初日、一旦家に戻った子供達は昼食後に出直します。怪我の手当てをしたり、着替えたりして仕切り直しです。お日様が暖かく降り注ぐ元の遊び場に戻って来ました。
皆何となく今迄と違うという事が分かって来ています。冬が去った、もう雪が降らないらしい、それは本当なのかと口々に騒ぎ立てて、ぴーちくぱーちく雲雀の子、という騒がしさです。この子達にとって雪がもう降らないという情報がこんなに嬉しいことはありません。本当に歓喜の状態です。まだ信じられなくて沈んだまま。また雪が降るんじゃないかと疑わし気に言う子も中にはいます。が、皆雪の降る時期が去ったことを心から信じたいのです。
そしてついには皆で
「雪はもう降らない!、やったー!」
と叫んで大笑いすると、万歳!など、雪に打ち勝った勝利の雄たけびを上げるのでした。そして一頻の歓喜の後にこやかに午前に教えてもらった遊びを、今度は注意して怪我などしないように行い始めるのでした。
その日から通常の通年の遊びが継続して行きます。子供達は毎日のように、お天気の良い日は外に出て遊びに明け暮れるのでした。そして、誰思うとも無く、『もう雪の降らないという日が、この日だとわかればよいのになぁ。』と思います。雪が降らなくなるのを待ち焦がれている子供は多いのです。晩秋、雪囲いの中、これから始まる雪の季節を思いやり暗い憂鬱な気分になる子は多いのです。それは多分1年で一番嫌な日になるのでした。もう過ぎ去っているのに、この春の日に
「去年の雪囲いの日を思い出すと…」
など言おうものなら、止めてくれ!と、あんな日のことを思い出すなんて、さも人生で最悪な気分だと言わんばかりに耳を塞ぎ、これ以上雪囲いの話をする子の声を聞くまいとワイワイ訳の分からない言葉を発し出す子も出てくるくらいです。