先日、サブタイトルが「仰天超絶インパクト人間&世界天才キッズSP!!」という、とあるテレビ番組を見た。ま、だいたい内容は想像できますね(笑)
なんとなく見始めて、結局最後まで見てしまったのは、「世界の天才キッズ」と称して、子供のミュージシャンたちが出てきたからだ。11歳の時アメリカの素人オーディション番組で優勝し、“奇跡の声”を持つと言われる現在14歳の少女、2歳でギターを弾き始め、ギブソンと史上最年少で契約した8歳の少年、プロミュージシャンの息子で、弱冠9歳ながら父親のバンドでプロとして演奏するベーシストの少年、そして日本からは11歳の天才ドラマー、となかなか興味をそそられる子供たちが登場し、一人一人腕前を披露した後、番組の最後で一緒に演奏する、というので、つい見続けてしまったという訳(笑) おかげで、ゴールデンタイムの2時間、ずっとテレビの前に座ることになってしまった。2時間である。返してくれ(爆)
この子供たち、VTRで紹介する時から、すごいすごいと連呼してたもんで、一体どんなに凄いのか、と思って見てた訳だが、年齢や経験年数を考えると、確かに凄いお子達だ。皆上手い。けど、子供にしては上手い、というレベルで、子供だからという色眼鏡で見なければ、それほど凄い訳でもない。キブソンと契約してる少年のプレイを聴いて、これくらいならオレでも弾ける、と胸をなでおろした中年ギタリストも大勢いたはずだ(笑) もちろん、子供なのにこれだけ弾ける、という事は、逆に考えれば大人になったら、もっと上手くなるという事で、これこそ発展途上。8歳のギタリストに関しては、ギブソンはその将来性を買って契約したのだろう。発育途上なのに、大人と同じサイズの楽器を弾いている、というマイナス点も考慮すると、やはり凄い子達だ、と思わざるを得ない。
ま、そのスーパーキッズたちによる、即席バンドだが、これは演出があざとかったように思う。単に、スタジオで「では、よろしくお願いします」で演奏させればいいのに、彼らが初めて顔を合わせてから本番に至るまでを、VTRで見せたりする。スタジオで1曲(2曲)演奏させる為に、6日前に集合させ、リハーサルをさせていたらしいが、子供とはいえプロなんである。6日もリハの時間を取るなんて、失礼というものだろう。本番前日、或いは当日本番前に2時間、で十分ではなかったか。彼らの凄さを強調するのなら、その方が効果的だ。要するに、涙と感動のキッズバンド、という安直なドラマを作ろうとしてるだけなんである。相手が子供だと思って舐めてるよね(笑)
なぜか、このスーパーキッズバンドのプロデューサーとして、つんくが登場したのも解せない。つーか、一体彼は何の為に呼ばれたのだ? 一応、選曲とアレンジをしたらしいが、VTRを見てる限り、彼はリハにはほとんど顔を出していない。前日にようやく顔を見せた程度。つんくがいない間は、代理が指導してたようで、子供らからすれば、代理の方がよっぽど先生ではないか。直前に来て、偉そうな顔されても困るよなぁ。
しかも、前日になって、予定してたキーボードの少年が来日出来なくなったので、急遽大阪の天才少年ピアニストを呼ぶ、という設定もわざとらしい。どうして、近頃のテレビ局の連中は、全く関係ないサイドストーリーを本編に付加したがるのか。そういうエピソードがあれば、感動も大きいとでも思ってるのかね。
と、あれこれあって(笑)、本番で、子供たちはレイ・チャールズの(つーか、サザンの)「いとしのエリー」とジャクソン5の「I Want You Back」を演奏し、スタジオの大人たちからやんやの喝采を浴びた。確かに、落ち着いた演奏ぶりだったけど、6日もリハしてますから(笑) 相手が子供だから、というだけで必要以上に持ち上げようとするのが、却ってイヤな感じだった。ほんと、子供たち、食い物にされてます(笑)
ま、本番終えた後の、8歳ギタリストの一言、「子供だけでバンドやるのが夢だったので、とても嬉しい」というのが、とにかく印象的だったな。天才ともてはやされ、大人たちとばかり演奏している彼らも、やはり同年代と一緒にやりたいのだろう。意外と、大人に混じって演奏するのは、窮屈に感じているのかもしれない。さりげない一言だけど、実に深い一言でもあった(笑)
と、結局は大人のいい慰み物になってしまった、スーパーキッズバンドな訳だが、やはり子供とバンドをネタにした、もっとひどい番組を見てしまったことがある。
