「土筆?ここに?」
彼女は私の言葉を訝って、すぐ真下、私が眺めていたその場の地面を眺めると、再び「土筆が?この下の場所に生えるって?あの人が?そう言ったの…。」と言った切、絶句して困惑したような顔付きになりました。彼女は何も言わずに私の顔を見つめたり、自分の兄が去っって行った方向を眺めたりして、彼女は彼女なりに何かを考え込んでいるようでした。その後ややあって後に、彼女は「あの人、時々妙なこと言うから。」そう言うと、年上らしく私の顔を見詰めて安心させるようににっこり笑うのでした。
「あの人に叱られても気にする事無いよ。私なんか何時もだもの。あの人しよっちゅう妙なこと言ってるし…。」
気にする事無いよ。そう言うと、お姉さんは、土筆がねぇ、あの人がねぇ、こんな場所にねぇ、見た事無いけど。…本当に?有るって言ったの?と奇妙そうにぼそぼそ呟いていました。挙句の果てに彼女は私の顔をじろじろ見詰めると、
「土筆って?、どれの事か分かる?」
と、私に土筆という言葉やその物自体が分かっているのかとさえ疑問に思ったらしく、あれこれと質問してくる始末でした。この件で自尊心が傷ついた私は内心ぷんと来てしまい、「土筆は勿論ミョウガも知っている。」と頓珍漢な事を彼女に言ってのけるのでした。そして、土筆はダメだけどミョウガは食べられるのだ、と余計な知恵を披露して見せるのでした。
彼女は自分の兄の件で心労していた所に年下の私の厄介毎迄しょい込んだ形になり、目の前の問答に疲れてがっくりと肩を落としました。そして、遂には私の事より兄の事と思い至ると、「あの人、やっぱり変なんだわ。」と、私に背を向けて再び兄の去った方向を眺め、静かに落ち着いた様子で何だか寂しそうに呟きました。彼女はこれで遂に結論が出たのだと思うと、自身に言い聞かせるようにきっぱりとした感じでこの言葉を口にしてみたのでした。