内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

哲学‐文学的探究

2023-10-07 12:35:25 | 哲学

 連載「三木清『パスカルにおける人間の研究』を読む」をわずか三回で投げ出したのではなく、これから十一月末のパリ・ナンテール大学での発表まで断続的に続けていく。
 今日は一昨日のラヴァル大学の国際シンポジウムでの発表の際に引用した一文についてコメントを残しておく。
 引用したのは、Martha Nussbaum の The Therapy of Desire. Theory and Practice in Hellenistic Ethics, Princeton Classics, 2009(初版1994)からの次の一文であった。

I have found in Lucretius and in Seneca remarkable models of philosophical-literary investigation, in which literary language and complex dialogical structures engage the interlocutor’s (and the reader’s) entire soul in a way that an abstract and impersonal prose treatise probably could not.
                                                     p. 486.

 迂闊なことに、最初のどの本で “philosophical-literary investigation” という言葉にであったのか失念してしまったのだが、そのとき「これだ!」とピンときて、すぐに本書を買い求めた。それでどのような文脈でこの言葉が用いられているのか確認できて、ますますこれは私自身の研究にとって導きの言葉になると確信した。
 哲学‐文学的探究は、文学的言語と複雑な対話構造によって、抽象的で非人称的な散文で書かれた論文ではおそらく不可能な方法で、対話者(そして読者)の魂全体を巻き込むことができる。哲学‐文学的探究のモデルとして古典を読んでいくと同時に、私のささやかな力量の限界内に過ぎないとしても、それらのモデルに学びつつ、そのような探究をみずから実践していきたい。