Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(23)

2018-03-19 11:53:49 | 日記

 「今皆がいた此処にも土筆は有るけど、」そう言って自分達のいる場所の向こう側、大きな施設の渡り廊下の下、軒先の様になっている下の地面がむき出しになった空間を指差すと、あそこにも土筆が生えるんだよ、と優しく言うのでした。

「春先にここへは来たんだろう、誰かと一緒に。」その誰かを嘘つきだと思ってるかもしれないけど、そう言うと彼は来てごらんとその女の子を手招きし、彼女を伴って軒下にやって来ました。足元の地面を指さすと

「今ここには何もないけど、今ここには土筆は生えていないけど、ここにもちゃんと土筆は生えるんだよ。」

そう言ってにこにこ笑うと、不思議そうに自分を見上げる女の子に親しみを込めて言うのでした。

「ここの土筆はこの辺りでも1番早いらしいから、もう今だと遅くなって皆無くなっているんだ。此処は今地面の土だけになっているだろう。」そんなことを言って、実際に女の子に土だけのむき出しになった地面を見せて確認させるのでした。

 「うん、何にもなくて地面だけ。」

そう女の子が答えると、そうだねと相槌を打ち、彼はせっせと作り笑いを浮かべて見せます。

「でも、もっと前にはここに土筆があったんだ。」

それは確かだからね、皆に物を教える役目の僕が保証する、と念押しするのでした。だから、最初に君にこの場所に土筆が生える事、有る事、を教えた子の言う事は嘘じゃないからね。君がその子の事を嘘つきだと思っているらしい、から、その子は君に嘘つきだと思われたくない、と言って、僕に、ここに本当に土筆が生えていた、と言ってほしい、と言って、そう頼んで来たんだ。その子は嘘つきじゃない、から、本当のことを言っていたんだよ。僕も、ここに土筆が生える事を知っているし、本当に、土筆を見たこともある。雪が溶ける頃なら、ここに、本当に、土筆はあるんだよ。

 事細かにそう言うと、彼はほっーと一息吐くのでした。


土筆(22)

2018-03-19 11:53:15 | 日記

 そして、この時の彼にはもう1つ、グループの仲間の1人から頼まれていた役目がありました。こっちの方は年下の子から頼まれたので、話を受けた時には新リーダーの顔としてキップよく気楽に引き受けたのですが、今になるとこちらの方も何だか気が重くなって来てしまいました。

 ふと気になり頼まれたその子を見てみます。思わず目が合うと、その子は真剣な眼差しでこちらを見ています。自分が頼んだことをリーダーは何時言ってくれるのだろうというような、きりっとした訴える目つきです。その自分を頼り切ったあどけない真顔の顔を見ると、新リーダーは再びリーダーとしての自信を取り戻しました。

 そっとズボンのポケットの中のキャラメルのオマケに触れてみます。ポケットの布の上から手でその塊を撫でてみます。手に伝わる感触にこれはこれで欲しかったけど…。欲しい物を手に入れたという嬉しい気持ちの反面、頼まれるんじゃなかったという後悔も湧くのでした。それにしても、頭になって何かを人に教えるという事は、酷く気疲れするものだなと、胸にしみじみとした悲哀のような物を感じるのでした。自分がリーダーになった事を後悔し、又、その確りしなければいけないリーダーが、年下に物で買収されたようで、気恥ずかしい後ろめたい気分も重なって後悔の念に追いすがって来るのでした。

 『ま、頼まれた事は頼まれた事だから。』、彼は武士に二言は無いと内心呟くと、一旦引き受けた約束を果たそうと徐に立ち上がると元気よく

「じゃあ、今日はこの辺で解散!」

そう皆に声をかけて、仲間がわーいと思い思いの方向へ一散に駆け出していくと、年下の頼み事を引き受けた子に目配せして頷き、未だ駆け出さずに立ち上がったままで周りの様子を見ていた、年少の物慣れない1人の女の子を呼び止めるのでした。彼は女の子が佇んでいる傍に行くと、愛想よく笑いました。


春の小川

2018-03-19 11:44:07 | 日記

 いかにも春らしくて、「小川」を知らない子供達に、この言葉を覚えてもらうのに良い曲です。小川ってなぁに?という子が必ずいますね。今はそう言う子の方が多いです。思えば唱歌って言葉を覚えるのにも役立っていたのですね。てるてる坊主や、花、雨雨ふれふれ…🎶等、懐かしいです。