.00という驚異的な数字で、7月のセ・リーグ月間MVPを受賞した事に象徴されるように、高橋だけではないのだが、とにかくよくやってる。今の状況から抜け出せない要因は打線である。正直言うと、この時期でこの状態では、なんとかAクラスに残ってクライマックス・シリーズ出場、なんて正に夢の夢だな。ほんのちょっとした工夫で、打開出来そうな気はするのだが。

最近の大ニュースと言えば、なんといっても、岸田総理が次の自民党総裁選には出ない、つまり任期が終わったら総理大臣を辞める、と明言した事だろう。これには驚いた。絶対に、岸田総理はまだ続けるつもりだと思ってたし、自分の足場を固めて、再選に向けての障害をなくす為と思うが、これまでかなりえげつない事もやってる。にもかかわらず、総裁選に出ない、というのは解せないなぁ。今までやってきた事は何だったのか? 僕自身は岸田総理を支持しないが、でも今回の発表は謎である。一体何を考えているのか。そういう点では、岸田総理は怖い。ま、それを受けて、総裁選への出馬に意欲的と言われてる人たちがゾロゾロと現れて、かなり混沌としてきているのも事実。次の総裁選は派閥なしで行われる訳で、となると、20人の推薦人を確保さえ出来れば、皆総裁選に名乗りを上げるのではないか。面白いと言えば面白いけどね。先の都知事選みたいになるのかなぁ。ただ面白がってる訳にはいかないのだが(苦笑)

という訳で、最近買ったCDから。



ちょっと前にレコード・コレクターズの1984年特集をブログネタにしたが、その特集の1984年を代表するアルバムの中に本作もリストアップされていた。1979年デビューのジョー・ジャクソンの通算6枚目のアルバムである。

デビュー当初、僕はジョー・ジャクソンの事をパンク・ロッカーと思っていた。が、彼はアルバムを重ねる毎に音楽性を変えていき、1982年の『ナイト・アンド・デイ』ではパンク・ロッカーのイメージは微塵もなかった。なんというか、ニュー・ウェイブ的な感覚を生かしつつも、多彩なスタイルを展開するミュージシャンになっていたのだった。実際、『ナイト・アンド・デイ』の評価は高く、シングル・カットされた「ステッピン・アウト」はグラミーにもノミネートされた。僕もこの『ナイト・アンド・デイ』は好きで、例の”MFCオーナーの歴代最高のアルバム500選”では293位にランクされている(だから?) その次に出た『ボディ・アンド・ソウル』は、『ナイト・アンド・デイ』の方向性を踏襲しつつ、シンプルな作りだった前作より、ホーン等を足して、ややゴージャスに仕上げたという印象。

やや余談だが、『ナイト・アンド・ディ』も『ボディ・アンド・ソウル』もタイトルがジャズを連想させるし、実際『ボディ・アンド・ソウル』のジャケットも、ソニー・ロリンズのアルバム・ジャケットのオマージュなんだそうな。かといって、ジャズをやっている訳ではないのだが、ジャズの影響は大きい事が窺える。前述したように、ホーンを導入した曲が多いのだが(シングルの「ホワット・ユー・ウォント」とか)、このホーンがファンキーなテイストではなく、クールな雰囲気を醸し出していて、ここいらもジャズっぽいというか都会的なイメージだ。ポスト・パンクのジャズ的展開、ってのは違うかな?(笑) イントロにスター・ウォーズみたいなリフが挿入される一曲目の「ザ・バーディクト」から既にそんな雰囲気である。40年前のアルバムだが、今聴いても全く古びていないのが凄い。やはり、ジョー・ジャクソンはただのパンク・ロッカーではなかった。ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックで学んでいただけのことはある。学歴で判断してはいけないんだけどね(笑)

