内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

大学へのでこぼこ道

2022-11-19 23:59:59 | 雑感

 私が担当するほとんどの授業は大学の中央キャンパス内の建物のいずれかで行われている。通勤には通常自転車を使う。通勤路はほぼ一定していて、大学宮殿正面を通過し、宮殿脇の rue de l’Université へと左折し、その通りを突き当りまで進み、天文台を背にするように右折すると中央キャンパスはもう眼の前だ。
 この rue de l’Université は、路面電車が走る中央キャンパス脇の Boulevard de la Victoire と並行しており、宮殿と中央キャンパスを行き来する学生たちがよく横断する。半分は車の駐車スペースになっている。この通りはだからそれだけ大学にとって重要な位置にあるわけなのだが、路面状態がひどい。工事のためだったのか掘り返されるたびごとに舗装をし直した痕が歴然としており、一言で言えば「でこぼこ道」なのだ。雨が降れば水たまりができ、雨が上がってもしばらくは消えない。車で通過する分には支障はないだろうが、自転車だとその凸凹のせいで振動がひどく、それが通るたびに不快だ。
 このようなでこぼこ道をフランス語で何というか。Une route pleine de bosses と言えば、瘤のような凸状部分が多い通りのイメージが浮かぶ。Une route cahotante と言えば、通過する際振動を引き起こすような状態にあるということがわかる。Un chemin cahoteux と言ってもほぼ同じだが、現在分詞の形容詞的用法である前者は道路自体が振動の原因であることを示し、形容詞は道路の状態性の記述にやや傾いている。Chemin montueux は山道のように起伏が多いということで、これは「大学通り」には当てはまらない。Chemin plein de ressauts は突起が多いということで、その突起の原因・理由が自然発生的なのか人為的なのかはわからない。Chemin pierreux et raboteux と言えば、石ころだらけで凸凹な道ということで、raboteux だけだと凸凹なということになる。しかし、この場合も、その凸凹が自然発生的なのか人為的なのかは問われない。Route défoncée と言えば、損壊によって生じた凸凹がある道ということになる。しかし、当該の大学通りの場合、損壊しているわけではないからこれも適切とは言えない。Une route inégale と言えば、見た目の状態が不規則な道ということで、例えば、ユルスナールの Nouvelles orientales の 第一話 « Comment Wang-Fô fut sauvé » の中の « Soutenu par son disciple, Wang-Fô suivit les soldats en trébuchant le long des routes inégales. » という一文は、多田智満子訳『東方綺譚』では、「弟子に身を支えられて汪佛はでこぼこ道につまずきながら兵士のあとに従った。」となっている。
 「大学通り」は一つの街路であるから rue を使うとして、 « une rue asphaltée, mais inégale et cahotante pour le vélo » とすれば、かなり正確にイメージを表現したことになるだろうか。