日々の覚書

MFCオーナーのブログ

オール・バイ・マイセルフ

2024年03月17日 15時03分56秒 | 時事・社会ネタ
ご存知の方も多いと思うが、あのエリック・カルメンが亡くなった。享年74歳。妻のエイミー・カルメンは、"Love is all that matters...faithful and forever"という一説を引用して、エリックが天に召された事を報告し、喪に服す間そっとしておいて欲しい、と声明を発表したそうな。謹んでご冥福をお祈り致します。

僕がエリック・カルメンを知ったのは、1976年のこと。ラズベリーズを解散したエリックがソロデビューした頃だ。当時、毎週聞いてたFM東京の『ポップス・ベスト10』にランクインしてきた「オール・バイ・マイセルフ」を聴いたのが最初だった。ほとんどの人がそうだろうけど^^; この曲に続く「恋にノータッチ」もヒットして、『ポップス・ベスト10』では1位になったと記憶している。この2曲のヒットで、エリック・カルメンの人気と評価は日本でも定着し、やや遅れて発表されたデビュー・アルバムも評判となった。邦題は『サンライズ』だったと記憶しているが、特にオープニングのプログレッシブなイントロダクションが話題となり、あの原田真二も、自身の1stアルバムを出す際、エリックの1stのオープニングみたいな事をやってみたかった、と影響を受けた事を当時のインタビューで語ってたのを覚えている。

エリックがウケたのは、やはり分かりやすいメロディのせいだろう。先のデビュー・アルバムにしても、「オール・バイ・マイセルフ」はピアノ・バラードだけど「恋にノータッチ」はキャッチーでポップだし、ロックンロール調の曲も収録されていて、バラエティに富んでいるし、またポップでノリが良くても、メロディになんとなく哀愁を感じさせたりなんかして、そこいらも日本でもウケた要因と思う。

個人的には、エリックというと、「オール・バイ・マイセルフ」より1977年の「愛をくれたあの娘」、1978年の「チェンジ・オブ・ハート」の方が好きで、特に「チェンジ・オブ・ハート」は我が人生でも10本指に数えられる名曲なのではないか、ってくらい好きでよく聴いた曲である。が、評判は良いものの、それらの名曲たちは「オール・バイ・マイセルフ」ほどヒットせず、その音楽性とは裏腹に、エリックはマニア受けするアーティストみたいな感じになっていった。

しばらくチャートでも名前を見る事のなかったエリックが復活したのが1987年。例の『ダーティ・ダンシング』収録の「ハングリー・アイズ」がビルボードのTOP10に入るヒットとなったのだ。但し、この曲エリックの自作ではない。いわば仕方なく歌ってみた、というのがヒットして、再び脚光を浴びる事になった訳で、エリック本人としてはめちゃ複雑だったであろう。けど、エリックが再評価されたのは喜ばしいことであり、それに乗っかって出たベスト盤を僕も買ったのである(笑)


当時の邦題は『ハンクリー・アイズ~メイク・ミー・ルーズ・コントロール/ベスト・オブ・エリック・カルメン』となってて、「ハングリー・アイズ」にあやかった物であるのは一目瞭然(笑) ま、僕自身も久々にエリックの名前を見て、久々の復活で再度エリックに興味を持ったりしてたもんで、このベスト盤は嬉しかった。「チェンジ・オブ・ハート」もちゃんと入ってたし(笑) 出来れば「噂の女」とか80年代のシングル曲も収録して欲しかったけどね。

ちなみにこのベスト盤、『MFCオーナーの私的歴代最高のアルバム500選』では344位である(だから?)

ところで、エリック・カルメンといえば、なんだかんだ言っても「オール・バイ・マイセルフ」なのだが、あんまり意識してなかったけど、実はこの曲結構カバーが多い。セリーヌ・ディオンあたりよく知られていると思うが、他にもフランク・シナトラ、シャーリー・バッシー、トム・ジョーンズといった大ベテランもカバーしてるのは意外だった。うん、確かにシャーリー・バッシーなんて似合いそうだ(笑) で、調べてみてさらに意外だったのは、なんとシェリル・クロウもカバーしていること。知らなかった。どうもデビュー直後のシングルのカップリング曲として世に出たらしいのだが、もちろん未聴である。多分、現在では入手困難だろう。シェリルはアルバム未収録音源もカバー曲も多いのは納得してたけど、「オール・バイ・マイセルフ」もやってるとはね。

