Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(27)

2018-03-22 09:51:16 | 日記

 ここで、この兄妹の事情がさっぱり分からない私は、「あの人って、…。」と彼女の兄の名を挙げてみました。薄々「あの人」は彼女の兄さんの事なのだろうと感付いていましたが、それでも私は確認の為にはっきり尋ねてみたのでした。突然の私の質問に彼女の後ろ姿は一瞬たじろぎ、その肩が強張ると、彼女はさも怖じ気づいた様な雰囲気に変りました。

 そうしてから彼女はおずおずと振り向きました。返事を待つ私は振り返った彼女の顔を透かさず見てみました。すると見た目に彼女は妙な顔付きをしていました。その目は視点の定まらない儘見開かれて、曇りガラスの様にぼんやりとしているように見えました。それでも視線は一応私の方を向いているようでした。その彼女の放心した瞳を見ていると、私は『お姉さんには私の事がはっきり見えていないのではないか。』と感じ、彼女の身体の具合を案じるのでした。具合が悪そうだ、風邪ひいたの、目が見えないの等、私の問いに全く無言のままのお姉さんに、私は見た目感じたままに何度か質問してみるのでした。

 暫くして漸くお姉さんの口から「そ、そんな…」という言葉が漏れました。「…そんな事、兄妹の私からはよく言えない。」(この場合の「よく」は上手にいう、きちんとしたことを、特に自分の兄に不利になる様な事を、自分の口からは正直には正確には話せない、きちんとした情報は伝えられない。言う行為は出来ない。そんな意味合いになるのでしょう。)彼女の口からはこの言葉が細々と出てきました。

 事ここに置いて、私にしてみると、今日のこの兄妹2人の言動は何時もと違う奇妙で不可解で不可思議な物となり、私には到底理解出来ないという出来事の連続になってしまいました。

 『何もない所に土筆がある。お姉さんも見た事が無いここに土筆がある?大きいお兄ちゃんの何でも教えてくれる人が変?、きょうだい、だから彼女の兄妹はお兄さん、そのお兄さんの事が良く言えない?。妹ならお兄さんの事を良く言うんじゃないのかなぁ。自分のお兄さんは悪くても良く言うんもんじゃないかなぁ、いやお兄さんの事は良く言えるだと思う。』

と何が何だか、考える程に頭の中が混乱して来て戸惑うばかりです。混乱した私は頭を抱え込んでしまいました。