先週の土曜日早朝、積雪の中を歩きました。膝を埋めて踏み込んだの
は、吹き溜まりの中、さすがそういう場所は至るところというわけではあり
ません、それでも貴重な経験でした。
そんな経験したあとのこの本の「面白さ」は至るところにあり今はじっくりと
読み直しをしたいというのが感想です。
降雪の高さ、まずこの数字=「雪の高さ十八丈ありしといへり」
1丈=10尺=約3m。となると「雪の高さ54mあったと言った」
となるわけです。このあとの続き、
≪此話雪国の人すら信じがたくおもへども、つらつら思量(おもいはかる)に、
十月(旧暦)の初雪より(天保五年・1834年)十二月二十五日(同)までおよそ
その日数八十日の間に五尺(1尺=約30cm)づつの雪ならば、廿四丈にいた
るべし。
(その間除雪したり人の住んでいる所では雪は減る)我国の深山幽谷雪の深
事はかりしるべからず。天保五年は我国近年の大雪なりしゆゑ、右の話し誣(し)
ふべからず(おおげさではない)。≫
この高さは人が住んでいるところで、≪雪の下る毎に用意したる所の雪を尺
をもって量(はか)りしに≫というわけですから、「誣ふべからず」なのです。
ですから、加賀の国から来た飛脚が高田にきて、「この下に高田あり」という高
札をみた話もうなずけるわけです。
この本の「面白さ」は雪の量だけではもちろんありません。
雪に谷に落ちた村人が熊に助けられた話、雪のなか川に落ちて亡くなった女
性の幽霊の頼みによって髪の毛をすってやり、その髪の毛を橋のたもとに埋め
て毛塚をつくり供養した話、狐をとらえるに雪中に穴を掘り底に餌を置く、穴の周
りにも餌を播きおけば狐はつられて穴の餌を食いに頭を入れ食う、食い終わって
出ようとしても穴が小さくつくってあるため出られず、
≪雪は深夜にしたがひてますますこほり、かれがちからには穴はやぶる事もならず、
~これを見て水をくみきたりてあなに入るゝ、狐は尾を振はして水にくるしむ。人は
辺りにありてかれ将に死せんとする時かならず屁をひるを避る。狐尾をうごかさゞる
を見て溺れ死たるを知り、尾をとり大根を抜くがごとく狐を得る。≫
ざっと見ただけでもこんな話が拾い読み出来るのですから、これは宝島の宝石箱
というべきでしょう。