授業や講演の準備、原稿の執筆・推敲の合間を縫って、三木清の『パスカルにおける人間の研究』(岩波文庫、一九八〇年)を『パンセ』の本文と照らし合わせながら、毎日ほんの少しずつ読んでいく。
『パンセ』において我々の出逢うものは[…]具体的なる人間の研究、すなわち文字通りの意味におけるアントロポロジーである。アントロポロジーは人間の存在に関する学問である。存在においてそれの「存在の仕方」を研究する。[…]アントロポロジーはひとつの存在論である。『パンセ』を生の存在論として取扱おうとすることは私の主なる目論見であった。(4‐5頁)
三木がここまでアントロポロジーを重視するのは、それが「単に我々が自覚的に生きるために必要であるばかりでなく、すべての他の学問、いわゆる精神科学或いは文化科学と呼ばれている学問の基礎である」(7頁)という確信に基づいており、そのアントロポロジーのとり得べき一つの形として三木のパスカル研究は構想された。
明日から、『パスカルにおける人間の研究』を、上掲の三木自身の目論見に沿って、そして「この書物がひとつの全体として、ここに与えられた順序に従って読まれること」(6頁)という三木の希望を尊重して、「第一 人間の分析」から読んでいく。