日刊ゲンダイの連載「TV見るべきものは!!」。
今週は、テレビ60年とNHKの記念ドラマ「メイドインジャパン」について書きました。
「メイドインジャパン」全3話
テレビ60年
作り手たちの「まだまだこれから」が伝わった
テレビ60年
作り手たちの「まだまだこれから」が伝わった
1953(昭和28)年2月1日に、NHKがテレビ放送を開始してから今月でちょうど60年。人間ならめでたい還暦だが、現在のテレビは祝杯どころではない。
広告収入の低下や視聴者のテレビ離れへの対応策はもちろん、新たなビジネスモデルも構築できていないからだ。一番問題なのは視聴者側の「テレビの見方」の実態とのズレだろう。
先日、朝日新聞の記事にもなったが、ドラマの中には「録画再生率」が視聴率を上回るものもある。にもかかわらず、「リアルタイム視聴」のみを重視する現在の放送ビジネスには無理があるのだ。放送開始60年を機に、こうしたテレビの存続にかかわる議論もして欲しい。
そんな中、恐らく「録画率」も「録画再生率」も高かったと思われるのが、NHK「メイドインジャパン」全3話である。舞台は倒産の危機に直面した巨大電機メーカー。唐沢寿明をリーダーとする再建チームの取り組みを描いて見応えがあった。パナソニック、シャープ、ソニーなどの現状を見れば、これは民放では出来ないドラマだ。
モノ作りと技術、個人と組織といった問題だけでなく、会社や仕事、生きがいとは何なのかにまで迫った井上由美子の脚本に拍手。「日本人こそがメイドインジャパンそのものだ」というセリフが鮮烈だ。テレビ60年、作り手たちの「まだまだこれから」の思いも伝わってきた。
(日刊ゲンダイ 2013.02.12)
