僕の小学3年の姪っ子が、怖い映画を見たい(または怖い本を読みたい)と言っていた。なんとなく分かる気がする。僕も、その年頃の時は怖い本を読んでみたくて仕方なかった。何故なのか、理由はよく分からないのだけど。
で、姪っ子が「リングって怖いの?」と聞くので、「怖いよ、小説の方は」と僕は答えた。そしたら、姪っ子は映画に興味があったらしい。映画は怖くないのか、と言うので、別に怖くない、というかつまらない、とさらに僕は答えた。興味を持ってるのに悪いけど、つまらないものはつまらない。映画見るなら、小説を読んだ方がいい。だから、正直に姪っ子にも言ったのである。
実際、映画版「リング」はつまらなかった。「リング2」はそれに輪をかけてひどい映画だった。「リング」を見たスティーブン・スピルバーグが、翻訳権を買い取ってハリウッドでリメイクしたのは有名な話だが、何故こんなもの見てリメイクしようと思ったのか不思議である。素材は良いのだから、ハリウッドならもっと凄い物が作れる、とでも考えたか。ちなみにハリウッド版「リング」は見ていないので、面白いかどうか分からない。
このつまらない映画の原作である小説「リング」は面白い。というか、初めて読んだ時は衝撃的ですらあった。何だか分からないけど、とにかく怖い。深夜に読み終えた後、トイレへ行けなかったくらい怖い小説だった。内容については否定的な意見もかなりあり、ビデオを見たら一週間後に死ぬ、なんてあまりにも非科学的過ぎる、というのが主な批判であったような。分かってないなぁ。あまりにも非科学的で、説明がつかないから怖いんじゃないの。この小説「リング」の凄さは、その訳分からない恐怖にある。今までの怪奇小説やホラー小説にはない、新しいタイプの恐怖だったと思う。幽霊が出るとか、悪魔が乗り移るとか、暗闇の中を殺人鬼が追ってくるとか、そういう対象のはっきりした恐怖でない所が凄いのだ。小説「リング」の中で一番怖いのはなんだろう。ヒデオテープか。貞子か。迫り来る死の恐怖か。それらの恐怖が渾然一体となって、さらなる恐怖を増殖させる。だから「リング」は怖いのだ。鈴木光司はとんでもない小説を書いたものだと思う。
所が、映画化された「リング」は、こういった混沌とした恐怖をすっきりと整理し、その対象を貞子のみに絞ってしまった。一作目はまだしも「リング2」は完全に貞子の映画である。ま、そういう怖いキャラクターを創造し、貞子=怖い、というイメージを一般に浸透させてしまったのは、ある意味大したものだが(世の中の貞子さんは、一気に肩身の狭い立場になってしまった。ご同情申し上げる)、だいたい小説に於ける貞子は、あんな化け物ではなかった。それどころか、絶世の美女として描かれていたのだ。続編の「らせん」でも同様。自らの怨念をビデオテープに念写するほどの類い希な超能力者である貞子は、怨念の塊となって甦ると、その美貌で男たちを惑わし、着々と異形の世界を作っていく(ここいらは「らせん」の話なんだけどね)。そんな貞子が、映画では長い髪で顔を隠して井戸から這い出してくる、ただの化け物になってしまった。映画版「リング」の怖さは、振り返ると貞子がいる、といった部分に集約されてしまっている。暗い所で、いきなりあんなのが出てくれば、誰だってびっくりするよ。そう、お化け屋敷と一緒。得体の知れない恐怖ではなく、暗闇で「わっ!」と脅かすあの感覚。こういうのを子供騙しというのだ。
もちろん、ここまでは姪っ子には説明してない(笑) そりゃそうでしょ、訳分からないもんね。
付け加えておきたいのだが、小説「リング」が文庫本になってからじわじわと売れる、という異例のベストセラーとなり、世間でも話題になり始めた頃、テレビの2時間ドラマになった事がある。これは面白かった。映画と違い、小説を見事なまでに映像化し、しかも例のビデオテープや貞子をはっきりとした形にして見せた事で、小説とは違った楽しみ方が出来る作品になっていた。ほんと、あのビデオテープの映像は見事だった。小説だとそれぞれの頭の中にイメージとして残るだけだが、正にそのイメージ通りであり、また曖昧だった部分が鮮明な映像になることで、不気味さが倍増する。早い話が、イメージと違うなぁ、ってのが全くなかったのだ。これは凄い事ではなかろうか。そして貞子。美しいが不幸な生い立ちと持って生まれた特殊な能力と身体のせいで、安住の地を見つけられない薄幸の女性。演じたのは三浦綺音という人で、最近見ないけど、顔に似合わない大胆な演技で当時話題になっていた女優だ。これがはまり役だった。美しく儚くだけど尋常でない物を感じさせる女性。正に貞子そのものだ。主役の高橋克典や原田芳雄も好演だったし、単に2時間ドラマと片付けてしまうには、あまりにも勿体ない、素晴らしい作品だった。もし、これがDVDで出ているなら、映画版より、こちらを見る事を強くお薦めする。
実は「リング」ネタ、というか「リング」から派生したネタはまだあるのだが、一旦ここで終わりにする。続きは明日(?)
