昨晩の「トッカン」も、つい見てしまった(笑)。
井上真央、ますます快調だ。
脇を固めるメンバーとの、芝居のバランス(間合い)もいい。
「トッカン」については今週の日刊ゲンダイに書いたわけですが、昨年、井上主演のNHK朝ドラ「ひまわり」についても、書いていたのを思い出しました。
以下、「おひさま」2題、再録です。
「おひさま」に寄せる期待
NHKの連続テレビ小説『おひさま』が始まった。舞台は信州の安曇野、そして松本市だ。松本の高校を卒業するまで信州で過ごした私にとって、嬉しいような、面映ゆいような、ちょっと不思議な気分だ。
実はもともと、地名としての「安曇野」は存在しなかった。松本から大町にかけての田園地帯は古来「安曇平(あずみだいら)」と呼ばれていたのだ。安曇野という言葉が広まったのは、一九六五年に臼井吉見さんの大河小説『安曇野』が出版されてからである。
新宿中村屋を興した相馬愛蔵・黒光夫妻、彫刻家の荻原碌山など、この地を“ふるさと”とする五人の仲間たちを通して、明治から昭和に至る激動の時代が描かれていた。
六九年には相馬黒光をヒロインにした『パンとあこがれ』というドラマも制作されている。TBSがまだ朝ドラを放送していた時代、ポーラテレビ小説の枠だ。脚本が山田太一、黒光役は新人の宇都宮雅代だった。
これから半年、『おひさま』は私たちにどんな“ふるさと”の姿を、主演の井上真央はどんな女性像を見せてくれるのか、とても楽しみだ。
しかし一方で、被災地の皆さんが今、目にしている風景を思うと胸が痛い。島崎藤村のいう「血につながるふるさと 心につながるふるさと 言葉につながるふるさと」の、一日も早い復興を願っています。
(東京新聞 2011.04.06)
昭和の困難な時代を描いた
朝ドラ「おひさま」に1つだけ注文
朝ドラ「おひさま」に1つだけ注文
NHK朝ドラ「おひさま」は運の強いドラマだ。まず、主な舞台を昭和という過去に設定したこと。3月11日に東日本を襲った大震災は現実が想像を超えていた。ちゃちな筋書きのドラマなど吹き飛ぶインパクトだった。こんな時、主人公が鉄板焼きの次は同じノリでそば屋になると言われても、視聴者は困っただろう。
しかし、“過去のお話”なら心安らかに見ていられる。さらに、物語が昭和初期から始まる女性一代記というのもついている。ヒロイン・陽子(子役の八木優希、好演)が信州にやって来たのは昭和7年。先週末の放送では13年まで進んでいた。つまり、これから国全体が困難な時代に突入していくわけで、時節柄、登場人物への感情移入も容易だ。
加えて、主役に新人を持ってこなかったことも運がいい。確かに朝ドラは新人女優の登竜門でもある。だが、視聴者が下手くそな、いや初々しい演技のヒロインを応援できるのも平時ならでは。見る側の気持ちに余裕がない非常時の今、「天花」の藤澤恵麻や「ウエルかめ」の倉科カナ並みの素人芝居だとかなりつらい。その点、キャリア十分の井上真央なら大丈夫だ。
最後に一つだけ注文を。ドラマの中では昭和7年の五・一五事件も13年の国家総動員法施行も、その前年の蘆溝橋事件さえ何ら説明がない。こうした時代背景は重要で、ぜひ触れて欲しいと思う。
(日刊ゲンダイ 2011.04.11)