それでもその直後、私はその子が自分より年下だと思うと、私が怒るのは最もだと考え直しました。私はその時ムッと来た自分の感情を怒りの感情だと考えていましたが、それはハッキリとした嫉妬心でした。同性である女性に対しての、女性というものを感じ取った嫉妬心、これは私がそんな感情を艶やかな赤い色という物に嗅ぎ付けた瞬間でした。
小学生が、1人で危ないわ。ここはこの学校の卒業生であり、先輩である私が注意を促さなければ!。
こう使命感のような物にこじ付けてはみた物の、その子に向かって歩き出した私は妙な後ろめたさを感じていました。勢い込んで少し歩いてみた物の、私は立ち止まり考え始めました。結局なんて言って話しかけたら良いのだろう?、知らない子に。私は考え込んでしまうのでした。
私は薄々でも、自分が抱いた感情が理に合わないと感じると、赤い服の子にわざわざ言いに行くことも無いんじゃないかと自問していました。そう思っては立ち止まり、いや、ここは先輩の自分が言うのが義務、等、妙な正義感に引きずられてみたり、そうこうしつつ私の歩は進んで行き…、そして。
「おーい。」
と、相手に手を振られた私は、次にその子に私の名を呼ばれ、言ったその子が誰だろうかと見詰め直すのでした。その後は過日の反転でした。私と友人の立場が逆転の構図となったのでした。
私はその時の自分の感情を、既に過日の経験から理解出来るだろう友人を思う時、会話を弾ませることが出来ませんでした。そして、友人の赤い服装を目にする毎に、何時もより地味にまとめて来た自分の格好ばかりが見窄らしく己が目の前にちらつきます。それに比べて友人は何て明朗で美しい服装でいる事か。こう思う度に私の気分は沈み込み、劣等感ばかりが弥増して来るのでした。
私は遂に居た堪れなくなり、これ以上この儘ここにいて、もし堪え切れ無くなった私が目の前の友人を傷付けるような言葉を一言でも言ったならと煩悶したのでした。かっかと頭に血が昇る、その前に、いやもう目の前が赤くなり掛けている、と、咄嗟に私は今日はこれでねとばかりを口にすると、彼女を独り校庭に残して急ぎ帰宅したのでした。