碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 「まだ暑い10月」の夕景

2023年10月17日 | 気まぐれ写真館

2023.10.17


【新刊書評2023】 6月後期の書評から 

2023年10月17日 | 書評した本たち

日本橋で見つけた、ダイキャスト・ミニチュア(えんぴつ削り)

 

 

 

【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年6月後期の書評から

 

 

鈴木涼美

『「AV女優」の社会学 増補新版~なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』

青土社 2090円

10年前に刊行された、秀逸な学術論文でありルポルタージュの増補新版。この業界を内側から冷静に見つめた本書の主要テーマは、AV女優による「動機語り」である。昨年6月、AV出演被害防止・救済法が施行された。この新法をめぐる議論から抜け落ちていたのは、AVに出演する女性=当事者の「実像」と「肉声」だ。本書を読むと、彼女たちが単なる「被害者」ではないことがよく分かる。(2023.04.25発行)

 

井口貢『昭和歌謡と人文学の季節』

ナカニシヤ出版 2640円

著者は文化政策が専門の同志社大学教授。誰もが知る昭和歌謡を文化の視点から考察していく。しかも演歌やフォークソング、さらにシティポップなども歌謡曲の範疇に入れている点が特徴だ。鶴見俊輔を梃子に捉え直す、美空ひばり。「大衆芸術」としてのグループサウンズ。高石ともや、ザ・フォーク・クルセダーズと「戦争」。さだまさしの楽曲における「詩」と「詞」。人文学の醍醐味だ。(2023.05.20発行)

 

箭内道彦、河尻亨一

『ふるさとに風が吹く~福島からの発信と地域ブランディングの明日』

集英社 2420円

広告のクリエイティブ・ディレクターである箭内道彦は福島県の出身だ。東日本大震災の直後から現在まで、直接的・間接的な支援を行ってきた。本書はその活動記録であると同時に、「地域」を軸に人と社会を考える一冊だ。「ふくしまプライド。」や「来て。」などのキャンペーンはいかにして生まれ、どのように進められ、何を成果とするのか。発信を続けることによって地域の未来も見えてくる。(2023.05.30発行)

 

本の雑誌編集部:編『本屋、ひらく』

本の雑誌社 1870円

一度消えた本屋は、嘆いていても戻ってこない。ならば「自分で本屋をひらこう」と考えた人たちがいる。本書では全国各地の当事者たちが経緯と思いを語っていく。品揃えの工夫で店独自の「物語」を発信する。カフェやギャラリーを併設する。「街のゼミ室」を目指す。「対話」を織り込んだ選書サービスもある。経営の苦労も明かされるが、本屋になったことを後悔する言葉は無いのが嬉しい。(2023.05.27発行)

 

校條 剛『富士日記の人びと~武田百合子を探して』

河出書房新社 1980円

武田百合子『富士日記』は、富士山麓の山荘で夫・武田泰淳と過ごした13年間の記録。鋭い観察眼とユニークな表現が際立つ日記文学だ。今年は百合子の没後30年。武田山荘の跡近くに暮らす、元編集者の著者が彼女の実像を探っていく。「聖地巡礼」で見えてくる、富士山麓の過去と現在。日記に登場する大岡昇平夫妻や出版社の編集者、そして地元の人たち。『富士日記』を再読したくなること必至だ。(2023.05.30発行)

 

鈴木エイト『自民党の統一教会汚染2~山上徹也からの伝言』

小学館 1760円

著者は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と20年にわたる闘いを続けてきた。この宗教団体と政治家たちの繋がりを暴き、問題を黙殺するメディアを鋭く批判する。本書は安倍晋三元首相銃撃事件の深層、そして自民党と統一教会の共存関係をめぐる最新レポートだ。加えて江川紹子、弁護士の紀藤正樹、太田光などとの対話も収録。硬軟取り混ぜた議論の中で問題解決へのヒントを提示していく。(2023.05.31発行)