Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 171

2021-06-11 08:20:53 | 日記
 「世間は何と申しましょう。」

彼女の言葉には、義理の父の考えに相反するという重い響きが有った。それでは済みませんでしょうに、彼女は続けた。黙した彼女に、舅はほうっと息を吐くと語り出した。

「お前さん、私の考えに背く気なのかい。」

いけない了見だね、嫁の分際で、舅で有るこの私に楯突くとは、如何いう了見なんだい。舅は怖い顔で、その声にも嫁で有る彼女を脅す様な凄みが込められていた。一瞬その舅の変貌に驚愕した彼女だったが、直ぐにまぁと彼女は思った。世の変化、商品の流行にも機敏に対応する進歩的な舅だったのに、幾ら明治の生まれだからといっても、今の如何にも封建的な物言いは何だろう。『もう、古めかしい。』、彼女は思ったのだ。心の内にふんと言う思いが湧き、彼女の顔に舅に対する侮蔑の感情が覗いた。

 「ほらね、時代遅れだと思っただろう。」

何時もの顔で、舅は如何にもと言う様に義理の娘に言葉を掛けた。

「現代だよ。明治でも大正でも無い。大正も一時良かったが、それより更に良い時代、昭和の現代なんだ。古い考えはお止め。今時、今からは流行らないよ。」

商品と同じだ、古い物は廃れ新しい物が台頭するんだ。お前さん達も新しい波に乗りなさい。あの子の事は私達親に任せておけば良い。舅は切々と嫁を諭した。彼の真心が伝わって来て、嫁は思わず俯いた。目頭が熱くなって来る。

 でも、でもと、彼女は口の中で言葉をこもらせた。この場で舅に言うべき良い言葉が彼女には浮かんで来ないのだ。

「お義母さんは、」

漸く彼女の口にこの言葉が浮かんだ。『そうだ、お義母さんは何と言うだろうか。』そう閃いた彼女は、即座にこの方向で舅の一方的な考えを打破しようと決定した。

「何と思われるでしょうか。」

きっと良くは思われないと思います。彼女は舅にこう切り出した。

 良妻賢母、内助の功、銃後の母、妻、が日頃の口癖のお義母さんの事ですもの、お義父さんの言う通りにそんな事をしたら、子で有る夫は兎も角に、私の方は如何思われます事やら。そう言って舅に打診してみる。そんな彼女の内心は実は揺れていた。

 何故お義父さんの言う事を素直に聞かないの?、いい話なのに。心の中で自分にそう問い掛ける自分がいた。

 「でもそうしたら、確実に世間の人からの批判の矢面に立たされるわ。」

そう答える良識的な自分も存在していた。彼女はこの様に内面で様々に葛藤していた。お陰でその表情には様々な思いが浮かび、煩悶する苦しげな物となった。彼女と舅、傍で2人の成り行きを見守る彼女の娘達も、皆沈黙した儘だ。食堂内はシンとして物音一つし無くなった。

「押されてやすぜ。」

この店の店主の声さえ、この場に置いては他人事の様に空虚その物だ。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-06-11 06:15:16 | 日記

マルのじれんま 44

 さて、紫苑さんは一口琥珀色の液体を口に含むとその懐かしい滑らかな甘い味を舌の先で味わいました。遥かに幼い頃の過去の自分から、現在の未来に迄至った自分の身上を思いつつ、己が味蕾で今......

    今日は真夏日になる予想です。暑くなりそう。
    うっかりしていましたが、歯の治療と、ワクチン接種は重ならない方が良いのでしょうか。歯をいじると、体力落ちますよね。困ったな(母の話)。高齢だし。かなり後期だし。
 昨日は、梅雨入り前にと、玄関先の空鉢の重ねてあった物を洗い、乾かして片付けました。洗っていて気付きましたが、匂います。何の匂いかと言うとアンモニア臭(ご飯の方ごめんなさい)。何の?と考えて思い当たったのが猫。空き鉢が寝ぐらになっていたのでは?、と思い。それもかなり前の事だろうと考えていました。洗った鉢はビニール袋で包んで置いてあったからです。
 やれやれと、鉢を洗った水跳ねを浴びて、ほんわか匂い移りした服の私。そのまま次の空き土の処理に移りました。こちらは鉢から出して乾燥させてあった鉢土です。鉢の形そのままで、暫く軒下に放置してありました。放置といっても乾燥させてあった物です。でも、緑の雑草が萌え出て来るので不思議には思ってはいました。
 ごりごりこんこんと、鉢土を崩して行きます。あれ?、こちらも香りが。と、感じると、なるほどと思い当たりました。土の下にはビニールと新聞紙が敷いてありました。新聞紙の上に乾燥して溢れた鉢の淵の土。猫砂?。じゃ無いので、『此処でしないでね。』と内心呆れて、何処の猫かしらと思い、野良かしら?、近所の飼い猫かしら?と、人の玄関先なのよ此処は、と苦情を呟きます。これも内心。
 良いお天気だった昨日、空き土と鉢の片付け完了。