碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレ東「きのう何食べた? season2」西島秀俊と内野聖陽の“距離感”に注目

2023年10月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「きのう何食べた? season2」

注目したいのは彼らの「距離感」だ

 

ドラマ24「きのう何食べた? season2」がスタートした。コロナ禍をはさんで4年ぶりの復活だ。とはいえ、シンプルな設定に大きな変化はない。弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)は、現在も同じ2LDKで同居生活をしている。

何より、以前と変わらない2人の暮らしぶりが、見る側をホッとさせる。ゲイを公表していない史朗は、相変わらず倹約家で料理好き。一方、ゲイであることにオープンな賢二は、今も史朗と彼の作る料理の大ファンだ。

変わったことといえば、賢二の体重の増加と史朗が通い続けたスーパーマーケットの閉店。そして史朗が2万5000円と決めていた月の食費が3万円に上がったことくらいだ。

■「コロナ後の生き方」のロールモデルに

心優しき男たちの穏やかな日常を描くこのドラマ。注目したいのは彼らの「距離感」だ。たとえば史朗は、食費を切りつめようと魚より肉を食材の中心にしてきた。それが賢二のコレステロール値を上げたに違いないと本気で謝罪する。

しかし深刻な表情で「話がある」と言われた賢二が恐れていたのは、2人の生活が壊れるような告白だった。つまり、どちらも現在の関係に安住せず、一種の緊張感を持ち続けているのだ。

心地よい距離を保ちながら、出世やお金より一緒に食卓を囲む生活を大切にする2人。「コロナ後の生き方」のロールモデルのひとつがここにある。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2023.10.11)