続いては、




ジョー・ジャクソンと同タイトルかと思ってしまうが、こっちは複数形で(笑)間違いなくジャズ系のマンハッタン・トランスファー(以下マントラ)が1983年に発表した通算7作目のアルバムで、当時の邦題は『アメリカン・ポップ』。ちなみに、「ボディ・アンド・ソウル(身も心も)」はジャズのスタンダードとして有名だが、マントラも1979年のアルバム『エクステンションズ』で取り上げている。

ご存知の通り、マントラは前述の『エクステンションズ』と次作の『モダン・パラダイス』をジェイ・グレイドンのプロデュースで制作し、ポップ寄りにシフトしてヒットを出していて、てっきりこの『アメリカン・ポップ』も同傾向でジェイ・グレイドンのプロデュースによるもの、とずっと僕は思い込んでいた。が、それは大いなる勘違いで、本作のプロデューサーはリチャード・ランドルフだったのだ。今回初めて知った(恥) これまであちこちで、マントラの『エクステンションズ』『モダン・パラダイス』『アメリカン・ポップ』はジェイ・グレイドン・プロデュースによる三部作、なんて書いていたが、実は間違いである。グレイドンは演奏にすら参加してない。大変申し訳ない。お詫びして訂正させて頂きます(誰に言ってるのか?)

という訳で『アメリカン・ポップ』である。ジェイ・グレイドンが関わってないという予備知識で聴いてみると、先の2枚と比較すると打ち込みを多用した80’sサウンドになってるのが分かる。ブラコン風と言ってもいいかも。シングルになった「スパイス・オブ・ライフ」や当時マントラ本人たちが出演したCMで流れた「アメリカン・ポップ」、やっぱりロッド・テンパートン作の「ミステリー」あたり、とことん80’s。B面の「ダウン・サウス・キャンプ・ミーティング」や「ホワイ・ノット」あたりはマントラお得意のジャズ的コーラスとスイング感が堪能できるけどね。ま、なんというか、この時期、マントラですらこういうサウンドでレコード作ってたんだな、と思うと、今さらながら80’s恐るべしって感じだな(よく分からんぞ)。なんだかんだ言ってもマントラなんで、その変幻自在のコーラス・ワークの賜物か、グレードの高いポップ・アルバムになってるのは間違いないんだけど。

色々と問題もあったパリ・オリンピックも、一応無事に終わり、次回は1984年以来のロサンジェルスでの開催だそうな。また80’sブームが来るのだろうか?(意味不明)

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ブギウギ列車夜行便

2024年08月12日 09時48分34秒 | 音楽ネタ
ご存知の方も多いと思うが、こんなショッキングなニュースが流れた。


あのエアロスミスが、スティーブン・タイラーの声帯損傷が回復しないので、ツアーからの引退を決定した、というニュースである。このニュース、結構各方面に衝撃を与えたらしく、"同世代"のブライアン・メイも「悲痛だ」と涙の声明を発表したそうだし、FMでもこの話題を取り上げていて、DJは残念とかショックとかコメントしながら「エンジェル」をかけていた。

このニュースで驚いたのは、スティーブン・タイラーは76歳になってて、それでもツアーに出ようとしていたこと。確かに、大先輩のストーンズや"同世代"(笑)のクイーンあたりが未だにワールド・ツアーとかやってるので、エアロもまだ現役だしツアーは当然という気がしないでもないが、それにしても、この年でツアーというのには頭が下がる。いやほんと、もうゆっくりしてて下さいよ。その心意気だけで十分です。

で、エアロである。いや、今回のニュースに触発された訳ではなくて、ちょっと前に妻が突然エアロ聴きたいと言うので、車でエアロの90年代のアルバムとか聴いてたのだが、そう言えば70年代のアルバムでも持ってないのあるなぁ、と思って中古で探したりしてたのだ。

