内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

本居宣長『うひ山ぶみ』― 心が折れそうなときに「読む薬」

2017-10-28 17:21:37 | 読游摘録

 学に志しながら、自分にはそもそも学才がないとか、他の仕事で忙しくて時間がないとか、学問を始めるのが遅すぎたとか、自信喪失に陥ったり、不平不満を並べたり、詮無き言い訳で惨めな結果を弥縫をしたり、そんな性格的な弱さを露呈することがありうるであろう後進に対して、本居宣長は『うひ山ぶみ』の中で、次のように優しく励まし、かつ厳しく戒める。 

 詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦まずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかかはるまじきこと也。いかほど学びかたよくても、怠りてつとめざれば、功はなし。
 また、人々の才と不才とによりて、其功いたく異なれども、才不才は、生れつきたることなれば、力に及びがたし。されど大抵は、不才なる人といへども、おこたらずつとめだにすれば、それだけの功は有る物也。
 また、晩学の人もつとめはげめば思ひの外、功をなすことあり。また、暇のなき人も、思ひの外、いとま多き人よりも功をなすもの也。
 されば、才のともしきや、学ぶことの晩おそきや、暇のなきやによりて、思ひくづをれて止むることなかれ。とてもかくても、つとめだにすれば出来るものと心得べし。すべて思ひくずをるるは、学問に大きにきらふ事ぞかし。

 我もまた、焦らず怠らず努めるべし。