内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日本の映画を日本語による日本語の解説付きで鑑賞する

2022-11-21 23:59:59 | 講義の余白から

 さまざまな日本語を聴かせるためということもあり、「日本の文明と文化」では映画をよく教材として使う。学生たちの日本語レベルからして、字幕なしでは難しすぎるので、アニメーション映画など、比較的わかりやすい日本語を使っており、発音も明瞭な場合は、日本語の字幕入りのヴァージョンを使う。こうすれば、かなり細部まで彼らも理解できる。
 使える教材に日本語字幕がない場合は、仕方なしに仏語字幕入りヴァージョンを使う。これは日本語学習としては望ましくないが、学生たちにしてみればよりストレスなく話についていけるから、内容理解や各シーンの細部に注意を集中させることができるというメリットはある。
 二時間の授業をまるまる映画鑑賞に当てることはなく、長くて約半分の一時間余りである。映画を観る前に、私の方から映画の主題や重要語彙・表現などの説明を行い、さらに映画の内容に関する五つほど問題を出し、その答えを探しながら映画を観るように促す。
 教卓を黒板脇の窓際に寄せ、学生たちの方と黒板の前に降ろされたスクリーンとが半々に見えるような位置に私は座る。この位置からだと、映画を鑑賞している学生たちの顔を観察しやすい。学生たちにしてみれば、私に見られているのはあまり居心地がよくないだろうが、これは前方の学生たちの陰に隠れるように後ろの方に座っている学生たちがさぼっていないか「監視」するためでもある。たとえ映画そのものには関心が持てなくても、日本語の学習としては無駄にはならないのだから、そのためたけにも一時間は集中してほしいと思う。
 最前列から三列目までに座る十数人の学生たちはほぼ一定していて、彼女彼らたちは概してよく集中して授業に参加している。あるシーンのセリフの中にちょっと難しい言葉があると、そこで画面を止め、簡単な解説を差し挟む。すると、それらの学生たちは必ずノートに説明を書き取っている。
 たとえまるごとではないにしても、このような日本語による日本語の解説付きで日本の映画を観る機会はそうそうないであろうから、そこからいろいろと学び取ってほしいと願っている。