Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 139

2021-04-05 10:55:54 | 日記
 座はシンと静まり返った。と、ドン!と床を踏み鳴らす音がした。「未だです。」重々しく義姉は発言した。

 「ところで、あんたのお母さんは?、」

年嵩の甥に対して、伯母である彼女が向けたこの声はやや感情的だった。如何にも咎める調子を含んでいた。これは義妹に対しての言葉だったが、本来は甥に対する叱責の言葉なのだろう。子の責任者に矛先が向けられただけの事だった。そうしつつ彼女は、透かさず話題を変えたのだった。抑揚を抑えた低めの声、そんな伯母である彼女の声だけが1人廊下に響いている。

「あんたのお母さんも、この場にも来ないで何しているの。」

落ち着いた静かな口調が続くのだが、これは彼女が冷静なのではなく、自身の溜飲を下げる為興奮を抑えているからだった。如何にも声音を押し殺した語調だった。

 「ああ、でも、それはですね伯母様、…」

甥はそんな伯母の気持ちを知ってか知らずか、彼女に恙無く返答をし始めた。さっきも言った通りと、彼は至極丁寧に、如何にも世馴れた風情で伯母に自分の母の仔細を語り始めた。

 自分達の母は年下の従兄弟の母に当たる叔母の、鯔のつまり、智ちゃんの母の、今現在酷く取り乱したその叔母の相手をしていて手が離せない。直に、電話した彼等の父も、彼等の家に帰るだろうから、そうしたら自分達の母は、父と叔母の相手を替わってここに来る事でしょう。と、彼は懇切丁寧に目の前の伯母に説明した。

「何しろ泣くは叫ぶは、それは言葉では言い尽くせない様な取り乱し様で、可哀想な歳下の叔母様の…」

もう、と、何でもいいからと、「早くあんたのお母さんを呼んで来なさい。」。彼の話を遮る様に、彼の伯母は神妙に彼の話に口を挟んだ。

 この時、傍にいた彼の叔父も祖母も、彼等の甥である彼の流暢な口上に聞き惚れていた。彼等は共に目を細め、口元等緩めて彼を静観していたが、この彼の伯母の言葉に、彼等もはっと我に返った。甥の方は勿論、でも、と、言葉を続けて伯母に反論し掛けた。と、急に伯母の景色が変わった。彼女はグンとばかりに甥の目の前に自分の身を乗り出した。そうして彼女は彼の鼻先に覆い被さるように聳り立つと、凛として叫んだ。

「早くお母さんを呼んで来なさい!」

これははっきりとした彼女の金切声にあたった。しかも酷く大きな声音であった。彼の伯母の怒声は廊下から台所、居間へと広く家中を通って走った。

 甥はこの声に弾かれた様に、廊下の床を彼の両足裏で蹴って飛び立った。彼は驚いて見開いた彼のどんぐり眼の儘、目前を遮る様に立つ廊下の伯母を避けて通ると、縁側にいる叔父の側を飛び抜けて座敷に入った。そこをピュッーとばかりに駆け抜けた彼は、早くもこの家の階段の在る部屋に出た。

 階段の横を駆け抜ける時、思わず彼は階段と反対の方向、自分の脇から広く開けている空間へと首を傾けた。そこにはこの家の居間が在る。居間の景色が彼の目に映ると、そこにぽつんと立つ、彼の歳下の従兄弟が彼の目に入った。と、彼ははっしとばかりにその小さい子と目が合った。

 『げっ、智ちゃん!』彼の背筋には悪寒が走った。お化け!と一瞬彼は思ったが、そうだ智ちゃんは未だ生きているんだった、と思い返した。そうして彼はその幼い子に目を止めながら、この家に来てから彼の見聞した事柄を瞬時思い返していた。

うの華3 138

2021-04-05 10:35:05 | 日記
 「ゴンって、凄い音がしたんだよ。」

と遂にここで、廊下にいて叔父からも義理の伯母からもやや離れた場所に立ち、それ迄如何にもしたり顔をして、彼等の中で中立を守る様にじいっと物事の展開を静観していた所の、彼等の甥にあたる年嵩の男の子が沈黙を破った。彼は言った。

「階段に打つけられた時の音だよ。」

 あの子の方のさ。他にもポキと音がしてた気がするけど、叔父さんは気が付いたかどうか。さっきから話に出てないけどね。顔以外にも怪我してると思う。智ちゃんの方。こう彼は言った。

 「私もあの子はそう好きじゃ無いけど、あの子は態とそんな事する子じゃ無いよ。」

「避けるなんてね、そんな器用な事。あの子は出来無い。それは確かなんだ。だって…、」、彼は言い淀んだ。叔父の手前、彼は叔父の子に言及する事を暫し躊躇したのだ。

「だって、そのね、あの子はあれだよ…、」

「何ですあれって?」

伯母が勢い込んで彼に問い質した。

「言い出した事は終い迄はっきりお言い、男の子でしょ。」

彼の祖母も加勢した。

「うん、…、あの子にぶいから。」

彼は言い難くそうだったが、少しずつ後を続けた。「態とだなんて、毛程も出来ない子なんだよ。」。ほうれみろと、彼の叔父はさも当然とばかり、彼に相槌を打つ様に言った。

「これで義姉さんの負けだ。」

今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-05 10:04:53 | 日記

マルのじれんま 7

 エリアの換気口から出入りする、自動管理された複合気体が作り出す気流が、シュロの掌状に深裂した各々の細い葉や柄を揺らします。頭上で大らかに揺れるその涼し気な濃い緑を心地よく眺め、散......

    今日は曇り空、花曇です。早くも桜は散り始めた様子です。
    こちら県内も、コロナが再拡大し始めた様子です。陽性者0の日が無くなって来ました。変異種の感染者数も毎日更新されています。しかも感染経路不明も出始めて、聞く通りに感染速度が速いです。今回は近辺地域がよく取沙汰されています。いよいよ身辺が泡立たしくなって来ました。本当に暫く外食に行けなさそうです。