Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華3 149

2021-04-26 09:21:53 | 日記
 その後、親戚の子が家に入るのを見届けて、彼女達親娘はまた会話をし始めた。

「この後あの子が来るとして、何処から来るかしらね。」

母が口にすると、彼女の娘姉妹の内長女が、そうねぇと応じた。

「この、表玄関からは…、彼、来ないんじゃないかしら。」

多分ねと姉は言う。彼女の従兄弟、その兄はきっと、自分が指図した下の兄弟の首尾を確かめに来る筈だ。暗黙の内にこの点でこの親娘の意見は一致していた。抜かり無い彼の事だ、きっとこの家に現れるだろう。

「表立って口に出来る様な事じゃ無い話ですもの。」

姉は自分の発言を続けた。こっそりと…。そこ迄言うと、彼女は自分の妹の方へ視線を投げ掛けた。妹はコクリと頷くと、

「裏よ、裏庭から忍んで来ると思う。」

姉さんそうでしょうと、彼女は自分の意見を口にすると姉の同意を求めた。妹の呼び掛けに、姉の方は考えながら黙りこくっていた。が、姉は母と目が合うとうんと頷いた。

「きっと裏よ、この家の勝手口から来ると思う。」

妹の言う通りだ、彼女等の従兄弟の兄は、こっそりと忍んで来る筈だ。そう彼女も自分の妹の意見に賛成した。姉妹の母も私もそう思うよと言うと、ここで3人の考えは1つに纏まった。

 彼女達は早々にこの家の表玄関から建物の裏手に回るべく、女3人そそと連れ立つと表玄関と接している広い往来を進んだ。彼女達は直ぐにその道の角に立つ電信柱の横に達した。この電柱を左に迂回して、道幅がこの表通りの半分程の道路に入る、すると2件程先に彼女達の親戚の家の裏口へと続く通路、その家の裏庭、勝手口に接している路地があるのだ。この路地は土剥き出しだが公共の物で、この近隣の家の各々の裏口に接していた。また、通路は袋小路になっておらず、2箇所程の出入り口を持ち、この界隈の舗装路へ通り抜け出来るのだ。その為住人の誰もが便利に行き来していた。昔この親戚の家の住人であった彼女等親娘も、この地理やこの界隈の事情にある程度通じ、近隣の人情等重々知り尽くしていた。彼女等の親戚の長子である男の子も、この通用口の何方かからやって来るだろう。そう彼女達は踏んでいた。

 「でも、そう急ぐ必要も無いわね。」

母は独り言の様に口にした。あの子の首尾を付ける時間が必要だろうからねと、その兄の遅れてやって来る時間、彼が兄弟の後から来る為に計っているだろう時間、の猶予を算段し始めた。

 「30分位かしら。」と、彼女は娘達に尋ねてみる。お前達だと如何かしら?、あの子が叔父さんに先程の話を着けるのに、さてどれ位の時間を見積もるかしらね、と、問うてみる。さあ如何かしらと考え込む2人の娘を前に、その間ふいと顔を上げた彼女に、向かい角に建つ食堂の看板が目に入った。彼女は急に空腹を覚えた。『そうね、昼食時に当たるわね。』、お腹も空く頃だと彼女は思った。

「お昼にしましょうか?。」

娘達に尋ねてみる。お母さん、親戚の不幸時に食事だなんて…、長女が不満そうに彼女に忠告し掛けると、彼女はだからよと自分の長女に言った。

「あの子だってお昼にしている時間よ。」

あの子の事だ、腹拵えしてから来ますよ、きっとね。と、毅然とした母は、娘達に彼女の悠然とした微笑みを見せた。


一昨日の思い出を振り返ってみる

2021-04-26 05:39:05 | 日記

マルのじれんま 17
 子供の親のエン方は、どうやらドクター・マルが星を出た当時の頃の、自分の苦労話をしているようです。星に残された自分や家族のその後の身の上を吐露しています。 兄のマルの方はというと、......

    今日もお天気はよさそう。良く晴れています。
    私の思い出は、メールの具合で、昨年より1日前の物が多いです。でも、本人は気にしていません。aboutというものです。😌
    読まれる方も気にしないで下さい。あと、もう1つ。現在、書いている作品達は本になる予定はありません。過去の文庫本は自費出版です。しかも、人生の節目の記念にと、特別に出版社の企画に応じたものでした。長く主婦の身の私では収入0円。そうそう出費する費用はありません。悪しからず🙇、ね。😊

今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-24 11:20:05 | 日記

マルのじれんま 16
 さて、マルとエンの言い争いは続いています。そこでエンは、ピー、マーの自分の娘達2人が、親に注ぐ視線に気付くと、彼女達に店の外へ行って遊んでいるよう促しました。 「遠くに行かないよ......

    今日も良いお天気です。
    昨年は2作品アップした日です。今回は番号の早い回を載せました。

今日の思い出を振り返ってみる

2021-04-23 12:05:49 | 日記

マルのじれんま 15
 ドクター・マルたちを店に残して、このエリアの大通りを歩いて来たシルでした。休憩コーナーのベンチの所まで来ると、彼女はそこに配置されていた楓の木の下のベンチに腰を下ろしました。 そ......

