碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ホームコメディの快作「コタツがない家」(日本テレビ系)

2023年10月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「コタツがない家」(日本テレビ系)

ホームコメディの快作だ

 

久しぶりに登場した、目が離せないホームドラマだ。小池栄子主演「コタツがない家」(日本テレビ系)である。

主人公は敏腕ウェディングプランナーにして社長の深堀万里江(小池)。仕事面は完璧だが、家庭は問題山積だ。

夫の悠作(吉岡秀隆)は廃業寸前の漫画家でヒモ状態。高校生の息子・順基(作間龍斗)はアイドルを目指して挫折中。そこに熟年離婚して家も失った万里江の父、達男(小林薫)がころがり込んできた。

主な舞台は深堀家のリビング。そこで繰り広げられる、万里江たち家族の笑える会話バトルこそ、このドラマ最大の魅力だ。

たとえば、達男の処遇をめぐるやりとり。

悠作が達男の同居を警戒していることを万里江が指摘した。悠作は、かつて自分の母親との同居を拒んだと万里江を非難。

すると達男が、この家の頭金を援助したのは自分だ、などと言い出す。すかさず万里江は「そういうところを母さんは嫌ったのよ」と応戦する。

家族の間とはいえ、十分リアルで際どい本音の応酬だ。しかし、そこには聞いていて辛くなるような重さや暗さはない。どこかカラッとしたユーモアが漂っている。

筋立てよりも人間描写でドラマをけん引していく、金子茂樹(「俺の話は長い」など)の脚本。小池たち俳優陣の軽妙かつ細やかな演技。両者がガップリ四つに組んだ、ホームコメディの快作だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.10.24)