で、姪っ子が「リングって怖いの?」と聞くので、「怖いよ、小説の方は」と僕は答えた。そしたら、姪っ子は映画に興味があったらしい。映画は怖くないのか、と言うので、別に怖くない、というかつまらない、とさらに僕は答えた。興味を持ってるのに悪いけど、つまらないものはつまらない。映画見るなら、小説を読んだ方がいい。だから、正直に姪っ子にも言ったのである。
実際、映画版「リング」はつまらなかった。「リング2」はそれに輪をかけてひどい映画だった。「リング」を見たスティーブン・スピルバーグが、翻訳権を買い取ってハリウッドでリメイクしたのは有名な話だが、何故こんなもの見てリメイクしようと思ったのか不思議である。素材は良いのだから、ハリウッドならもっと凄い物が作れる、とでも考えたか。ちなみにハリウッド版「リング」は見ていないので、面白いかどうか分からない。
このつまらない映画の原作である小説「リング」は面白い。というか、初めて読んだ時は衝撃的ですらあった。何だか分からないけど、とにかく怖い。深夜に読み終えた後、トイレへ行けなかったくらい怖い小説だった。内容については否定的な意見もかなりあり、ビデオを見たら一週間後に死ぬ、なんてあまりにも非科学的過ぎる、というのが主な批判であったような。分かってないなぁ。あまりにも非科学的で、説明がつかないから怖いんじゃないの。この小説「リング」の凄さは、その訳分からない恐怖にある。今までの怪奇小説やホラー小説にはない、新しいタイプの恐怖だったと思う。幽霊が出るとか、悪魔が乗り移るとか、暗闇の中を殺人鬼が追ってくるとか、そういう対象のはっきりした恐怖でない所が凄いのだ。小説「リング」の中で一番怖いのはなんだろう。ヒデオテープか。貞子か。迫り来る死の恐怖か。それらの恐怖が渾然一体となって、さらなる恐怖を増殖させる。だから「リング」は怖いのだ。鈴木光司はとんでもない小説を書いたものだと思う。
所が、映画化された「リング」は、こういった混沌とした恐怖をすっきりと整理し、その対象を貞子のみに絞ってしまった。一作目はまだしも「リング2」は完全に貞子の映画である。ま、そういう怖いキャラクターを創造し、貞子=怖い、というイメージを一般に浸透させてしまったのは、ある意味大したものだが(世の中の貞子さんは、一気に肩身の狭い立場になってしまった。ご同情申し上げる)、だいたい小説に於ける貞子は、あんな化け物ではなかった。それどころか、絶世の美女として描かれていたのだ。続編の「らせん」でも同様。自らの怨念をビデオテープに念写するほどの類い希な超能力者である貞子は、怨念の塊となって甦ると、その美貌で男たちを惑わし、着々と異形の世界を作っていく(ここいらは「らせん」の話なんだけどね)。そんな貞子が、映画では長い髪で顔を隠して井戸から這い出してくる、ただの化け物になってしまった。映画版「リング」の怖さは、振り返ると貞子がいる、といった部分に集約されてしまっている。暗い所で、いきなりあんなのが出てくれば、誰だってびっくりするよ。そう、お化け屋敷と一緒。得体の知れない恐怖ではなく、暗闇で「わっ!」と脅かすあの感覚。こういうのを子供騙しというのだ。
もちろん、ここまでは姪っ子には説明してない(笑) そりゃそうでしょ、訳分からないもんね。
付け加えておきたいのだが、小説「リング」が文庫本になってからじわじわと売れる、という異例のベストセラーとなり、世間でも話題になり始めた頃、テレビの2時間ドラマになった事がある。これは面白かった。映画と違い、小説を見事なまでに映像化し、しかも例のビデオテープや貞子をはっきりとした形にして見せた事で、小説とは違った楽しみ方が出来る作品になっていた。ほんと、あのビデオテープの映像は見事だった。小説だとそれぞれの頭の中にイメージとして残るだけだが、正にそのイメージ通りであり、また曖昧だった部分が鮮明な映像になることで、不気味さが倍増する。早い話が、イメージと違うなぁ、ってのが全くなかったのだ。これは凄い事ではなかろうか。そして貞子。美しいが不幸な生い立ちと持って生まれた特殊な能力と身体のせいで、安住の地を見つけられない薄幸の女性。演じたのは三浦綺音という人で、最近見ないけど、顔に似合わない大胆な演技で当時話題になっていた女優だ。これがはまり役だった。美しく儚くだけど尋常でない物を感じさせる女性。正に貞子そのものだ。主役の高橋克典や原田芳雄も好演だったし、単に2時間ドラマと片付けてしまうには、あまりにも勿体ない、素晴らしい作品だった。もし、これがDVDで出ているなら、映画版より、こちらを見る事を強くお薦めする。
実は「リング」ネタ、というか「リング」から派生したネタはまだあるのだが、一旦ここで終わりにする。続きは明日(?)