という訳で、最近買ったCDから。




ご存知エアロの2ndである。1974年発表。邦題は『飛べ!エアロスミス』。確か、本作でエアロは日本デビューを飾ったはずで、若手の有望株だったエアロを日本でも大々的にプッシュしよう、という意気込みが表われた邦題と言っていいのかもしれないが(笑)、当時の日本側の担当者は、バンド名とロゴとアルバム・タイトルから、"飛行機"や"翼"をイメージしたらしく、タイトルはもろそれだし(笑)、一曲目の「Same Old Song And Dance」は「エアロスミス離陸のテーマ」という邦題だった(笑) 本作と次作は全曲邦題がついてて、どういう方向に持って行こうとしていたのかは不明で、プロモートしやすくしようという意図は、なんとなく分かるが、なかなかにトホホな邦題もあり(笑)、本作収録曲だと、有名なヤードバーズのカバー「Train Kept A Rollin'」が「ブギウギ列車夜行便」という邦題で、これは僕にとっては歴代迷(名)邦題TOP10に入る傑作と思うが(笑)、今回購入したCDでは、この「Train Kept A Rollin'」と先の「Same Old Song And Dance」については、邦題はなくなっている。なんか残念(爆)

という訳で、エアロの2ndである。いや、なんというか、後にエアロが成功したから言うのではないが、2ndの割にはすでに大物の片鱗があちこちに感じ取れる傑作、と言っていいのではなかろうか。1stと比べると、曲作りも洗練され、80~90年代のようなキャッチーさはないけれど、独自の個性は確立されており、加えて風格すら感じさせる。カッコいいリフのハードロック「エアロスミスSOS」、ドラマティックに展開する「折れた翼」、曲が足りず穴埋めの一曲だったとは思えない「支配者の女」など、聴きごたえのある曲がも多い。エアロの場合、ヤードバーズをカバーしている事からも察せられるが、同じブルース・ロックでもイギリスのバンドからの影響が大きいようで、そこが同時期のアメリカン・バンドと一味違うところであるが、本作もブリティッシュな雰囲気の陰影を感じさせる音作りで、実に素晴らしい。イギリスのバンドと勘違いした人もいたかも(笑) 初めて組んだジャック・ダグラスの功績もあり、以降、エアロはダグラスとのタッグで名作を連発し、70年代の第一黄金期に突入していくのである。

続いては、




ま、文字通り、エアロのグレイテスト・ヒッツであり、ご存知の通り、エアロのベスト盤は何種類か出ていて、それらの収録曲の大半が80年代後半以降の、いわゆる復活後の第二黄金期のヒット曲で、70年代のベスト盤は本作だけである。故に貴重なのかどうなのか(苦笑) このベスト盤、1980年頃に初期バージョンが出て、その時は「ドリーム・オン」「セイム・オールド・ソング・アンド・ダンス」「スイート・エモーション」「ウォーク・ディス・ウェイ」「ラスト・チャイルド」「バック・イン・ザ・サドル」「ドロー・ザ・ライン」「キングス・アンド・クイーンズ」「カム・トゥゲザー」「リメンバー」の10曲入りだったのだが、いつの間にか、タイトルに"1973-1988"が追記された新バージョンが出ていた。今回僕が中古で買ったのも、その新バージョン。シングル曲のみだった初期バージョンに、1stから3rdから一曲づつ及びジョーとブラッドのギタリスト2人が脱退していた時期の曲も加え、さらにボーナス・トラックも追加されている。前述したが、エアロの70年代(正確にはコロンビア在籍時)だけの編集盤は、本作と3枚組の『パンドラの箱』くらいしかなく、やっぱりエアロは70年代のほうが好きな僕からすると、この時期の曲をまとめて聴けるのは有難い。

