ここ一週間ほどで、随分秋らしくなってきた。とはいえ、日中はまだまだ暑いし、地域によっては最高気温30度超えだったりするし、ほんと、一体いつになったら涼しくなるのだろう、って感じだけど、それでも、朝晩は確実に涼しくなってるし、夜になると虫も鳴き始めた。夏前の長期予報では、9月いっぱい猛暑が続く、なんて言ってたけど、秋はもうすぐそこまで来ている。
秋といえば、食欲の秋だったり(猛暑のせいで、秋刀魚が高騰してるようだが)、スポーツの秋だったり(富士山の弾丸登山は危険なのでやめましょう)、芸術の秋だったり(最近気づいたのだが、ボブ・ディランの『セルフ・ポートレイト』のジャケット、なかなか良い絵だねぇ)、と人それぞれなんだけど、やはり音楽好きとしては、秋の夜長はじっくりと音楽を聴きたい。プログレでも何でもいいけど(笑) という訳で去る9月22日、久々、ほぼ10年ぶりくらいに、南佳孝のライブを見に行ってきた(相変わらず強引な展開)。
場所は六本木の東京ミッドタウン内にあるビルボードライブ東京。国内外を問わず、ベテランを中心とした有名ミュージシャンがライブを行う大人の空間として、すっかり有名になったが、ライブは一晩に2回、完全入れ換え制という事で、一回あたりの時間も非常に短く、一部のファンには不評なライブスポットでもある(笑) ちなみに、我々はこの日車で六本木まで行って、ミッドタウンの駐車場に入れたのだが、嫌味なほど高級車ばかり停めてあった(爆)
知ってる人は知ってるけど、南佳孝のデビューは1973年、つまり今年はデビュー40周年という記念の年なのである。去年あたりから、自身の40周年関連イベントを、あちこちで行ってきたが、今回の大阪・名古屋・東京の各地のビルボードライブでのコンサートが、一応40th Annoversaryの集大成となるらしい。名古屋はブルーノートだけどね。
という訳で(しつこい)、南佳孝を見てきた。ビルボードライブ東京のカジュアルエリアである。実は、ここのシステムをよく分かってなくて(笑)、客席はサービスエリアとカジュアルエリアに分かれていて、カジュアルエリアの方が安い。で、その違いはステージに近いか遠いかだけだろう、と思っていたら、とんでもない間違いだった。サービスエリアでは、レストラン並にメニューを見ながら料理を注文出来るのだが、カジュアルエリアでは、料理は軽食系が4種類ほどしかなく、ドリンクもチケット代に一杯分は含まれているが、もっと飲みたければ自販機で食券を買って、カウンターで受け取るのである。知らなかった。フードもサービスエリアより安価だし、必ず一品はオーダーしたないといけない、というルールもなく、まぁ安く上がると言えば上がるのだが、たまに来たのだから、たとえ一品でも料理もオーダーして、リッチな気分も味わいたいところ。僕はともかく、妻は少しがっかりしてたみたい。
そのカジュアルエリアの我々の席は、ステージが1階とするなら、3階席の最前列といった所で、ステージ正面を見下ろす感じがなかなかよろしい。↑の写真は、開演前に席から撮ったものだが、窓の向こうに庭園も見えて、良い眺めだった。開演するとカーテン閉めて外は見えなくなるんだけどね。
と、そんなカジュアルエリアでノンアルコールビールを飲みながら待っていると、やがて開演時刻となり、場内暗転してまずバンドのメンバーがステージに登場し、ほどなく南佳孝本人が暖かい拍手に迎えられて登場。髪を切ったのか、少し痩せたのか、ジャケ写等で見ていたのより若々しい印象。ステージに上がるとギターを抱え、ライブスタート。なんか、チューニングを気にしてた(笑)
Desert Storm
遙かなディスタンス
40周年記念ライブのオープニングは、ちと意外な曲。一瞬知らない曲と思った^^; 1992年の『New Standard』という、割に地味なアルバムの曲なんだけど、今までもライブでやってたんだろうか。ちなみに、この曲、反戦争というか反アメリカというか、そんな内容の歌詞で、今このタイミングでステージで披露したという事は、もしかして南佳孝は憲法改正に反対の立場なんだろうか、なんて考えてしまったが(笑)、それはともかく、グルービーなバンド演奏に乗って、初っ端から気持ち良さそうに歌ってた。
プールサイド
日付変更線
Scotch And Rain
このあたりは定番である。「プールサイド」は本人もお気に入りの曲らしく、ライブでは必ずと言っていいほど歌われるけど、ファンの間ではどうなんだろう、という疑問がいつも頭をかすめる。歌詞の内容も内容だし(笑) 片や「日付変更線」、これは文句なしの名曲。ゆったりしたサンバのリズムが心地よい。ユーミン作詞と今回も紹介してた(笑)
そばかすのある少女
てきぱき進めないと、2回目のステージに影響するから、なんて本人がMCで言ってたけど(笑)、今回はあまり喋らず、早いピッチでステージを進めていく。ここからは、南佳孝ゆかりのゲストを招いての演奏。まず最初に登場したのは、元はっぴいえんどでお馴染みのギタリスト・鈴木茂。南佳孝とはデビュー時からの付き合いだとか。曲はやっぱり鈴木茂作曲の「そばかすのある少女」。最初の方は鈴木茂が歌ってた。
