以下、★印は聞き手の部分。 ≪≫内が森さんの答部分です、どちらも要約
しています。
★「捏造事件」により日本の前・中期石器の遺跡は壊滅状態となり、このよう
な事態を招いてしまった考古学界に対する視線は厳しいが、
≪考古学者全体の責任といわれるとつらい。日本における旧石器研究というの
は、考古学界の中でも孤立している。旧石器だけで、他の分野に関心を示さない
人が多い≫
≪旧石器の年代判定には地質学が重要ですが、旧石器の研究者で地質学を専
門的に勉強したという者を聞いたことがない≫
≪重要なのは、学会での藤村氏の発表は単独でななく、すべて二人から五人の
専門研究者との共同発表だったこと。連名で発表したということは、専門家が保
証したということです。捏造に気づかずに共同発表した者の責任は大きい。ところ
が、傍観者の立場でテレビでコメントをしている者もいる。これでは、協会の自浄作
用はどうなっているのかと問われても仕方がない。≫
★捏造の最初は座散木遺跡からだと、藤村氏は告白しています。この「発見」が日
本に前期旧石器時代があったかどうかの論争にピリオドを打ったと、当時宮城県立
東北歴史資料館に勤務していた岡村道雄氏が語っています。 同氏はその後文化
庁主任文化財調査官になっています。
≪最初に捏造が起きた座散木の当初から藤村氏と現場を共にし、本物と認めてきた
岡村氏の責任は重大です。学界や世間の雰囲気としては、文化庁主任調査官の岡
村氏が付いているのだから大丈夫と受け止めてきた。
藤村氏を褒めちぎってきた岡村氏が、捏造を調査する(一斗内松葉山遺跡検証発
掘の)指導機関に名を連ねるなど、世間一般には通用するはずがありません。≫
★民間団体の東北旧石器文化研究所の活動に注目してきたのですが……。
≪考古学は町人の学問だ、ただしぼくのいう学問上の町人とは、真理の追究や自分
の知識形成に金銭やマスコミでの名声を求めることなく没入できるひとです。藤村氏
とは似て非なるものです。≫
★森さんが長年続けてきた朝日カルチャーセンターの「1年間の考古学の成果をふり
返る」を2001年で止められということですが。
≪年齢的なこともありますが、考古学界の体質が悪い方に激変してしまって……。
飛鳥池遺跡は、奈良県が万葉ミュージュアムを建設するために、奈良国立文化財研
究所が発掘し、すごい遺跡であることがわかってきた。ところが徹底的に掘ってしまって、
遺跡の遺跡、元遺跡があったところになってしまった。遺跡は全部掘ってしまってはいけ
ないのです。ユネスコ憲章で、将来、学問が進歩したときの検証に備えて一部を手つか
ずで残そうと、国際的な取り決めがあります。≫
すこし長くなりました、「吉野ケ里遺跡」については明日に。