碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

今週の「読んで、書評を書いた本」 2013.02.26

2013年02月26日 | 書評した本たち

先日、中嶋嶺雄先生が亡くなりました。

私は法学部政治学科の出身ですが、専攻は現代中国論でした。

高校生の時、日中国交回復があり、この国に興味をもったのがきっかけです。

第二外国語は中国語を履修し、中国文学者の立間祥介先生に教わったのですが、恥ずかしながらダメな学生で、中国語はものになっていません。

中国現代史の石川忠雄先生(後に慶応義塾塾長)のゼミに入りましたが、こちらも十分に学ばないまま、卒業してしまいました。

反省ばかりです。

当時、中嶋先生は新進気鋭の中国研究者であり、しかも松本深志高校の大先輩ということもあって、その著作は結構読ませていただきました。

『中国~歴史・社会・国際関係』(中公新書)は1982年の出版ですが、すでにテレビの仕事をしていた私にも、とても興味深い1冊でした。

久しぶりで再読。

「特殊なエモーションにとらわれやすい中国という対象を見つめていく場合には、両者(日本と中国)の異質性を冷静に理解することが重要な前提だといえよう」

こうした中嶋先生の指摘は、今、まさに耳を傾けるべきものと思われます。


最後にお会いしたのは数年前で、松本行きの特急あずさの中。

先生は、すでに秋田にある国際教養大学の学長を務めていらして、冗談半分に「碓井さん、秋田にいらっしゃい」とおっしゃってくれました。

「全部の授業を英語で、というのは私には無理ですよ」と笑って答えたことを思い出します。

合掌。



今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通りです。

島田雅彦 『傾国子女』 文藝春秋

福田和也 『「贅」の研究』 講談社

斎藤美奈子 『名作うしろ読み』中央公論新社

コロナ・ブックス編集部 『作家の犬2』 平凡社

杉田 敦 『政治的思考』 岩波新書

* 上記の本の書評は、
  発売中の『週刊新潮』(2月28日号)
  Bookworm欄に掲載されています。