Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3  101

2021-01-13 11:31:19 | 日記
 そんな私の様子を見て、なんだい?と従兄弟は言うと、ニヤッと笑顔を浮かべた。

「智ちゃん、君ね、皆から好かれていると思ってない?。」

笑顔の儘で従兄弟は、私にこう尋ねる様に話し掛けてきた。そうして直ぐに、こう自分の言葉を訂正した。

「ああ、そうか、もう、いたかだ。」

智ちゃんがここにいたのはもう昔の事だものね。そうだそうだとしたり顔風で従兄弟は言った。

    「この昔の事、という言い方は難しいんだ。何時も兄さんに言い直させられるんだよ。」

ここで従兄弟は珍しくしょげて見せた。この従兄弟の一連の所作に、これは従兄弟が本当に態としている事なのだろうか?、と私は内心訝った。何故ならこの従兄弟が、自分の失態の様子を年下の私の前で、さもあからさまに、無防備に曝すという行動をするとは私には思えなかったからだ。しかし従兄弟がもし真面目なら、この従兄弟にしてはこれが全く初めての私の目の前で見せた失態の姿だった。

    今迄の従兄弟は、私の目の前で真新しい言葉の知識を披露する時、自分の顔、言葉の端にでさえ、微塵も自慢気な様子を浮かべたり、漂わせたりもしなかったものだ。『もしかしたら、』私は思った。これは従兄弟が新しく習得した冗談なんだろうかと。

    私は従兄弟から視線を外してあれこれと思案に入った。私はふと、居間と座敷との間にある白い障子戸に目を奪われた。障子襖の細かく小さな木の桟、そこに広がっている複数の格子模様を眺めた。それは木の枠で区切られた画一な図形達だった。小さくて可愛らしい、焦げ茶色の枠を持つ無垢な白い長方形の数々だ。

    私は従兄弟の意図する所がさっぱり分からない儘だった。しかし、私も従兄弟も未だ幼い。この世に出て未だそう長くないのだ。あの数多く並ぶ可愛い一つ一つの障子模様の様に、い並ぶこの世の子供達の集合の中に2人はいる。2人は未だ小さいものなのだ。そう思うと、ここにいる2人、同じ様な年端の2人の現在の人生が、そう掛け離れた物では無い様に私は感じられた。

    「そう違わない。」

私の口から言葉が零れた。2人の人としての成長はそう違わないんじゃないかな。私は思った。『きっとそうだ!。』私は思った。私は思った儘に従兄弟に問いかけてみた。私と従兄弟はそう違わないよねと。

    「何だい急に。」

年下の私にこう言われれば、従兄弟は多分不愉快な気分になるだろう。私にはこう予想が着いていたが、将にその通りに反応した従兄弟の言葉と顔付きは余りにもあからさまで、その様子に返って私は、得意の笑みを漏らすより失笑せずにいられなかった。そうして、歳上として模範的だった従兄弟が、実は本当は子供らしい子供だったのだと、自分の今考えた考えという物を確信した。

うの華3 100

2021-01-13 10:32:43 | 日記
 「智ちゃん、今日は何だか違うね。」

従兄弟が言った。私はハッとして視線を上げ、従兄弟の顔を見た。普段通りの従兄弟の顔色だった。私は特に変わった所はないと思うと答えた。すると従兄弟はそうかなと不思議そうな声を発して首を傾げた。そんな従兄弟の姿を見つめながら、私はこの時確かに従兄弟に対しての対抗心というものを胸の内に感じていた。その私の胸の一物が、正直に真実を語るのを遮っていた。私はこの蟠りについて、つい先程までは正直に語っていたのにと我ながら不思議にも感じたが、今現在はそうなのだと、改めて過去からの年近い従兄弟への確執を鑑みた。

 そう年が違わない、大人として物事を教えてくれる父とは違う、私とは子供同士である従兄弟は、あれこれと私に対して手解きしてくれたのだが、その一番最初の時に感じた私の嫌悪感、その後の従兄弟に対して抱いた劣等感、それを否応なく胸に収め乗り越えて来たこの幾ばくかの時、その映像が私の瞼に投影しコマ送りの走馬灯の様に走った。私は視線を落とした。そんな沈み込んだ私に、

「やっぱり変だよ。」

こう従兄弟は言うと、智ちゃん何かあったのかと声を掛けて来た。

 私は従兄弟のこの言葉に、私の事を案じているのだろうと思った。やはり親戚だと思うと、私はこの胸の確執を従兄弟に告げるべきでは無いと考えた。再び従兄弟が大丈夫かと聞くので、私はうんと答えて、いや、実は少し具合が悪いのだと訂正した。

「さっき階段から落ちて頭を打ったんだ。」

そう言って私は、先程父と共に落ちて一階の天井の梁に打つけた箇所を手で示してみせた。ああと従兄弟は言った。

「その件なら聞いているよ。」

智ちゃんのお母さんから、と従兄弟は言うと勝気そうにその瞳を輝かせた。

「良い君だと思ったよ。」

不意に従兄弟は私が予期もしなかった言葉を口にした。私は驚いて目を見開いたが、そんな私の様子を見詰めながら従兄弟には悪びれる気配が無かった。

 「何て言ったの?。」、私は聞き間違いかと考え、従兄弟に確認を取った。従兄弟の方は平然とした物で、今かいと言うと、智ちゃんが階段から落ちて、頭を打つけて、それが原因で亡くなったと聞いたから、と言うと、「それを聞いて良い君だと思ったと言ったんだよ。」と答えた。私は益々目を丸くした。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-01-13 10:26:34 | 日記

うの華 134

 私は非常に驚いた。屋外での近隣のお店回り、坂道での危難、そして曇天の下、数々の緊張を強いられた心労と疲れからか、はたまた冷え込んで来た大気のせいか、すっかり心身共に冷え込んで帰宅......

 雨です。これで少しでも雪が溶けてくれるといいなぁ、といった感じです。週末の寒波予報に備えたいです。