碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「いちばんすきな花」生方美久の脚本に期待

2023年10月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「いちばんすきな花」(フジテレビ系)

生方美久の脚本に期待だ

 

どんなドラマにも「テーマ」がある。作り手が見る側に「訴えたいもの」だ。「いちばんすきな花」(フジテレビ系)では、「男女の間に友情は成立するか?」だという。

古くからあるテーマで、その問いへの答えも明らかだ。「成立する場合もあれば、そうでないこともある」。あくまで個別の問題であり、一般化できるものではない。

このドラマに登場するのは年齢やキャリアも異なる男女4人。塾講師の潮ゆくえ(多部未華子)、出版社で働く春木椿(松下洸平)、美容師の深雪夜々(今田美桜)、そしてイラストレーターの佐藤紅葉(神尾楓珠)だ。

彼らは共通した「生きづらさ」を抱えている。自分が「2人組」になれないことだ。昔から2人組を作るのが苦手だったゆくえ。2人組にさせてもらえなかった椿。1対1で人と向き合うのが怖かった夜々。1対1で向き合ってくれる人がいなかった紅葉。

確かに、そういう人は少なくないかもしれない。悩んできた人もいるだろう。しかし、2人組であることが、必ずしもシアワセとは限らないのもまた事実だ。その辺りを含め、本作ではどこまで描くのか。

偶然と必然が適度にブレンドされた出会いを果たした彼らが、4人という「枠」の中だけで男女間の友情探しや、2人組探しをするのではつまらない。「silent」も手掛けた、生方美久の脚本に期待するところだ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2023.10.17)