脱線するが(笑)、「オール・バイ・マイセルフ」のカバーについては、僕はセリーヌ・ディオンが出してるのを知らなくて、もちろん聴いてもいない。最初に聴いたのは多分、2001年の映画『ブリジット・ジョーンズの日記』だったと思う。いや、この映画を見たのではなく^^;、当時、これのテレビCMで主人公がベッドに座って「オール・バイ・マイセルフ」を歌う(多分、レコードか何かに合わせて)シーンがあり、それが印象に残っていたのだが、あれは誰のバージョンだったのか、今さらながら気になって調べてみたら、サントラにはジェイミー・オニールという人のバージョンが収録されているらしい。ところが、さらに驚くべき事実に気づいてしまった。なんと、このサントラにもシェリル・クロウの曲が収録されていたのである(笑) 自作曲のようだが、オリジナル・アルバム未収録。もちろん聴いた事ない。「オール・バイ・マイセルフ」の事を調べたら、ミョーにシェリル・クロウの名前が出てくるあたり、何かの因縁か強い絆でもあるのか(笑)

ま、そんな訳で、それほど熱心に聴いてた訳ではないものの、やはりリアルタイムで知ってたミュージシャンが亡くなるとはショックというか、エリック・カルメンに関しては、あぁあなたもですか、という心境だ。避けては通れない事ではあるものの、残念でしかたない。

安らかにお眠り下さい。
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Smoky

2024年03月10日 22時42分32秒 | 音楽ネタ
唐突だが、海外だけでなく、日本にも素晴らしいミュージシャンは大勢いる。ギタリストで言うなら、ジャズ・フュージョン系の渡辺香津美、セッション・ミュージシャンとして名を馳せた松原正樹や今剛、といったところが、すぐ名前が挙がってくる人たちと思うが、ロック系で言えば、なんといってもチャーこと竹中尚人だろう。この人こそ、日本のロック・ギタリストではNo.1だと僕は思っている。

皆さんご存知の通り、チャーは1976年にソロ・ミュージシャンとしてデビューした。それ以前から天才少年と騒がれ、注目されていたそうで、正に満を持してデビューとなった訳だ。この当時、日本のロックは非常に刺激的ではあったと思うが、FMやテレビで紹介される事が少なく、実際の音に接する機会が少なかった。が、チャーはさすがにレコード会社の力の入れようも違ったとみえて、割とFMでかかってたので、「Smoky」「空模様のかげんが悪くなる前に」といった曲は知ってた。もしかすると、テレビでも見たかもしれない。この1stに関しては、今や代表曲と言ってもいい「Smoky」や「Shinin' You Shinin' Day」に顕著なように、ロックではあるが、いわゆるハード・ロックとは違う、ちょっと都会的な雰囲気も漂わせたロックといった感じ。当時は気づかなかったけど(笑) 

デビュー翌年の1977年(だと思う)、驚くべきことに、当時の文部省主催によるロック・コンサートが開催され、チャーも出演していた。確か、その頃の文部大臣がロック好きで、このコンサートの開催が決まったらしい。当時も今も、省庁主催でこういった大衆演芸的な演目の興行を行うなんて聞いたことないし(歌舞伎とかは別として)、大臣がロック好きだからといって、文部省主催のロック・コンサートを開催しなくても別に構わないのだが(笑)、とにかく、そういうイベントが開催されたのである。確か、ポップスの部とロックの部に分かれていて、出演者ではっきりと覚えてるのは、ポップスがハイ・ファイ・セット、大橋純子&美乃屋セントラル・ステイション、ロックの部がチャー、クリエイション、カルメン・マキ&OZ、といったところ。ハイ・ファイ・セットや大橋純子は当時売り出し中、ロック部門も某ML誌の人気投票の上位に並ぶ人気者ばかりで、正に旬な顔ぶれであったのだ。考えてみたら、よく集めたよな(笑) このコンサートはテレビでも放送され、僕もそこで動くチャーを初めて見た気がする。いや、チャーだけでなく、クリエイションもOZも初めてだった。実に貴重な体験だったのだ(笑)

そこで見たチャーは実にカッコ良かった。いや、他の人たちも皆良かったけどね(笑) チャーは、演奏を始める前に、ウォーミングアップ風にバンドで音を出しながら、例の、ジェフ・ベックが『ライブ・ワイヤー』でやってた、車のクラクションみたいな音をギターでマネする、というのをやってもんで、ちょっと笑えた(笑)

