いよいよ来週の火曜日に迫ってきたが、ジャクソン・ブラウンとシェリル・クロウのジョイント・コンサートを見に行く。当然お目当てはシェリル・クロウで(笑)、彼女のコンサートはこれで5回目になる。前回見た時から一年3ヶ月ほどしか経ってないし、その間に新作が出た訳でもないので、もしかすると、セットリストにも大きな変化はないのかもしれないが、でも楽しみである。
今回、シェリルは日本のみで実現したという、ジャクソン・ブラウンとのジョイントの為に来日して、東京の他大阪や名古屋、神戸、広島でコンサートを行なう訳だが、金沢公演だけは単独らしい。ちと羨ましかったりして(笑)
そんな訳で、来週ジャクソン・ブラウンも見るのである。もちろん、初めて。つーか、僕はこの人の事をあまりよく知らない。そりゃもちろん、有名な人だし名前くらいは知ってますよ。けど、アルバムも一枚しか聴いてないし、曲だってわずかしか知らない。さすがに「孤独のランナー」は知ってるけど^^; ま、知らないとはいえ、80年代前半にヒットした「誰かが彼女を見つめてる」や「愛の使者」といった曲は、結構好きだ。クラレンス・クレモンスと共演した「フレンド・オブ・マイン」も好きだな。けど、これはジャクソン・ブラウンのキャラとは、少し違うような気はする(笑)
我々の世代(と強引に決めつける)にとっては、ジャクソン・ブラウンはソロ・アーティストというより、イーグルスとの関連で知られている。有名な「テイク・イット・イージー」は、グレン・フライとジャクソン・ブラウンの共作であるし、他に「ナイチンゲールの歌」を取り上げたり、「ジェームス・ディーン」を共作したりなど、イーグルスとジャクソン・ブラウンは付き合いが深いのだ。J・D・サウザーには負けるけど(なんのこっちゃ)。
ただ、ソロ・アーティストとしてのジャクソン・ブラウンは、日本ではイーグルスほどの知名度もヒット曲もなく、通好みのアーティストという印象があった。昔、某ML誌に毎号“輸入盤チャート”というのがあって、東京と大阪それぞれで売れた輸入盤を1位から5位まで掲載していたのだが、ある時期ずっと『プリテンダー』がランクインしていたのを覚えている。70年代半ばといえば、輸入盤なんてどこでも売ってる訳ではなく、都心の専門店に行かないと買えなかった訳で、しかも当時は、よほど人気のある人でなければ、本国で発売されてから2~3ヶ月経たないと日本盤は発売されなかった訳で、へたすりゃ日本盤出ない人もいた訳で、そういう日本盤が出るまで待てない人、或いは日本盤が出ないアーティストのレコードを、わざわざ輸入盤専門店に行って買う人、というのは、間違いなく“通”だったのである。そんな“通”に、ジャクソン・ブラウンは聴かれていたのだ。
先ほど、ジャクソン・ブラウンのアルバムは一枚しか聴いてない、と書いたが、その一枚というのが、1980年の『ホールド・アウト』である。このアルバム、なんと全米No.1になり、日本でも話題になった。同じクラスのロック好きの間でも大評判で、「ジャクソン・ブラウンのLP欲しいよぉ~」てな会話が、休み時間に飛び交っていた。僕もFMで何度か聴いたが、シングルの「ブールバード」とか、カッコいいなぁ、と思っていた。
そんな中、とある番組で、このアルバムのラストに収録されている「ホールド・オン・ホールド・アウト」をノーカットでかけたのである(ご承知の通り、8分強の大曲である)。その時のDJ(女性だった)は、かける前にこの「ホールド・オン・ホールド・アウト」について、あれこれ喋っていて、曰く、ジャクソン・ブラウンは妻を自殺で失っており、アルバム『プリテンダー』は、その直後、絶望的な悲しみの中で作られたのだが、時は過ぎ、彼は別の女性と再婚した。この「ホールド・オン・ホールド・アウト」は、その妻に対する想いを歌った曲であり、彼が初めて歌詞に「アイ・ラブ・ユー」という言葉を使った曲でもあり、愛と希望に満ちたジャクソン・ブラウンの感動的な名曲なのである。この曲は、彼にとって一生歌い続けるマスターピースとなるであろう、と彼女は熱弁をふるっていた。へぇ~、なんて思いつつ、その後にかかった「ホールド・オン・ホールド・アウト」に、あっけなく僕もノックアウトされ、ジャクソン・ブラウンっていいかも、なんて思ったのである(笑)
ま、その時すぐに『ホールド・アウト』を買っていれば、今頃はもしかすると、僕もジャクソン・ブラウンのファンになっていたのかもしれないが、なにしろ金のない高校生である(笑) 手を出せるはずもなく時は流れ、ようやく廉価の輸入盤で手に入れた時には、既に6年が経過していた。で、6年ぶりに聴いてみた『ホールド・アウト』、実は今イチだったのである(笑)。いや、決して悪くはないが、6年前に夜中のFM放送で聴いた時と同じ感動がなかったのだ。悲しいかな、6年の間に、僕の感性はすっかり鈍っていたらしい(苦笑)
そんな『ホールド・アウト』、来日公演を控えた今、実に久しぶりに聴いてみる。30年前の高校生が熱中していたのが不思議なくらい、派手な所のない、シブいアルバムという感じがした。「愛の使者」なんかのほうが、ずっとポップではないか。けど、ジワッとくるものがある。タイトル曲をはじめ、どの曲も聴けば聴くほど味わい深い。「ホールド・オン・ホールド・アウト」は、佐野元春に似た曲があったような。
ジャクソン・ブラウンって、そういう人なんだな、と今さらながらに思う。派手にかましてくるタイプではない。聴くほどに虜になるタイプだ。彼が、今も息の長い活動を続け、熱心なファンに支持されているのも、きっと一度虜になったら離れられない魅力があるからに違いない。“通”好み、という印象もそこから来ているのだろう。ただ、そういうタイプは、確かに日本では今イチ人気が出ない(苦笑)
という訳で、来週はジャクソン・ブラウン&シェリル・クロウのジョイント・コンサートなのである。もちろん、先に出るのはシェリルだろう。ジャクソン・ブラウンは、どんなステージを見せるのか。出来たら、30年前の、あの感動を再び味わいたい(笑) 「ホールド・オン・ホールド・アウト」やるかなぁ。「孤独なランナー」はきっとアンコールだと思うけど、どうでしょ?(笑)