<関西の議論>
TVの不祥事対応
「みのもんた」と「辛坊治郎」の
危機管理の“差”はどこにあるのか
TVの不祥事対応
「みのもんた」と「辛坊治郎」の
危機管理の“差”はどこにあるのか
テレビ局員だった次男の逮捕で、「朝ズバッ!」などTBS系の報道2番組を降板に追い込まれたタレント、みのもんたさん(69)。現在もバッシング報道はあっても、擁護する声はタレント仲間を除いてあまり聞こえてこない。放送界に長年身を置き、業界流の処世術は熟知していたはず。今回のピンチを最小限に食い止める手立てはなかったのか。
“追い込まれた”感にじませる
「私がみのさんのブレーンだったら、とにかく『しばらく謹慎します』と頭を下げてもらい、とりあえず一定期間、表舞台から身を引いてもらったでしょう。結局はそれが信頼回復への一番近道なんです」
こう語るのは、危機管理にも詳しい某民放幹部。
みのさんが神奈川県鎌倉市の自宅前で取材に応じたのは、次男逮捕2日後の9月13日。この時「大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と頭を下げた。
だが、報道2番組への出演は自粛したものの、テレビとラジオのバラエティー番組は出演を続行。そうした中では「子供の不祥事に親の責任は及ばない」との主張を繰り返し、自身に否定的なコメンテーターにクギを刺すなど強気な一面ものぞかせた。
また、TBSの報道2番組降板発表を受け、先月26日に開いた記者会見では「責任は親の私にある」と“責任論”に関しては一転させたが、一方で「やめなければおさまらない風潮に感じる」「なんでこんなに騒がれるのかなと思った」と“追い込まれた感”をにじませた。その後も、一部大手紙や週刊誌で弁明を繰り返している。
「テレビの怖さ」熟知しているはずなのに…
たしかに、《子供の不祥事をめぐる親の責任》については議論の余地はなくもない。
だが、元テレビプロデューサーの碓井広義・上智大学教授(メディア論)は次のような疑問を呈する。
「テレビは“印象のメディア”。その強烈な印象でのし上がってきたプロ中のプロが、最初の囲み取材で感情をむき出しにしてしまった。逆転を狙った記者会見は芝居じみてさらに印象を悪くした。
みのさんは“公人”です。本人はこの騒動さえクリアすれば何とかなるとお思いになっているようだが、いったん印象を悪くすると、週刊誌で報じられているいろんな疑惑についても『事実なんじゃないか』と思われてしまう。テレビというのは本当に怖いメディア。そのことは本人が一番ご存じだったはずなのに…」
辛坊氏の対応とは対照的
こうした一連の会見で思い出すのが、6月に太平洋横断中のヨットで遭難したニュースキャスターの辛坊治郎さん(57)の例だ。事情はまったく異なるが、2度の記者会見で涙を流しながら、終了をうながす司会者を制して丁寧に回答。その後、雑誌連載は続けたものの、約40日間、表舞台から姿を消した。
前出の民放幹部は「辛坊さんは復帰時期が早かったとはいえ、本音でしゃべっていた。みのさんは会見の最後に次男に言い放った“バカヤロー”も計算がすけて見えた。どこか他人事なんですよ」。
碓井教授も「辛坊さんは自分の情けなさを正直にさらけ出した。そのあたりは視聴者もちゃんと見ています」と分析する。
“裸の王様”に?
ただ、みのさんをめぐっては芸能ライターのこんな声も。「男性マネジャーが病気療養で退き、昨年には最愛だった靖子夫人を亡くした。TBSでも昨年、みのさんに具申できた唯一の幹部が病に倒れた。文字通り“裸の王様”になってしまったんです。本音を言える人が周囲にひとりでもいたら…」
(産経新聞関西版 2013.11.09)