想像力を味方に 新鮮な表現
大塚製薬 ポカリスエット
「ふたりで海に行く」篇&「ふたりで金魚すくい」篇
かつて脚本家の倉本聰さんが新卒で入社したのは、ラジオのニッポン放送だった。
先日お会いした時も、「ラジオはテレビと違って聴き手が想像で映像を作る。それはプロが作る映像より優れています。ラジオドラマは最高の映像芸術なんですよ」と語っていた。
ポカリスエットの新作CMを眺めながら、そんな話を思い出す。家の裏庭にいるのは、吉田羊さんと鈴木梨央さんが演じる、おなじみの母と娘だ。
「ふたりで海に行く」篇では、母が金だらいに入れた豆を揺さぶり、波の音を聴かせてくれる。続けて、手のひらを中に入れて動かせば、今度は砂浜を歩く光景が目に浮かぶ。
また「ふたりで金魚すくい」篇は、金魚が描かれたテーブルクロスを水槽に見立て、一緒に金魚すくいに興じる1本だ。見えないはずの金魚が泳ぎ回る様子や、飛び散った水の冷たさまでもがこちらに伝わってくる。
ラジオドラマの世界にも通じる、受け取る側の想像力を味方につけた新鮮な表現。2人を見ていると、想像することは愉快な創造行為だと分かる。
(日経MJ「CM裏表」2022.06.27)