エアロというと、ワイルドなイメージが強いと思うが、実際には2ndや3rdで顕著な、陰影のある作り込まれた音作りが特徴で、ワイルドなのは『ロックス』と『ドロー・ザ・ライン』くらいなのでは、という気もする。ここで告白すると、えらそーな事言ってるけど、実は『ドロー・ザ・ライン』の次すなわち『ナイト・イン・ザ・ラッツ』『美獣乱舞』あたりは聴いてないのだが(激汗)、編集盤で聴く限り、決して悪くないな、とは思う。成功はしたものの、それによるプレッシャーなのかどうか、メンバーはアルコールとドラッグに溺れ、レコーディングもままならず、人間関係も最悪、という状況だったと言われている70年代のエアロだが、それでもクォリティの高い作品を出していたのは凄い。確かに、復活後のエアロと比べると、ややキャッチーさには欠けるけど、その分かりやすいけどちょっと武骨なとこも、この頃のエアロの持ち味でもある。「スイート・エモーション」とか、復活して以降の曲だったら、ちょっとブリッジとか足して、さらに魅力的な曲に仕上げたのだろうな、とは思うけどね(笑)

という訳で、70年代のエアロがやっぱり好きです(笑)

でも、冒頭のニュースにしてもそうだけど、やはりエアロ=スティーブン・タイラーなんだなぁ、と改めて思う。ずっとバンドのリーダーで、初期は音楽性も含めてバンドを牽引し、成功してからドラッグ漬けになったバンドの立て直しに尽力し、主要メンバーがいなくなってもバンドを維持し復活に導き、復活後は外部ソングライターの導入などのイメージ戦略を展開して、昔からのエアロのイメージを損なう事なく、キャッチーで洗練された曲を発表してファン層(購買層)を拡大し、エアロを全米ナンバーワン・バンドのひとつにまで押し上げた。素晴らしい功績である。メンバーにも彼に逆らう者はいないだろう。ま、ツアー引退し仕方ないけど、まだ新曲作ってレコーディングする意志があるのなら、是非頑張って欲しいと思う。ま、エアロを聴き始めた事は、エアロ(=スティーブン・タイラー)がこんなに超ビッグな存在になるなんて予想もしなかったけど(笑)

ほんと、クイーン・キッス・エアロスミス世代としては(笑)、いつまでも頑張って欲しい、と思うのであります^^
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ロックフルーテ

2024年08月04日 12時24分29秒 | 音楽ネタ
最近買ったCDから(唐突)



ブリティッシュ・ロック界の最重鎮バンドのひとつであるジェスロ・タルは、1968年デビューなので、56年間活動している事になる。多少のブランクがあったとはいえ56年は凄い。しかも、こうして新作も発表している。ストーンズもポール・マッカートニーも凄いけど、ジェスロ・タルも実は凄いのだ。お忘れなく(笑)

という訳で、重鎮ジェスロ・タルの新作である。最近購入して聴いたけど、出てたのは去年。前述の通り、ジェスロ・タルはデビュー以来56年になるが、2003年のクリスマス・アルバムを最後に新作を長く出しておらず、イアン・アンダーソンも高齢だし(1947年生まれらしいが、この年代のミュージシャンは多い)、ここ10数年のリリースは過去作品のデラックス・エディションの類ばかりだし、イアン・アンダーソンがソロ名義で名作『ジェラルドの汚れなき世界』の続編を2作発表したり来日公演を行ったりはしてたけど、もうジェスロ・タルは終わったのかと思っていた。が、2022年に18年振りとなるオリジナル・アルバム『ザ・ゼロット・ジーン』を発表して復活(実は知らなかったが、2014年にバンドの無期限停止が発表されたが、2017年に復活宣言してツアーも行ったらしい)、その翌年に本作『ロックフルーテ』に至る訳だ。イアン・アンダーソンにどういう心境の変化があったのか不明だが、精力的に活動してるのは嬉しい。

