内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

「古代日本の歴史と社会」期末試験問題

2023-01-18 23:59:59 | 講義の余白から

 学部二年生の「古代日本の歴史と社会」の問題形式は三年生の「近代日本の歴史と社会」とほぼ同じだが、日本語の難易度はもちろん下がる。それに、大問2の記述式問題は、授業で説明した事項の要点をまとめることを求めるというきわめてオーソドックスな設問で、授業中に使ったパワーポイントの中の当該箇所の記述をそのまま書けば答えになる。だから、それらの資料をしっかり復習しておけば簡単に高得点が取れるはずである。それぞれ数行での説明を求めたのは次の5項目。白村江の戦い、白鳳文化、遣唐使、荘園、武士団。
 ところが、49枚の答案中、ほとんど白紙か、何か書いてあってもほぼデタラメが書きなぐってあるだけで採点に数秒しかかからない答案が10枚あった。これらの答案は採点作業の労役の軽減に多大な貢献をしてくれおり、この場を借りて当該の学生諸君には心から感謝したい。彼ら彼女たちは、歴史に何の興味もないし、そもそも真面目に勉強する気がないのである。毎年、一定数、そういう輩はいるから、今更何を言っても仕方がないと私ははっきりと諦めている。そういう輩たちのためにこちらが特別な配慮をする謂れはまったくない。
 それはそれとして、中間試験の感想として以前書いたことだが、このような答案は資源の無駄遣い以外のなにものでもない。やはり真剣にエコポイント・システムの導入を検討するべきなのかもしれない(こちらの記事をご笑覧ください)。
 大問3の和文仏訳は以下の一問。授業では使わなかったテキストだが、内容的にはほぼ同一の説明をしてあるし、しかもご覧のように語彙説明付きだし、実際の問題用紙にはほぼすべての漢語にフリガナがふってあるから、二年生の問題としてもけっして高難度ではない。

奈良時代に花開いたきらびやかな文化を天平文化と呼ぶ。その第一の特徴は、遣唐使らによってもたらされた先進国唐の文物に象徴される国際色の豊かさである。唐との交通によって様々な文物が日本に移入され、天平文化として結実したとされている。天平文化の精髄を伝える正倉院宝物には、その国際性が如実に反映されており、西域に由来する要素がとりわけクローズアップされ、正倉院は「シルクロードの終着駅」である、といった表現も広く一般に受け入れられている。

きらびやかな : splendide 特徴 : caractéristique 先進国 : pays avancé 象徴する : symboliser 結実する : porter des fruits 精髄 : quintessence 宝物 : trésor 如実に : vivement 反映する: refléter 西域:régions occidentales ~に由来する : originaire de ~ 要素 : élément

 まだ採点作業は終了していない。今週末には終えたい。はやく解放されたい。