碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 そらとそば

2023年10月28日 | 気まぐれ写真館


【新刊書評2023】8月後期の書評から 

2023年10月28日 | 書評した本たち

信州人必携(?)の「長野県民手帳」 

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【新刊書評2023】

週刊新潮に寄稿した

2023年8月後期の書評から

 

 

染谷 一

『ギャンブル依存~日本人はなぜ、その沼にはまり込むのか』

平凡社新書 1012円

ギャンブルが原因で人生を破滅させる人たちがいる。だが、それを「自業自得」や「意思の弱さ」では説明できないと著者。ギャンブル依存は単なる「衝動」ではなく、「疾患」なのだ。本書ではそんな“患者”たちを取材すると同時に、ギャンブル大国としての現状にもメスを入れていく。カジノ施設の設置を国が推進する時代、遊戯や娯楽の仮面をかぶった危険領域について深く知ることが必要だ。(2023.07.14発行)

 

中部 博『定本 本田宗一郎伝』

三樹書房 2860円

今年はホンダの創立75周年にあたる。本書は本田宗一郎の「何を作るか」という発想力と、「どう作るか」という技術力の源泉に迫る本格評伝だ。原動機付き自転車に始まり、オートバイや四輪自動車の製造など、「やってみなければ、わからないじゃないか」のチャレンジ精神が光る。失敗を恐れず、やり続ける。決してやめないことこそ夢を実現するための哲学であり、その人間臭さも魅力だ。(2023.07.23発行)

 

オリガ・ホメンコ『キーウの遠い空~戦争の中のウクライナ人』

中央公論新社 1980円

ロシアのウクライナ侵攻から2年半。ウクライナ人この現実をどう受け止め、また日常生活はどうなっているのか。そんな関心に応える一冊だ。キーウ生まれの著者は、日本で博士号を取得した歴史研究者。女性、男性、子どもにとっての戦争を語り、戦争下でもSNSでつながっている様子を伝えている。「他者に決められた国境」を持つ国民が、故郷と尊厳を守る戦いを続ける意味が分かってくる。(2023.07.25発行)

 

遠藤周作『現代誘惑論~遠藤周作初期エッセイ

河出書房新社 1980円

今年3月、遠藤周作は生誕100年を迎えた。本書は単行本未収録の作品が並ぶ、記念の新刊である。遠藤は小説やユーモアエッセイだけでなく、多くの「恋愛論」を書いた。たとえば表題作では、ドン・ファンとプレイ・ボーイと遊蕩児の違いを語り、「愛」と「情熱」は異なるものであることを明らかにしていく。また友情と恋愛や夫婦の機微に触れた文章も、愛について多くのことを教えてくれる。(2023.07.30発行)

 

井上ひさし

『芝居の面白さ、教えます~井上ひさしの戯曲講座 日本編』

作品社 2970円

1998年、井上ひさしは仙台文学館の館長に就任。2001年から05年にかけて、同館で「戯曲講座」を行った。本書はその講義録だ。「千年後も残る」と保証する宮沢賢治、日本の近代劇で「ベスト3」に入るという三島由紀夫などが登場する。独自の履歴分析と作品解釈は著者の真骨頂。彼らの戯曲の新たな魅力が見えてくる。シェイクスピア、チェーホフなどを講じた「海外編」も同時に刊行された。(2023.07.31発行)

 

伊藤彰彦『仁義なきヤクザ映画史』

文藝春秋 2365円

近年、白石和彌監督『孤狼の血』、西川美和監督『すばらしき世界』など、ヤクザを主人公とした秀作が注目を集めてきた。本書はベテラン映画史家によるユニークな通史だ。大衆の欲望を反映させた『忠治旅日記』に始まり、『ゴッドファーザー』と真っ向勝負した『仁義なき戦い』などを経て現在へ。ヤクザという「見捨てられた者」たちは、いかにして時代を象徴する人間像となっていったのか。(2023.08.10発行)