この話の後日談です。私にもこの時の彼女の気持ちらしい物が分かる出来事が有りました。
私達はその後も数回この様に小学校の校庭で待ち合わせをしたのですが、ある時、私に最初の時に彼女が取った態度の理由らしい事が理解出来る場面が有りました。それは私と彼女の服装が最初の時と反対になった時の事でした。
如何も赤い服装が友人の例の素っ気無い態度の理由ではないか、薄々そう感じていた私は、ある日の友人との待ち合わせみに何時もよりより地味な色合いの服装で出掛けました。するともう彼女は校庭に来ていて、ある遊具に座っていました。この時私は直ぐに友人に気付きませんでした。何故なら、彼女はあの時の私の様に赤い花柄の上衣を着ていたのです。どちらかというと、彼女も私同様普段赤系統の服は身に付けて来なかったのです。それで私は遠目にあれは別の子だと判断してしまいました。
グランドにはその子1人でした。後からグランドに足を踏み入れた私は、何だかその子の赤い可愛い服に気圧されて足を止めると、小学校の体育館の在るこちら側でモジモジ、私の横に連なる小学校のプールの柵に寄ってみたり離れたりとちょこちょこして、いつも彼女がやって来る相撲場の方を窺っていました。
それでも赤い服の女の子が気になりました。人というより、赤い色が目に鮮やかに映り込んで来るのです。いえ、視覚というより頭の中に訴えて来る何物かを感じました。それは美しいという美的感覚では無く、遠目に見える女の子という幼さに似つかわしく無い女性という大人びた印象、艶かしさという物でした。私は見るでも無く何回かその子に視線を送る内に、ムッとした感情が心の内に湧き上がるのを感じました。子供のくせに、こんな小学校のグランドで、あんな赤い服を着て、大人の女性っぽい雰囲気でいるなんて、と、おませな子だとその子に反感を持ってしまったのでした。しかもその子は独りっきりでグランドにいるのです。
この場に広く、私とその子の2人だけと思うと、私の反感はより増すのでした。思わずキットその子を睨んでしまった私でした。知らない子なのに、私は内心こんな自分に一寸驚いていました。