碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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映画『イミテーション・ゲーム』は“多面体”の人間ドラマ

2015年03月15日 | 映画・ビデオ・映像



13日に公開されたばかりの映画『イミテーション・ゲーム~エニグマと天才数学者の秘密』を観てきました。

アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など計8部門でノミネートされ、最終的には脚色賞を受賞した話題作です。


第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピュータの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。監督は『ヘッドハンター』などのモルテン・ティルドゥム。キーラ・ナイトレイをはじめ、『イノセント・ガーデン』などのマシュー・グード、『裏切りのサーカス』などのマーク・ストロングら実力派が共演。

第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。



観る前、この映画はミステリー、もしくは戦争サスペンスだとばかり思っていました。

もちろん、そういう要素はありますが、それだけじゃなかった!

伝記映画であり、プロジェクト(仕事)映画であり、社会派映画であり、心理映画でもあるという、いわば多面体の人間ドラマなのです。

エニグマのことは何となく知っていましたが、解読したチューリングについては天才数学者とか、コンピュータの原型であるチューリングマシンの開発者といった程度の知識しかなく、おかげで一層興味深く観ることができました。

いやあ、天才も大変なんだなあ。

また、その天才がエニグマ解読の偉業を達成した後、まさに戦後に起きる悲劇。

チューリングを演じるカンバーバッチは、主演男優賞ノミネートも納得の“紙一重”の部分を見事に体現していました。

キーラ・ナイトレイも良かった。


そうそう、チューリングに関心をもった方に、こういう本はどうでしょう?




かつて北海道の千歳科学技術大学で同僚として過ごし、現在もまた、上智大学で同僚となっている、理工学部の高岡詠子准教授。

その高岡先生の著書『チューリングの計算理論入門』(講談社ブルーバックス)です。

人間にとって「計算」とは何か、機械に「計算」をさせるとはどんなことか、といった具合に、コンピュータへとつながっていく試行錯誤が、わかりやすく書かれています。

計算機科学のエキスパートである高岡先生の“チューリング愛”が詰まった1冊。

オススメいたします。