内的自己対話-川の畔のささめごと

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個体は、一つの統一された自己形成情報システムである ― ジルベール・シモンドンを読む(90)

2016-06-08 09:52:04 | 哲学

 ILFIの第二部第二章の冒頭の段落を昨日読み終えた。今日から、同章の中で « information » 概念との関連で重要な議論が展開されていると思われる箇所の要点を摘録しつつ読解を進めていく。
 シモンドンの個体化理論においては、厳密に言えば、完全に完成された個体は存在しない。存在につて語りうるのは、個体化の多様で可変的な程度だけである。根本的な存在様態としての個体化の程度は、形態に関する基準だけでは規定し得ない。機能に関する基準を同時に導入することではじめて、個体化の程度を計測することができる。形態上は群生グループ内の隣接する別の諸個体と区別可能であっても、機能的には周囲の諸個体と直接的に相互依存関係にあるとき、それら各個体の個体性の程度は低い。
 個体性は、したがって、個体の形態生成過程とは独立に、機能的自立性によって性格づけられるものとして提示しうる。しかし、このテーゼが妥当性をもつのは、「自律」という言葉にその十全な意味が与えられたときだけである。
 自律とは、己自身による制御、己に固有な規則にのみ従うこと、己に固有な構造にしたがって自発自展することである。自律している存在とは、己の発展を己自身で支配し、己自身で形態形成情報を蓄積し、その情報を用いて己の行動を支配する存在のことである。
 個体とは、自己形成に関する情報内容を保存し、増大させることができる存在である。個体の自律性とは、厳密には、この情報についての自律性である。したがって、ある一個の存在について、それを構成する諸部分の全体に対する個体性の程度を知るためには、その存在の形態形成情報システムを考察しなくてはならない。この意味で、個体は、一つの統一された情報システムとして性格づけられる。