Cheek Dance
2人めのゲストは、元スクエアのサックス奏者・伊東たけし。意外な気もするが、南佳孝とは友達らしい。3蓮のロッカバラード調の曲で、入魂のサックスソロを聴かせてくれた。ちょっと、早弾きならぬ“早吹き”だったような気もしたけど(笑)
Midnight Love Call
You've Got A Friend
最後のゲストは紅一点、石川セリ。知る人ぞ知る、70年代に活躍したシンガーだ。井上陽水の妻、と言った方が知られてるかも。このライブの為に福岡からやって来た、と紹介されていたが、今は福岡在住なのか? 最初に歌った「Midnight Love Call」は、南佳孝の『モンタージュ』というアルバムに収録されているが、元々は石川セリの為に書かれた曲らしい。「なんであなたが歌うのよ」なんて、南佳孝は石川セリに突っ込まれていたけど(笑)、僕もずっと、南佳孝のバージョンを聴いて、石川セリがカバーしたと思い込んでた。良い曲だからね。女性の心情を歌ってるだけに、女性なら歌いたくなるだろう、なんて思ってたのだ(笑) 石川セリのベスト盤にも入っているので、是非ご一聴を。とても良い雰囲気です。ただ、この曲サビで譜割が難しい部分があって、石川セリは上手く歌えてなかった。久々でリハーサル不足だったのか。
一曲で終わりかと思ったら、南佳孝がギターをつま弾きながら「この曲覚えてる?」と石川セリに問いかけ、「覚えてるわよ」と始まったのが「You've Got A Friend」。もちろん、かの有名なキャロル・キングの曲である。この2人のデュエット、なかなか良い雰囲気だった。ただ、石川セリがボソッと言った一言、「あの頃はユーミンにいじめられてねぇ」ってのが実に気になった(笑)
マエストロ
ゲストコーナーが終わって、次の曲は今年出たブラジル録音のボサノバ・アルバム『スケッチブック』に収められた新曲。初めて聴いた^^; まだ、このアルバム聴いてないのだ。
スタンダード・ナンバー
月夜の晩には
モンロー・ウォーク
スローなブギにしてくれ(I want you)
南佳孝にも、やっぱりライブでこの曲をやってくれないと、みたいな定番曲がある訳で、本人曰く「ストライク!みたいな曲」、ライブ終盤はヒット曲のオンパレードでやっぱり盛り上がった。「月夜の晩には」からは、先程の鈴木茂・伊東たけしを再びステージに呼んでサンバ大会。全員でソロ回しなんかやったりして大盛り上がり。「モンロー・ウォーク」では、スタジオ盤でもソロを弾いてた鈴木茂が、レコードと同じソロを弾いてて、なんか嬉しかった。そして「スローなブギにしてくれ」で大団円。素晴らしい。
冒険王
アンコールはこの曲。定番という意味では、伊東たけしもいるし、「ブルーズでも歌って」あたりかな、なんて思ってたけど、「冒険王」も名曲である。歌詞も泣けるし。この曲の時、カーテンが開いて、ステージ後ろにライトアップされたミッドタウンの庭園が見えたりなんかして、なかなか粋な演出だなぁ、なんて思ったりして(笑)
残念ながら、アンコールは一曲だけで、南佳孝40th Anniversaryライブは幕を閉じた。やはり、2ndステージを気にしてたみたい(笑)
それにしても、久々の南佳孝ライブ、実に良かった。素晴らしかった。声が全く変わってないのが凄い。何でも、近年フルートを習い始めたら、声が以前よりよく出るようになったとか。デビューして40年だけど、年取ったなぁ、なんて全く感じさせないのが頼もしいというか何というか。彼の魅力はなんと言ってもその声、及びその声によって醸し出される雰囲気にある。かといって、歌いにくい訳ではなく、カラオケでも気持ち良く歌えたりする。忌野清志郎や稲葉浩志みたいに、声だけでなく、独特の節回しが特徴で、他の人には歌えない、という感じではない。けど、南佳孝が歌うのが一番良い(当たり前だ。笑)。昔からそうだけど、サンバやボサノバ、ジャズに裏打ちされた音楽性のせいもあり、ほんと大人による大人の為のライブという雰囲気だった。別にファンではなく、さほど期待していなかったらしい妻も、ライブが終わる頃にはすっかりのめり込んでいたのも嬉しい展開。本音を言うと、もっとやって欲しかったけど、時間の短いビルボードライブで、約一時間半のステージで15曲、というのはかなりやってくれたと思う。有り難い。2ndはおそらく時間が押したので、何か1曲カットされたと推測されます。2ndのお客さんには申し訳ない(笑) でも、ほんと素晴らしかった。
南佳孝、現在63歳。次は50周年目指して頑張って欲しいもの。ライブ以来、すっかり南佳孝はヘビーローテーションである(笑)
ライブ終わって、さて帰ろうと地下の駐車場に降りていくと、あれ、見た事ある人がいる、と思ったら、なんと!鈴木茂だった! 何故、ここにいるのか分からなかったけど。「お疲れさまでした」と声をかけられたので、良かったかな。「あの人いくつか知らないけど、顔すべすべ」とは妻の談(笑)