日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、テレビ朝日「信長のシェフ」を取り上げました。
「信長のシェフ」
深夜枠で歴史ドラマを放送する
チャレンジ精神を評価!
深夜枠で歴史ドラマを放送する
チャレンジ精神を評価!
テレビ朝日「信長のシェフ」(金曜夜11時15分)の主人公・ケン(玉森裕太)は料理人だ。戦国時代にタイムスリップしたが、その料理の技や知識を駆使して織田信長(及川光博)に仕えている。
主人公が医師だったTBS「JIN―仁」の料理版とも言えるが、日曜のゴールデンとはスケールが違う。比較は酷だろう。むしろ深夜枠の予算で歴史ドラマ(このジャンルは金がかかる)をやろうとしたチャレンジ精神を評価したくなる。何より肝心の料理に関して手を抜いていないところがいいのだ。
先週登場した料理は「芋がらのリゾット」や「鯛のソテー天ぷら風」。毎回、この時代にはない食材や調味料をどう調達するかが見ものだが、ケンは雪で冷やした牛乳でバターを作り、天ぷらに必要な油を椿の実から抽出。不可能に思えた料理も何とか作り上げていく。こうした調理場面のカメラワークが、まんま料理番組の見せ方になっているのもご愛嬌だ。
鯛は家康(カンニング竹山)にとって特別な食べ物で、この一品が信長からの離反をくい止める。この辺りは及川と竹山の見せどころであり、特に及川の信長が秀逸だ。繊細にして大胆。冷静と激情。及川が予想以上のフィット感で演じている。そんな“織田ミッチー信長”の発見こそ、実はこのドラマ最大のお手柄かもしれない。
(日刊ゲンダイ 2013.02.05)