テレビがモノクロ時代から徐々にズームレンズに
切りかわりつつありました.
家庭のテレビは毎日見られるものですから
構図が連続的に変わっていくズームレンズの描写は
珍しがられたでしょう.
初期のズームレンズは単レンズに比べて
レンズの明るさも暗く鮮鋭度がもう一つです.
世の中の映像はまず写真、次が映画,アマチュアの8ミリ、
モノクロ・テレビの順に画面の鮮鋭度は
落ちてくると私はランクを付けています.
画面の黒のしまりが悪く、コントラストが低く、
ピントが悪いモノクロ・テレビに
まずズームレンズが導入されたのかもしれません.
テレビカメラは,電気的一眼レフですから,
カメラのフィインダー(ブラウン管)には、
レンズが撮像管に結んだ映像を電気的に分岐します。
パララックス(視差)がありません.
このパララックスがないテレビカメラが
ズームレンズにとってうってつけです。
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レンズの設計は面倒な手計算で時間もかかっていました。
コンピューターが導入されて,飛躍的に計算スピードが上がります.
昭和40年発行(45年前)の「ニコンFマニュアル」に
35ミリ一眼レフ「ニコンF」用の
Zoom-NIKKOR Auto F3、5 43ミリ~86ミリ(ズーム比、2倍)と
F4~4,5 85ミリ~に比250ミリ(ズーム比,約3倍)
、
F9、5~10、5 200ミリ~600ミリ(ズーム比 3倍)
が記載されています.
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ピントに不安があったのか
プロ,アマチュアにはまだ時期尚早でした。
その後,43ミリ~86ミリズームレンズは
ベストセラーレンズになります.
35ミリ映画用キャメラとして
ドイツからアリフレックスが輸入されます.
この撮影機は,ミラーシャッター式の巧妙な構造で
撮影レンズの映像をミラーシャッターで
間欠的にファインダーに映す
一眼レフ方式でしたから
パララックスがありませんでした。
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このアリフレックス用にフランスの
アンジェニュー(レトロフォーカスレンズの発明)から
映画用のズームレンズが輸入されました.
テレビ映画用に16ミリのアリフレックスも輸入されました.
この16ミリキャメラにもアンジェニュー・ズームレンズが
輸入されました.
ズームレンズの描写は,レバーまたは、リングの操作で
画面が連続して拡大,縮小します。
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時間のかかるレールを敷いて、
トロッコで移動撮影するドリーショット
の代わりにズームレンズの操作で画面を拡大,縮小して
擬似的な移動効果を出しました.