Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(6)

2018-03-02 10:00:02 | 日記

 「何故かって言っても…。」

もう雪が降らないって言われて、こっちはその気になっているのに、また雪が降ったらどう思う?がっかりじゃないか?嬉しい気持ちが一遍で沈んで暗くなるじゃないか、また雪が続くのかと思うだろ。降らないって言われたら、それっきりもう降って欲しくないよ、雪なんかうんざりだ。今は晴れてるけど、こんな青い空も信じていいのかどうか疑わしいだろう。

   その子はそう言うと、下を向いて不安げな様子になるのでした。そして元気なくとぼとぼと皆の後を追って歩いて行くのです。私はそんなその子の丸まった背を後ろから見ながら歩いていました。その沈んだ背を見ていると、私にも雪を厭う気持ちが分かるだけにその子を励ましたくなるのでした。

   「下を向くより、青い空を見上げたら。」

そうすればあの青い空のように気持ちも晴れるから。好天の陽気に上機嫌でいたい私は、折角の明るい気分を自分自身も沈ませたく無くて、遊び仲間に空を見上げるといいよと言ってみるのでした。そうすれば気持ちも明るいままでいられるからと。父の受け売りも披露しました。

「雪の降る冬の後には春が来るって、寒い時が来たら次は暖かい時が来るんだって。」

等と幼いお互いに分かるのか分から無いのか、大人びた口調で父の言葉を続けるのでした。

   兎に角一心に沈んでいる遊び仲間を励まして、開いた春の扉への誘い、冬から解放された喜びを共有しようとしたのです。自分達同様に、仲間のあなたにも喜んで欲しいという感覚でした。輪の中で1人沈んでいる仲間が気にかかるのでした。


土筆(5)

2018-03-02 09:55:42 | 日記

 雪は偏重な気分を運んで来る物のようです。

『どうして自分はこんな雪深い暗い土地に生まれたのだろう。』

家を多雪から保護する為に雪囲いで覆う日、その昨年の晩秋のある日、こう思って沈み込んでしまう子供は少なからずいるのでした。私もその様な子供の1人でした。そして、やはり1年で最も明るい日、「もうこれで雪が降らない!」という日を確実に知りたいと考えるのでした。

 その日を知る事が出来たなら、皆とても嬉しいに違いない。何故ならその日は1年で最も歓喜に満ち満ちた日になるのだから。こう考えると当時の私、又は私達は皆一様に春風の吹く明るい青空を見上げるのでした。そこには気も晴れるような澄んだ青い空と白い雲が有ります。穏やかで暖かな日差しさえ眩しく煌いて見える弥生3月、又は4月の頃です。目に付く所にまだ土筆は生えていません。

 「如何したら、もう雪の降らない日を知る事が出来るんだろう。」

そんな遊び仲間の独り言を聞いた事が、私にも、この疑問を持つ事になった始まりの日であったようです。私はその子が如何してそんなことを考えるのだろうかと不思議に思ったものでした。この明るく晴れた春、大人(家の両親や祖父母等)から、もう雪が降らないと言われた嬉しい時期に、何故そんなことを考えているのか、私は実際に何故そんなことを考えるのかその子に訊いてみたのでした。