内的自己対話-川の畔のささめごと

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生体において実現される個体化は個体発生だけではない ― ジルベール・シモンドンを読む(105)

2016-06-23 03:37:18 | 哲学

 今日からILFI第二部第二章第二節 « Information et ontogénèse » 第三項 « Limites de l’individuation du vivant. Caractère central de l’être. Nature du collectif » を読んでいく。
 タイトルに明示されているように、この項では、「生体の個体化の限界」「存在するものの中心的性格」「集団的なものの本性」という三つのテーマが取り上げられている。それぞれのテーマについての所説がおよそ理解できる程度に、ところどころ原文を引用しながら、テキストを追っていきたい。
 最初のテーマは、上掲のタイトルとこれまでずっとこの連載で読んできたシモンドンの所説とから容易に想像がつくように、個体として環境から区別された一個の生体の生成過程としての個体化は、個体化全過程の一部を占めるにすぎないというテーゼに照応している。
 「個体発生は、一つの個体化であって、生体において実現される唯一の個体化ではない、つまり、生体を基礎としてそれを組み入れることで実現される唯一の個体化ではない」(« L’ontogénèse est une individuation, mais n’est pas la seule individuation qui s’accomplisse dans le vivant ou en prenant le vivant comme base et en l’incorporant. », p. 214)。
 この一文には脚注が付けられていて、そのおよその訳は以下の通り。
 このことはその裏面から言うと、個体化は、唯一の生命的現実ではないということである。厳密に言えば、個体化は、ある意味で、仮の応急措置であり、場合によってそこから「劇的」な展開もありうる。しかし、他方では、個体化は、「幼形成熟化」(« néoténisation »)過程に直接的に結びついているので、進化の根源でもある(この「幼形成熟」という概念については、5月20日の記事を参照されたし)。