    良いお天気です。気温は昨日より低いそうですが、乾燥して気持ちの良い日です。
    さて、一昨日よりぬいぐるみ用の服を作っています。こういった極小の服は、随分前にも作った事があります。その時は子供の古着を利用して作りました。古着利用をすると、いくつか端縫いを省略出来るので割合助かります。
    ぬいぐるみモデルは以前と同じです。20年以上経つでしょうか、可なり見る影もない状態ですが、未だ家で存命です。かつて聞いた事ありますが、ホント!😌、プレゼントにマスコットが喜ばれるって、分かりますね。😊



うの華3 148

2021-04-20 18:29:20 | 日記
 へー、こんな親戚の取り込んだ時に。まぁ、呆れた。と、母娘は共に声に出して驚いた。

「まぁ、如何いうお坊ちゃんなんでしょう。」

「幼気な子に、何て無慈悲な事を!。」

と、彼女達は、この目に前にいる幼い子に痛く同情した。そうしてその兄の横暴さに呆れ憤慨した。そこで彼女達、この子供にとっての伯母親娘は2人如何しましょうかと、暫しボソボソ相談していたが、遂に母である彼女が一計を案じた。

 彼女は傍でちんまりと控えていた彼女の末娘を自分達の側に呼び寄せると、2人の娘達にあれこれと指図をした。そうして置いて彼女は、目の前にいた幼子には、

「まぁまぁ、あなたも心労だったわねぇ。ああよしよし、全てこの伯母さん達に任せて置きなさいよ。」

そう言うと、あなたは何案じる事無く、あなたの兄に言われた通り、この家に入って、あなたの叔父さんに、あなたのお兄さんに教えられた通りの言葉を言いなさい。そう言って彼女は優しく子の背を撫でると目の前の家へと送り出した。

 子供は伯母に言われる儘に家に入ろうとしたが、ふいと彼女等を振り返った。

「あの、伯母さん、仏様にお願いしていいかしら?。」

と尋ねた。はて?、と合点のいかぬ顔をした伯母に、智ちゃん仏様だよと子は言った。

 すると、ははぁんと伯母は合点した。この子の母の実の父、子にとっての祖父がつい先だって亡くなった。その葬儀に彼女は彼女の夫一郎と共に列席したばかりだった。彼女はその時の式を執り行った僧の言葉を思い出した。故人は既に仏様に…、「そうそう、お成りだったわねぇ。」彼女は呟いた。その時、この子の父、三郎夫妻と共に、彼等の長男であるこの子の兄も確かに列席していた。彼女はその式場の風景を瞼に思い浮かべた。彼は両親の横で、子供用の礼服と黒い靴をきちんと着用させられて立っていた。そこで彼女は子に「兄さんに聞いたんだね。」と言った。

 『…してみると、確かに、この家の亡くなったばかりの子供、智ちゃんは、成りたてのほやほやの仏様になるんだわねぇ。』である。そこで彼女はふふっと微笑んだ。お母さん不謹慎よと言う彼女の姉娘の言葉を横に聞きながらも、彼女は笑みが漏れて仕様が無かった。彼女は無理矢理笑顔を引っ込めようと努力していたが、儘ならず、遂に「この子が無邪気なものだから、つい。ごめんね。」と姉娘に申し訳無さそうに言うと、彼女はしみじみと目頭を押さえた。

 「そうだね、成り立てのほやほやの仏様、智ちゃんだね。に、あなたは何をお願いしたいの?。」

一呼吸の後に、彼女はこう子供に尋ねてみた。無論、彼女の長女がここで何の事かと不思議そうに彼女に尋ねて来た。そこで彼女は彼女の夫方に繋がる親戚で拝聴した、その時の僧の言葉を説明した。まぁ、そんな事をと娘は驚いたが、そいういう宗派なのだと母は言う。すると娘達は目配せをして共に興味深そうに微笑んだ。

「仏教のお釈迦様は1人なのに、その仏教の教えの宗派が幾つもあるのは不思議ね。何故なの?」

如何もその辺りがよく分からないのだと、彼女の長女が問えば、次女もそうそうと姉に相槌を打ち彼女等の母を見詰めた。

 姉妹の母はにこりとして目を細めた。「まぁその辺りの事は追々とね、色々複雑だから。」と、人生色々、宗教も色々、その内その内と彼女は言うと、上手くお茶を濁してみた。然しそこで不承不承になった彼女の娘達だった。「お母さん何時も同じ事ばかり。」と、不満気に母に文句を言い出した妹娘に、俄然彼女の顔は曇った。

 しかしそれを見た姉娘の方は思い直した様子で寂し気に微笑んだ。彼女は周囲に目を配ると、そうだとばかり側にいた子に母と同じ質問を投げ掛けた。

「君は何をお願いしたいのかな?」

自分の父の親戚の子に対して、歳上の従姉である彼女はその目を優しく覗き込むと、如何にも親し気に微笑み問い掛けた。

 「お父さんとお母さんが仲良くなります様に。だよ。」

子供のこのあどけない答えに、母とその長女、この2人の子の親戚はまぁと微笑んだ。可愛い子やね。無邪気だ事。しみじみとした母娘はそれぞれに、2人共に心中感慨深い思いが湧いてくるのだった。それに対して、1人無表情なのが彼等3人から少し離れた場所に立っていた末娘だった。彼女は皆の会話を知ってか知らずか、ぽかんとして目の前のガラス戸等眺めていた。