その番組は、スーパーキッズではない、フツーの子供たちが出演する番組だった。なんというか、自分が存在する意義は何なのか、とか、どうしようもなくイヤな自分を変えてしまいたい、とかで悩んでいる子供を連れてきて、様々なことに挑戦させて、生きる価値を見出してやろう、という誠におせっかいな番組である。つーか、10歳かそこいらの子供が、こういう心境に陥っていることだけでも、現代の学校教育が間違っている事の証明であると、僕は思うのだが、どうなんでしょう?(笑)
その番組では、5人の女の子が集められ、進行役のタレントに「何をやりたいか、ここで決めなさい」と迫る。で、5人のうち一人が「バンドやってみたい」と言い出すと、タレント(ちなみに千秋である。コイツ嫌いだ)が、「ではバンドでいいですね」と強引に決めてしまう。かくして、ハーモニカやリコーダーくらいしか触ったことのない女の子たちが、勝手にパートを決められ、生まれて初めてギターやらドラムやらを手にする。それから、10日程練習させて、人前で演奏させる、というのであるから、もう無茶苦茶だ。僕の目には、拷問としか見えなかった(爆)
サンプラザ中野がスーパーバイザーとして登場し、楽器の弾き方を教え、彼が作った曲を課題曲として練習させる。各楽器には中野以外にも先生が付き、マンツーマンで指導する。さすが、若いだけあって、少女たちは徐々に楽器を覚え、簡単な事なら出来るようになっていく。この辺の進歩の速さは、確かに凄い。ヤラセでなければ、だが(笑)
しかし、ある程度まで来ると、急に中野は無理難題を言い始める。初めて楽器に触れ、少しづつ演奏する楽しみを感じ始めた少女たちに、挫折を味あわせようとしてるのだ(と、僕には映った)。そして、彼女らが投げ出してしまうように仕向けていく。でもってお約束、「やる気がないヤツは出て行け」の一言。本当に、スタジオを飛び出してしまう少女もいた。
さらに、そんな少女に千秋が追い討ちをかける。「ここで諦めるなんていくじなし」「自分でバンドやりたいと言っといて、投げ出そうってつもりなの」「自分を変えたいと言ってたのは嘘だったの」「カッコばかりつけて、結局自分では何も出来ないなんてサイテー」 これだけ言われて打ちのめされない子供がいたら、お目にかかりたい。ここで、僕は耐え切れなくなり、テレビを消してしまった。
ま、サンプラザ中野も千秋も、演出の一部として、ああいう発言をしている訳で、本気で言ってるのではないと思いたいが、それにしても、あまりにあざとい。自分が何をやりたいのか分かってない少女に、勝手に楽器を押し付け、挫折してまた戻ってきて、血の滲むような特訓に耐え、そして本番を迎えて、涙の大団円、という感動ドラマ(ヘドが出る)を演出したいがために、いたいけな少女たちをいたぶっている訳だ。こんなものを見て感動している人間とは、付き合いたくない。
最後まで見ていなかったので、何とも言えないが、おそらくスタジオを飛び出した少女も、心を入れ換えてスタジオに戻り、皆と練習して、本番ではちゃんと演奏したのだろう。で、上手く出来た事に喜び、皆と抱き合って涙を流す、そして「つらくてもやり抜くこと、仲間と一丸になって目標に向かって頑張ること、彼女たちはバンドを通して、かけがえのない大事なものを学びました。きっと、彼女たちは、これからの人生で出会うどんな障害にも、諦めず立ち向かっていくことでしょう」なんてアナウンスが流れ、大人たちは目頭を押さえる、という結末になったに違いない。なんとおぞましい。あー、見ないでよかった(爆)
僕は断言するが、ここで生まれて初めてバンドを経験した少女たちのうち、誰一人として、今は楽器すら触ってないと思う。初めてなのに、あんな経験をすれば、収録終わったらバンドなんてこりごり、と感じるに違いないからだ。画面を見ていても、彼女らが楽しそうにしてたのは、最初だけで、あとは苦痛にしか見えなかった。確かに、練習しなければ楽器なんて弾けるようにならないけど、単に収録が終わるまでというノルマを果たす為に練習していても、楽しくないし上達もしない。上手くなりたい、という気持ちがなければダメなのだ。そして、上手くなると、もっと楽しいという事が分からなければ。テレビの収録とはいえ、せっかく楽器に触れた彼女たちが、その楽しみを放棄してしまうような方向に持っていった大人たちの罪はデカい。しかも、ちょこっとだけ達成感らしきものを味あわせただけで。
この少女たち、今どうしてるんだろう? 追跡調査してみたいな(笑)
と、つまらぬ感動を大人が味わいたいが為に、あれこれいじられる子供たちって、本当に不憫だと思う。大人のためにではなく、子供たち自身の楽しみのために、色々な事を教えてあげるのが、大人の役割のはずなんだが。
結局、今の大人って、子供を可愛がるのも自分が楽しいから、だけなのかもしれない。子供にとっては、不幸な時代である(笑)