碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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『ごちそうさん』が『あまちゃん』超え!?

2013年11月12日 | メディアでのコメント・論評

NEWSポストセブンに、先日「週刊ポスト」でコメントした朝ドラの記事がアップされました。

あらためて、載録しておきます。

それにしても、「ごちそうさん」は好調ですねえ。

舞台が大阪に移って、西門家の小姑との“女の戦争”が始まったことも後押ししていると思います。

キムラ緑子さんが演じる「夫の姉」とか、ほんと、怖いですもん(笑)。



『あまちゃん』超えの『ごちそうさん』 
関西人の心掴み好調

視聴率はどうやら『ごちそうさん』に軍配が上がりそうだ。大人気を博した前作のNHK朝ドラ『あまちゃん』。その平均視聴率の最高は27.0%(9月16日放送)で、過去10年の朝ドラでトップだったが、現在放送中の『ごちそうさん』は第15回(10月16日放送)で早くも27.3%を記録。軽く『あまちゃん』超えを果たしてしまった。

週ごとの平均視聴率でも今のところ『ごちそうさん』のほうが優勢だ。

もちろん、『あまちゃん』のヒットで“朝ドラ視聴グセ”が広まっていたことも、好調の追い風になっているのだろう。しかし、理由はそれだけではないとNHK関係者が分析する。

「“わかる奴だけわかればいい”という小ネタが満載の『あまちゃん』は、コテコテの笑いやストーリーを好む関西では視聴率が悪かった。一方『ごちそうさん』は、大阪放送局制作ということもあって関西人の心をガッチリとつかんでいる。

これからは、ヒロインのめ以子(杏)が大阪に嫁いでからの話になるので、この傾向はさらに強まるはず」

『ごちそうさん』の好調は、中高年の支持によるところも大きい。上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)がいう。

「『あまちゃん』はドラマの密度が濃く、かつテンポが速いという希有なドラマでした。しかしそれは“一話見逃すとついていけなくなる”可能性もあるということ。

一方の『ごちそうさん』は、朝ドラらしいゆったりとしたスピードに戻って、爽やかな恋愛やヒロインの成長を楽しめる。いわば“剛速球”と“スローカーブ”の違いですね。

『ごちそうさん』のゆるさは本来の朝ドラの視聴者層にとっては見やすく、心地がいいのでしょう」


指摘の通り、『ごちそうさん』は、ヒロインが偶然我が家に居候することになった帝大生・悠太郎(東出昌大)と恋に落ちるという王道ストーリー。おそらく今後の展開もそれほど意外なものではないだろう。しかし、それが忙しい朝にはピッタリなのだ。

それに引き替え『あまちゃん』は、「ヒロインの母・春子(小泉今日子)の若い頃に一体何があったのか」「震災が起こったら、どうなってしまうのか」という謎をドラマ終盤まで引っ張り続けた。

あえていうなら「ソワソワ不安にさせる物語」で、だからこそ普段は朝ドラを見ない若者や男性たちが飛びついた。

(週刊ポスト 2013年11月22日号)