チャーを初めて生で見たのは、1996年11月15日場所は日本武道館、チャーのデビュー20周年記念コンサートである。友人に誘われて行ったのだが、これが実に素晴らしかった。「Smoky」をオープニングに、初期の曲を中心にした前半が特に盛り上がってたな。バックのメンバーも腕達者揃いで、グレード高い演奏が聴けた。ギターだけでなくボーカルもやってるのに、サポートのギタリストなしで最後までこなしたのも凄い。やぁほんと、凄い人である事を改めて実感した(遅いけど)。

実は、もう一回、生でチャーを見ている。2002年5月2日渋谷公会堂、四人囃子と再結成のスモーキー・メディスソとのジョイント・ライブだった。スモーキー・メディスソは、オリジナル・メンバーが全員揃わなかったので、メディスンじゃなくてメディスソになってた(笑) その時は、金子マリが中心のバンドだったこともあり、チャーは一歩引いた感じだったけど、でもさすがに的確なバッキングを披露していた。やはり凄い人だ。

チャーが凄いのは、そのプレイがいつも高水準である、というところだ。プロだから当然でしょ、なんて言われそうだが、色々聴いてると、どんなに上手い人でも、常に最高の演奏が出来る訳ではなく、日によってはブレイの出来に差があったりするのは仕方ないところで、ま、プロとはいえ人間がやる事でもあるし、それはそれである程度仕方ない、と僕は思っているが、チャーの場合は、プレイの水準が常に高い、つまり、いつ聴いても素晴らしいブレイをするのである。良いプレイをする確率が高い、と言ってもいいかも。ま、チャーのライブは全部追っかけてる、という人から見れば、出来の悪い時もしょっちゅうだよ、なんて言われるかもしれないが、それでも、この人は当たり外れがほとんどない、と思えるのだ。いつ聴いても凄いブレイをする。有名な人なんだけど、たまにテレビで見てたりすると、良い時もあれば悪い時もある、というのを何回か見てるが、チャーにはそれがない。加えて、どんな曲でも実に的確なブレイをする。随分前だけど、テレビ番組でKinki Kidsと共演してて、「硝子の少年」を演奏したのだが、原曲にはないギターソロをチャーが弾いていたのが、これがまた素晴らしいプレイだったのである。やっばり凄い人だな、と思ったね(何度目だよ)

という訳で、なぜか近頃チャー関連を買って聴いてたりするのである。



チャーはデビュー後、一時期歌謡曲路線に走ったが(この頃が実は一番有名かも。笑)、それを脱すると、ルイズ・ルイス加部(Bs)とジョニー吉長(Ds)と組んでロックトリオ、ジョニー、ルイス&チャーを結成した。確か、結成は1978年のことで、歌謡路線のすぐ後だ(笑) 何年かしてからピンク・クラウドと改名し、1993年まで活動した。そのピンク・クラウドの1990年発表の通算13枚目のアルバムが、この『Index』である。

ピンク・クラウドの他のアルバムは未聴だが、本作はシンプルなリフと構成によるオーソドックスなハード・ロック・アルバムだ。なんで本作だけ聴いてるのかというと、当時たまたま買ったチャーの江戸屋レコードでのベスト盤に、本作収録の「Drive Me Nuts」が収録されていて、その曲に大変な衝撃を受けたからだ。チャーはギタリスト、ボーカリストとしてだけではなく、ソングライターとしても有能な人であるが、正直言ってしまうと、リフやコードはカッコいいけど、それほどキャッチーな売れ筋メロディを書く人ではない。聴いた事あるようなのもあるし(笑) このベスト盤(『Days Went By 1988-1993』)の収録曲もそういうタイプの曲が多く、万人にウケるタイプではないと思うのだが、この「Drive Me Nuts」は、そこを突き抜けていた。で、その「Drive Me Nuts」が入ってるアルバムを聴いてみたくなり『Index』をレンタルしてきたという訳なんである。

ま、とにかく、傑作と呼ぶべきアルバムだ。前述した通り、キャッチーでシンプルなリフが印象的な、いわゆる硬派なロック曲が大半を占めているが、アコギをフューチーャーしたインストやブルース・マナーの曲もあり、ほんと、オーソドックスなロックを堪能出来るアルバムだ。で、その頂点に燦然とそびえ立つのが「Drive Me Nuts」なのである。いや、ほんと、初めて聴いてから30年近くが経過しているが、今だにこの曲を聴くと鳥肌が立つ。そのカッコ良さには当時も今も言葉がない。