で、『ロックフルーテ』である。ジェスロ・タルのアルバムはイアン・アンダーソンのアイデアとコンセプトに基づいて制作されていて、本作も同様であり、これはデビュー以来変わりなし。その時点でのイアン・アンダーソンの興味や心境に左右されるのだろうけど、毎回ユニークなコンセプトが設定されていて、今回はというと、スカンジナビアの多神教信仰、という事になろうか。知らなかったけど、スコットランド生まれのアンダーソン姓の人たちのルーツはスカンジナビアにあるのだそうで、以前よりスカンジナビアの文化に興味を持っていたイアン・アンダーソンは、その多神教信仰の伝承などに登場する神々をテーマにした曲を用意して臨んだらしい。いわば、自分のルーツに向き合ったという事だろうか。CDのブックレットには、イアン・アンダーソンによる、ここいらの解説と丁寧な翻訳が掲載されていて、非常に興味深い。アルバム聴かなくても、解説読んでるだけでも面白いかも(笑)

話は逸れるが、僕は子供の頃、家にあった”少年少女世界の名作文学全集"に収録されていた『北欧神話』というのを読んだ事がある。この物語が、今回の『ロックフルーテ』のテーマであるスカンジナビアの伝承とかなりの部分で共通していて、オーディン、トール、ロキといった、『ロックフルーテ』の曲に登場する名前には記憶があった。スカンジナビアも11世紀くらいまでは、多神教信仰だったらしいが、結局一神教であるキリスト教に駆逐されたようだ。それまではスカンジナビアも平和だったのだろうな、とつい夢想してしまう(苦笑)

で、話を戻すと、『ロックフルーテ』には、スカンジナビアの多神教信仰の伝承にアイデアを得たイアン・アンダーソンのオリジナル曲が12曲収録されている。その12曲がどれも素晴らしい出来栄えで、ただ良い曲というだけではない、格調高く気品と文学性に溢れ、ながら聴きなんて許されないような、正座して襟を正して聴くべきでは、と決して強要する訳でないものの、静謐で敬虔な雰囲気に満ちていて、かといって堅苦しくもなく、クラシック風だったりスピリチュアル系みたいだったりといった、難解でも独りよがりでもマニアックでもなく、基本的にロック、それもジェスロ・タル独特のロック・サウンドが展開されている。ほとんどの曲でリードするのはフルートで、ハードなギターのバッキングにフルートのリフが乗るイントロ、間奏などで聴かれるフルートとギターのユニゾン、等々はジェスロ・タル以外の何者でもない。感触としては、70年代後半のトラッド3部作(『神秘の森』『逞しい馬』『ストームウォッチ』)の頃に近いかな。といっても同じではなく、あの当時の作品からプログレ風味を取り除いたような感じ。ところどころで聴かれるギターソロも素晴らしい。レコーディング・メンバーつまり現在のジェスロ・タルは、ブックレットの写真を見ると、失礼ながら高齢の人が多いようだが(笑)ギターの人だけ若いみたいで(と言ってもアラフォーかな?)、この人のプレイが実に素晴らしいのだ。やはり、イアン・アンダーソンだけでは名作は作れない、というのを実証している。ジェスロ・タルはチームなのだ。

という訳で、ジェスロ・タル久々の傑作である。これだけの作品がまだ作れるジェスロ・タルというかイアン・アンダーソンはとにかく凄い。ブックレットにの解説によると、当初、本作はフルート中心のインスト作として構想されていて、タイトルも『Rock Flute』だったそうだが、本作のテーマから”ラグナロク”という言葉が浮かび、運命を意味する”ロク(Rok=本来はウムラウト記号付き)”及び”Flote”に置き換えて『RokFlote』となったとのこと。またジャケットも”Rock”=岩のイメージでデザインしたらしい。そういった所にも遊び心が感じられるのもシェスロ・タルというかイアン・アンダーソンらしくていいな^^ 

蛇足だが、以前ブラックモアズ・ナイトのCDを聴いてたら、とてもフルートが印象的な曲があって、これイアン・アンダーソンみたいだなぁ、と思ったら本当にイアン・アンダーソンだったので驚いた、という経験がある。別に驚く事ではないのだが(笑)、それだけ彼のフルートは個性的なのである。そんなフルートも十分堪能できる『ロックフルーテ』、とにかく素晴らしいので是非(誰に言ってんだか。爆)

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