「その先を言ってごらん」それで、
「どんな…、…人でも、」
うん、と祖母は言います。「そこまでは合っているよ。」
「最後は一人になって死んでしまう。死ぬ時は一人だ。ごらん、文字通り草葉の影だ。察するに諸行無常とは、この絵の女の人の様に、人は最後は1人になって死んでしまうという事なんだなぁ。人の人生という物はこの様に空しいものなんだな。」
祖母は目をカッと見開くと、眉間には青筋が走りました。
「お前のお父さんがそう言ったのかい。」
蛍さんに確認するまでも無いのですが、彼女は目の前の孫にそう言い放ち、尋ねました。
「そうだよ、お父さん、説明が上手いでしょう。」
にこにこして父を褒める蛍さんです。
祖母はあれこれと思案を巡らしている様子でしたが、傍に誰かいなかったかいと、心ここにあらずの様子で蛍さんに尋ねました。傍に?蛍さんは思いだしてみますが、父の後ろに、少し離れた場所には誰かいたようでした。「男の人だったかな…」そんな事を呟きます。「お父さんの、少し向こうの方に誰かいたみたいだったけど、」入口の明るい方にいたみたいだと言う彼女に、それなら息子の話は聞こえていないだろうと祖母はほっとしました。こんな話を誰かに聞かれたらと思うと、息子というより、家の恥じだと祖母は思ったのです。
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