ピンク・クラウドのメンバーのうち、チャー以外は鬼籍に入っている。時の流れは非常だが、本作の価値が色褪せる事はない。

続いては



ピンク・クラウド解散後にチャーが結成したサイケデリックスの2作目。1994年発表。当時、本作の「Rowdy Boys」がシェーバーだかシェービング・クリームだかのCMで流れていて、興味を持ってレンタルで聴いてみた。余談だが、チャーというかサイケデリックスは意外とCMで流れていて、前作の曲も、とあるCMで流れていた。面接を受けに来た女性が、面接官に「自分がキレイだと思ってるんでしょ」とか言われて、「思ってます。私、脱いでも凄いんです」って言うCMだ。覚えてる人もおられるのでは(笑)

ま、そのCM曲につられて聴いてみた訳だが、このアルバム、実に素晴らしい。名盤である。基本的には、ピンク・クラウドと同じ、オーソドックスなスタイルのロックであるが、ピンク・クラウドより曲調の幅が広がり、バラエティに富んだ印象(あくまでもロックというフォーマットの中で、という事だけど^^;)。得意のセブンス・コードを交えてジミヘン風に迫る、その名も「Hey Jimi」、泣きのメロディとギターの「Cry Like A Baby」「Lady (Don't Fade Away)」、ストレートに迫る「In Your Eyes」といった曲たちに混じって、ラストを飾る「Missing You」がこれまた名曲なのである。メロディ展開といい感動的なエンディングといい、とにかく素晴らしい。チャーにとっても会心の一曲だったのではなかろうか。

本作の収録曲は、今までのチャーの作風と同じ、カッコいいリフを元に構成されている曲が多いが、今までと違うのは、案外キャッチーなメロディを持つ曲が多いこと。CMの「Rowdy Boys」にせよ「Come And Go」にせよ「Livin' In Tokyo」にせよラストの「Missing You」にせよ、歌メロが分かりやすくてキャッチーである。そこいらが本作を名盤たらしめているのだ。

ほんと、チャーって、ロックの人なんだな、と『Index』と『Psychedlix Ⅱ』の2枚を続けて聴いてみて、改めて思う。他のスタイルも十分こなせるのに、ひたすらロック一筋というのが、実にカッコいい。

ところで、サイケデリックスといえば、こんなのもあった。


1996年に出た、サイケデリックス名義の5曲入りミニ・アルバム。タイトルは『Smoky』。1996年と言えば、前述の通り、チャーは武道館で20周年記念コンサートを行ったのだが、その時のドラマー、ジム・コプリーとのレコーディングで、この時点でのサイケデリックスのメンバーはチャーとジム・コプリーの2人になっている。ギター、ボーカルはもちろん、キーボードやベースも、ほとんどチャーが演奏しているが、気のせいか、ミックスもボーカル・ギター・ドラムがやたら目立つ。ちなみに、前述の『Psychedelix Ⅱ』のドラムも、ジム・コプリーだ。この人、ポール・ロジャースと一緒にやってた事もある。確かに、いいドラマーだ。

この『Smoky』というミニ・アルバム、タイトルはもちろん、あの曲だ。その「Smoky」のリメイク以外は、チャーとジム・コプリーによる新曲。例によって、カッコいいけど、なんか聴いた事ある感じの曲(笑) でも良い。相変わらずオーソドックスなロック。相変わらず英語だし。やはりブレる事はない。

最後に。

友人に音楽業界に身を置いてる人がいて、彼はイベントの手伝いというか裏方というか、そういう仕事もよくやってたらしい。で、ある時、チャーが出演するイベントの仕事をしたそうな。で、無事、イベントも終わり、打ち上げの会場で彼ら裏方さんたちは、皆さんが集まるのを待っていた。とそこへチャーが現れ、「みんなお疲れさん。飲んでよ」とビール瓶の栓を抜き始めたので、慌てて「まだ誰も来てませんから」と言ったら、チャーが「何言ってんだ、今日のイベントが成功したのは、裏方をやってくれたお前らのおかげなんだ。だから、お前らが最初に飲む権利があるんだよ」と言ってくれたらしい。感激した、とその友人は言ってた。このエピソードでも窺えるが、チャーという人は本当に侠気のあるロッカーなのだ。正にナイス・ガイである。
コメント (2)
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